ある飛行少年の記(4)飛行機の歴史(材料) | 悠釣亭のつぶやき

ある飛行少年の記(4)飛行機の歴史(材料)

今回は飛行機の歴史を材料面から見たものです。
1903年、ライト兄弟が初めて動力飛行を行って以来、間もなく
120年が経ちます。その間、人類は単なる飛行から、音速を
超える飛行までを経験してきました。
そこには、飛行機に関する関係者の尋常じゃない努力があった訳
ですが、飛躍的発展のカギになったのは材料の開発でした。


悠「ライト兄弟時代は皆んな複葉機だったのは何故?」
飛「機体を軽く作れるからだな。当時は軽くて強い材料が無いので、
  ほとんどを木材と布で作った。複葉機は2枚の翼をワイヤで
  固めて曲げに耐える構造にするから、木材でも十分揚力に耐える
  構造が作れた。」
悠「軽くて強い材料が発明されたから、単葉機が作れるようになった?」
飛「結局はそういうことになるが、木製でも単葉機はあった。揚力に
  耐えるために下からワイヤを張ったり、支柱を取り付けたりして。
  支柱などが無い本格的な、今に通じる単葉機は1930年代の
  終わりになって、軽くて強い超ジュラルミンが開発されてから
  だな。」

悠「今では多くの飛行機がジュラルミンを使って作られてるわけだ。」
飛「ジュラルミンはアルミと銅とマグネシウムの合金として1909年
  には開発されてたが、まだまだ比強度(強度/重量)が低かった。
  単葉機を作っても厚い翼でないと成立しなかった。厚い翼は性能が
  悪いから、飛行機にはあまり使われなかったってことだ。」
悠「超ジュラルミンが出来るまでは。」

飛「アルミ合金はさまざまの種類がある。それぞれを区別する4桁の
  数字がついていて、純アルミに近いものは1000番台、
  ジュラルミンは2000番台、伸びの大きい6000番台、
  最も比強度の高い7000番台など。」
悠「使い方がそれぞれ違うってことですか?」
飛「簡単に言えばそういうことだが、同じ7000番台でも、次々に
  新しいものが開発されてきた。強度を追及したり、腐食に強い
  ものにしたり、圧延や鍛造に向いたものだったりと。」


悠「丈夫なものは加工しにくいでしょう。

飛「加工は材料を焼き鈍して柔らかくして行う。形が出来たら再度
  焼き入れして、所要の強度を得るんだ。

   アルミ合金には時効硬化という性質があって、焼き入れ直後は
  柔らかく、時間が経つと硬化する性質のものもある。
  だから焼き入れ直後に成型し、仕上がれば所定の強度を得られる
  と言うやり方もある。
    また、厚板や鍛造のブロックから削り出すこともできる。」

悠「飛行機の歴史そのものですね。」
飛「飛行機の歴史は、軽量化、高速化、大量輸送などの目的に
  応じて進んできたといえるな。
  中でも、高速化のためにはなるべく薄い翼が必要になる
  から、より強くて軽い材料の開発が進んだ。
  そして、現代では複合材料が主流になりつつある。」


悠「ガラス繊維ですね。ボートなどにも使ってます。」
飛「飛行機の場合はもっと強い特殊繊維や炭素繊維を使う。 
  それを樹脂で固めて所要の形に高温高圧で焼き固めるんだ。
  最近では戦闘機や旅客機にも使われてるぞ。」
悠「カーボンコンポジットかぁ!」





悠「あまり鉄は使わないんだ。」
飛「場所や部位によるんだ。アルミは軽くて強いが、嵩張るし熱には
  弱い。
  だから、小さくする必要がある金具類や操縦桿、脚柱等は
  強度の高い特殊な鉄を使うことが多い。
  エンジン回りは高熱になるから鉄の部品は多いな。」

悠「鋳物は使いませんか?」
飛「脆いからねぇ。歯車箱やエンジンケース等には少量使われて
  いるな。厚肉で変形しにくい特徴を生かしてな。
  飛行機の場合は鍛造と言って、材料を押し固めて強度を
  増したものが使われることが多い。
  特に小型化が必要で、高い強度の必要な金具類に。」

悠「金属は錆びますよね。」
飛「錆には苦労してきたな。で、錆びないように表面処理技術も
  大いに発達した。

  アルミの場合は酸に特に弱い。昔はアルミ弁当箱が梅干しで
  グズグズになったもんだ。ところがアルマイト処理が出来たら
  一気に錆びなくなった。アルマイトってのはアルミの酸化被膜で
  硬い層を作って本体を守るって事だな。

  硫酸を使って酸化被膜を作っていたが、最近はリン酸が主で、
  より錆びにくい皮膜になった。その上に更に塗料で保護する。
  これでも水分の多い場所では腐食が起こるから、特別な塗料で
  コーティングすることもあるな。」


飛「他にアルクラッドって素材もある。アルミの本体の表面を
  純アルミの薄い層でサンドイッチした材料で、純アルミの
  錆びにくい性質を上手く利用したものだ。」

飛「鉄の部品はメッキするんだが、一般的にはカドミウムメッキで
  その上に塗装する。、
  硬さが必要な部位や塗装できない部位ではクロムメッキが使われる。」
  メッキ処理は金属の強度に影響があることもあるので、厳重に
  行われる。

  熱処理や表面処理は強度に大きな影響があるので、処理方法が
  厳重に管理されているんだ。
  温度や湿度はもちろん、焼き入れ、焼きならし時間や薬品の
  管理や、それが出来る資格までもが厳重に管理されている。」


当時、飛先輩の操縦で軽飛行機に乗せて貰いましたが、殆んどの
部分が薄っぺらなアルミ合金でできているのには正直驚きました。
せいぜい1㎜の厚さの超ジュラルミンなんだもの。
改めて、飛行機は軽くなければ飛ばないって事を実感しました。




また、アルミと言っても普通のアルミではなく、強いアルミが
十分な管理の下で作られてることも驚きでした。
「板子一枚下は地獄」って言うけど、薄いアルミ板一枚の下は
遥かに下方の地面や海面なんですよ。
厳密にやらなきゃ、即、地獄行きですもんね。