安部首相の米国での演説 | 悠釣亭のつぶやき

安部首相の米国での演説

安倍総理の訪米中の一連の演説を見ると、良きにつけ悪しきにつけ、
これだけハッキリと物を言った首相は過去に無かったことに気付く。
そして、この自信がどこから来るのか、期待と不安が入り混じる。
そして、そこまで言って大丈夫なの?って疑問も湧く。
一連の演説内容と、私の感じた事を記述しておく。



まず、25日昼、保守系シンクタンクのハドソン研究所で講演した。
ここでは、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈見直しの
目的について、
「世界の平和と安定に、より積極的に貢献する国になる。積極的
平和主義の国にしようと決意している」
「米国が主たる役割を務める安全保障の枠組みにおいて、日本が
弱い環であってはならない」
と強調した。


ここまで言うと、もう国際公約ですなぁ。
少なくともアメリカは日本が集団的自衛権行使に踏み切り、更なる
協力が得られると感じたに違いなかろう。
また、日本が弱い輪でないためには一体何をしようとするのかが
最大の懸念事項である。
自衛軍の強化、積極的平和を求めた派兵、米軍との軍事協力と
捉えるのが普通の感じ方だろうけど、日本国内でも何の議論も合意
形成もなされてない事をここまでハッキリ言うか?


また、中韓の日本右傾化批判 に対し、安倍首相は、日本の今年の
防衛費の伸び率がわずか0.8%なのに対し、中国は「毎年10%
以上の伸びを20年以上続けた」と説明し、日本の防衛費の伸びが、
中国の10分の1以下であることを指摘したうえで、「私を右翼の
軍国主義者と呼びたいならば、どうぞ、そうお呼びください」と述べ、
安倍首相を軍国主義と批判する、中国の矛盾を指摘した。


ま、当然言うべき事かもしれないけど、公の場で言うべき事かどうか
は疑問で、中国を刺激する事だけは事実。
現に中国は即刻反応し、「破れかぶれの横暴、恐れ知らずが
エスカレートした」と非難したり、「中国の国際的イメージを毀損する
という、腹黒い魂胆にすぎぬことが見て取れる」などと主張した。


翌日の国連での演説と合せて考えると、「今後は日本も防衛費を
もっと拡大しますよ」と言わんとしている様だ。
ま、日本の防衛費なんて高が知れてるけど、キワドイ軍拡競争が
また始まりそうな予感。
何せ、軍備ってメチャ金の掛かる仕事だし、一度拡大したら、
よほどの事がない限り減らせない上、維持するのに更にカネがかかる
からねぇ。
もうちょっと他の方法を考えてもらいたいんやが。



25日午後には、ニューヨーク証券取引所で演説した。
冒頭から、「今日は日本がもう一度儲かる国になる、『Japan is 
back』ということをお話しするためにやってきた」
そして、「世界経済回復のためには3語で十分です。Buy my
Abenomics(アベノミクスは買い)」と言い、日本への投資を呼び
かけた。
また、「日本は再び7年後に向けて大いなる高揚感の中にあります。
あたかもそれは、ヤンキースタジアムにメタリカの『エンター・サンド
マン』が鳴り響くごとくです」と言い、日本への投資の呼びかけに
ダメ押しをしたこと。


そして、特に重要な点は、
「日本に帰ったら直ちに成長戦略の次なる矢を放つ。投資を喚起
するため、大胆な減税を断行します」
「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」
「世界の成長センターであるアジア・太平洋。その中にあって、
日本とアメリカは、自由、基本的人権、法の支配といった価値観を
共有し、共に経済発展してきました。その両国が、TPPを作るのは、
歴史の必然です」


即ち、法人税などの企業減税を直ちにやると言っている。
そして、「国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」ということは、
大胆な規制緩和を行い、経済特区をつくるということ?
そして、国籍にもこだわらないないなら、外国人や移民を積極的に
受け入れるという風にも取れるな。
さらに、TPPはアメリカと同じ価値観でつくるということだな。


次の矢の話は初めて聞いたなぁ。
減税の事のようだが、減税はまだ確定事項ではないが、すぐやる
って、党内合意すら出来てないんじゃ?
良し悪しは別として、Grobal化への対応は特に遅れている点だから、
やることに対して異論は無いけど、どんな形でどこまでやるかって
議論すら出来てないんじゃないの?


国境にこだわらんって、国籍にこだわらんって、経済上とは言え、
物凄い変革やと思うが、一体何を意図してるんだか、訳が分かりま
せん。
国境があり、国籍があるから、通関や為替管理など、面倒な事が
あるのが障害という事?


やっぱり、TPPはアメリカ追随って言うか、日本特有の価値観は
捨てるという事のようで、どこまで激しい経済変化になるのか見当も
付きませんわ。
ま、元々TPPってそういうもんなんやが、こりゃぁ、エライこっちゃなぁ。


日本への投資を呼びかけるのは必要な事だけど、あやふやな事項を
あたかも確実に実行するというような明言をすると、場合によっては
詐欺ともとれる訳で、上記のどれもが、おいおい、本気で言ってるん
かいって疑問符が付く事だらけ。
実際にこの通りやるって事になったら、それこそ、エライこっちゃです
ねぇ。実現の可否も含めて。


何せ、日本買いが世界経済回復の鍵だし、ヤンキースタジアムが
沸騰した時代を再現するっちゅうんやから、ウソついたら死刑やで
って言いたくなる。
日本国を再びバブルの狂騒の中に放り込むと言ってるような感じも
するしなぁ。



26日午後には、米ニューヨークの国連本部で約20分の演説を
行なった。
世界の平和と安定に貢献するために「新たに『積極的平和主義』の
旗を掲げたい」と言い、「いかなる国も1国のみでは自らの平和と安全を
守ることはかなわない」と述べ、国連の集団安全保障措置への参加に
意欲を示した。


そして、中国などの名指しは避けたが、外交問題で「開かれた海の
安定に国益を託すわが国にとって、海洋秩序の力による変更は到底
許すことができない」と述べ、沖縄県・尖閣諸島の強奪をもくろむ
中国を暗に牽制した。
また、女性・平和・安全保障に関する「行動計画」を策定するとして、
女性の社会進出や保健医療を支援するため今後3年間に30億ドル
(約3000億円)超の政府開発援助(ODA)拠出や、シリア難民支援
として約6000万ドル(約60億円)を追加実施する方針を正式表明した。


後段は安倍氏独特の配慮だし、誰も反対はしない事柄であろう。
問題は前段の積極的平和主義の定義だなぁ。
集団的自衛権の下、PKOや兵站支援のみならず、海外派兵なども
視野に置いているが如く見える。


中国を牽制する事は必要だし、話し合いのキッカケにでもなれば、
言う事は無いけど、逆に反発して、益々冷え込むって事もあるから
ねぇ。
また、焦燥感が募る結果としての更なる嫌がらせや新たなチョッカイ
もまた、懸念される所。


それにしても、『積極的平和主義』って語感は良いけど、意味は
聞く人によって様々になろうな。
普通に解釈すれば、「平和のためなら積極的に行動する」って事に
なる訳だが、「日本が弱い輪であってはならない」と合せて解釈
すれば、何となくキナ臭さが伝わってくるね。



しかし、今回の一連の演説の全体的な感じとして、日本国として
世界に対し、強い発信をしたって事と共に、
ここまで言えるのか!?
約束やな!
本当にやれるんか?
何をどこまでやる気なの?
って疑問や懸念が強い。
一体、そんな自信はどこから来たんでしょう。
国民的、政治的合意形成もなしに突っ走れるの?
多数を取っていることで、何でも出来るって気持ちじゃないだろね?


発言のそれぞれが一国の首相の発言という重みがあるし、世界に
対する公約ってか、約束したようなもんだし、言葉通り実行出来な
ければ、詐欺師といわれても仕方ないわけだが、こりゃぁ、多くの
重大な懸案を作り出した事だけは事実ですな。



そして、安倍さんって、結構なバクチ打ちだって事。
「Situation is under control」もそうだし、「Buy my Abenomics」も
そうだが、どこまで本気か、実現可能か知らんけど、よくもハッキリと
明言するよねぇ。
本質が分からぬ人達が賭ける気になるのがよう分かるなぁ。


結局は、前にもどこかで書いたけど、実現したら大宰相どころか
世界の偉人、しなかったら悪質な詐欺師って事になりそうですな。