フーコーの振り子
フーコーの振り子って物があるんだが、知ってる人は少ないんだろうか?
ワシ自身も若い頃、博物館にあった得体のしれないデカい振り子(吊り
ヒモの長さが30mもあった)を見て、これがフーコーの振り子ですと
言われても、まったくピンと来なかった。
だが、実はこれ、偉大なる振り子なんです。
説明文にはおおよそこんなことが書いてあるはずです。
「フランスの物理学者であるレオン・フーコーが1851年、パリの寺院で、
巨大な振り子を用いて『地球の自転』を証明した」と。
どうしたら証明できるのか、説明するのが非常に難しいんだけど敢えて
やってみようかと。
地球が公転している(太陽の周りを回っている)という地動説は1543年
コペルニクスによって唱えられたが、それまでは地球が中心という天動説
が信じられていて、受け入れられなかった。
これは当時、それを証明する確たる証拠が無かったことも大きい。
地球の自転を証明するのに、それから300年を要したわけだ。
さて、振り子は錘を吊り下げている支点と重力の方向(地球の重心)
を結ぶ鉛直線を含む面を往復している(単純振り子)。
そして、いったん振れ始めると、慣性力によってその振れ面は絶対的に
変わらない(地球の動きとは関係なく、宇宙から見ればいつも支点に
対して錘が同じ面を往復している)。
小さな振り子は減衰が早いので、ヒモの長さを長くしなければならず、
当時の最大の建物である寺院での実験は理に叶ってたわけです
(フーコーの実験では長さ67mの振り子をドームから吊り下げて使った
という)。
で、だから、もし北極点でこの振り子を経度0度の方向に振ると、振り子は
その振り面を保ち続けるが、地球は動いて行くので、地面で見てると、
相対的に振り子の面が動いて行くように見えるわけだ。
6時間後には地球が90度東方向に移動して行くので、振り子の振り面は
相対的に、地球の経度-90度にまで動いてしまう。
赤道上では、振り面が一定のままで、地球の回転とともに東方向へ移動
して行くため、地面との相対関係は変わらない。
振り子は支点と一緒に東へ移動して行くだけで、地面との相対位置も
変わらないのだ。
北極と赤道の間の緯度においてはその中間の角度、90~0度の間の
角度になるが、幾何学的に計算すれば緯度をθとして、6時間当たり
90°×Sinθ。
1時間あたりだと15°×Sinθだけ角度がズレて行くということになる。
この振り子が1周にかかる時間は次の式で求めることができます。
T=24時間/Sinθ
時間当たり15°×Sinθだから、360°/15°×Sinθという事です。
緯度が90度の北極点、南極点がθ=90でSinθ=1、赤道がθ=0でSinθ=0
となるので、北極では24時間、赤道では∞時間(静止)となります。
パリの緯度は北緯49度ですから、T=24/Sin49は31.8時間。
丸一日と7時間48分で一周します。
振り子は徐々に時計回りに振り面を変えながら移動して行き、31.8
時間の4分の1である、約8時間で、振り面が真横になり、16時間後
には180度回転するので元に戻ったようになるという事ですな。
因みに、当地では緯度が36.5度ですから1周するのに40時間と22分
程掛かります。
この実験で地球が自転していることが証明されたわけですが、当時の
人々の驚きとフーコー氏の満面の笑みが浮かぶようです。
それにしても、随分簡単な仕掛けで地球の自転が証明できるもんですな。