イージスアショアに見る戦略的思考の欠如 | 悠釣亭のつぶやき

イージスアショアに見る戦略的思考の欠如

19日、政府は陸上配備型迎撃ミサイルシステム
(イージス・アショア:AA)の配備計画を撤回する方針を
固めたと発表した。


来週中に国家安全保障会議(NSC)で撤回の方向性を
確認し、9月までにAAに代わるミサイル防衛などについて
議論したうえで、年末にも防衛計画の大綱(防衛大綱)、
中期防衛力整備計画(中期防)を見直して正式決定する
との事である。

 


日本の防衛の要として検討されてきたAAであった訳で、
ワシ自身は突然の訃報にびっくり仰天した。
既に相当なカネを無駄に突っ込んでる筈だし、今更辞める
なんてよっぽど計画が杜撰だったって事?
ここに至ってなんで?


防衛省の発表では迎撃ミサイル発射時に補助的に使う
ロケットブースターが敷地外に落ちる可能性があるため
というが、言い訳にしても、もっと納得感がある言い訳は
出来んの?ってところだ。
相手ミサイルが落ちるより、ブースターが落ちるのが嫌
なんかい???


色々考えてみると、いくつかの要素がありそうだ。
①イージスシステム自体の有効性はある程度実証されて
 いるが、固定的な配備は非常に脆弱な事。
②デコイやダミーとともに多数飛来してくるミサイルに
 対応するには2基では断然不足。
③ディプレスト軌道ミサイルに対する対応は未知数。
④そもそも中期弾道での迎撃に無理がある?
⑤昨今の非常事態において、懐疑的な装備に対して大金は
 出せない?
⑥もっと費用対効果の良い物を模索。
等々。

 


いずれにせよ、代替案が早急に練られるんだろうけど、
敵基地先制攻撃論がまたかまびすしくなるんだろうね。
ミサイル防衛が非力なのは分っている事な訳で、じゃ、
他の策はと言うと、イージス艦の増量、サイバー攻撃や
電子妨害、発射前に破壊するか初期上昇中に破壊するか
ってことなんだろう。


ワシはもとより不戦論者なんだけど、周辺に良からぬ
考えがある(と思われる)国々があって、威嚇だけなら
ともかくも、攻撃の意図を顕わにし、準備を始めるような
事があっても座して死を待てという程の脳天気ではない。


だから、過去にも色々と考えて来たけど、日本国の様な
いわゆる民主国家においては、実際に攻撃もされてない
状態で、事前準備として先制攻撃を議論したり、増してや
準備したりする事は、まず国民大多数の合意は得られない
だろう。


道は二つあって、どうしてもそれが必要だという粘り強く
懇切な説明か、徹底的な秘匿だろう。
前者には膨大な時間が掛かろうし、後者は必ず漏れるし
政府/防衛省には敢えてやる度胸は無かろう。
どっちの道も細く危ういってこと。

 


ま、実際にはその前に、やるべき事がたくさんある。
まずは、ちょっかいを出しそうな国に対する牽制や外交対話
であろう。
もちろん、人的、経済的、文化的連携のもとで。
昔はともかくとして、最近は話し合いどころか殆んど敵対的
な行動しかしてこなかった。
話し合いのチャンネルすら非常に細くなってる。


安全保障は米国頼りで、外交さえもが米国の言いなり。
独自の戦略的外交は皆無。
その前に安全保障戦略すらない。
自国をどう守るかは国家の根幹なのに、そのための外交、
異常事態での緊急対話、万一の時の対応、国民を守る
抗堪性の確保など、何一つ具体的なものが無い。
その時はその時とアタフタするのが得意な国だから、ま、
その時が来たらまた考えればエエんですかいね。


日常的な対話が出来れば、相手が何を恐れ、何故攻撃的な
振る舞いをせねばならぬと考えているのか、こちらが
何を懸念しているのか等々、歩み寄りの余地は皆無では
無かろう。
相手が話し合いに乗らぬというような言い訳は無益だ。


このままの疑心暗鬼や不透明感が続けば、日本の核武装に
まで話が進んでしまう事を相手国が善しとする筈が無い。
今のまま事が進む事が悪い結果に繋がる事を双方で腹を
割って話合う事こそが最大の抑止力である事は明らかな事。

 


さて、今後の行方に注視が必要だが、ま、戦術的発想しか
湧いてこないんだろうね。
最近の世論が勇ましい事が好きな方向に向かいつつあるから、
一番の懸念は先制攻撃論が盛り上がる事ではある。

 


Ref.
抗堪性について
https://ameblo.jp/yct/entry-11824028870.html
究極の自衛兵器
https://ameblo.jp/yct/entry-12029974632.html
何故に憲法改正が必要なのか?
https://ameblo.jp/yct/entry-12498689113.html