こんにちは
 
先日の大阪北部地震。
私は京都に出張で前日から入っており
ちょうど東京に戻る準備をしていた時に発生しました。
 
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一瞬、緊張感と恐怖心と、311のときの記憶が一気に駆け巡り
心理職として、自分の心の状態やあり方について冷静に考えました。
 
311の東日本大震災の時は、南三陸へ支援活動に参加させて頂き
心のケアの難しさを目の当たりにした経験と反省をいかし
まずは情報発信をさせて頂くことからと思い
 
先日のモーニングクロス出演時
「震災ストレスと心のケア」についてお伝えさせて頂きました。
 
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【被災者の心的ストレスへの意識と支援活動の歴史】   
一例として
■長崎県雲仙普賢岳噴火(1991年)
■北海道南西沖(奥尻島)地震(1993年)
■阪神淡路大震災(1995年)
■新潟中越地震(2004年)
■東日本大震災(2011年)
 
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1991年長崎県雲仙普賢岳噴火
1993年北海道南西沖(奥尻島)地震の際に
被災者の心理面のストレスに対する関心は集まってきていました。
 
1995年の阪神淡路大震災以降
被災者に対する心のケアの重要性が認識されるようにはなってきましたが
 
2005年に発生した新潟中越地震でも心のケアの支援活動は大きな注目を集め
2011年東日本大震災の支援活動では今までの経験が大きく役立っています。
 
東日本大震災では災害派遣医療チームDMAT「ディーマット」がすぐに派遣され
医療支援とともに、心のケアの必要性の認識が高まりました。
 
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しかし、私自身実際の現場へ足を運んだとき(震災から2か月後)
 
・うつ状態で部屋から出ることができない人
・カウンセリングを受けて自分の心の状態に気が付いた人
・「こうやって支援をしてくださることはありがたいことですが
私たちってそんない可哀そうな人ですか?」と
ご自身の在り方と世間の認識のずれに疑問を抱いている人
 
皆さま心の状態は様々であり
そう簡単に「心のケア」と言って歩み寄れるもの、心の領域に触れさせて頂くものでは
ないという思いにかられました
 
時代の流れとともに
長期的ケアをすることができる環境は整ってきています。
 
また、そう簡単に解決できる問題ではないことも十分理解しております。
 
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【被災者の心理的経過】
1茫然自失期(災害直後)
2ハネムーン期
3幻滅期
4再建期
(東京都福祉保健局・災害時の「こころのケア」の手引きより)
 
東京都福祉保健局が発行した『災害時の「こころのケア」の手引き』によると
被災者の多くの方は
「茫然自失期」→「ハネムーン期」→「幻滅期」→「再建期」という心理的経過をたどる
とされています。
 
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1「茫然自失期」(災害直後)
恐怖体験のため無感覚、感情の欠如、茫然自失の状態となります。 
自分や家族・近隣の人々の命や財産を守るために、危険をかえりみず行動的と なる人もいます。

 2「ハネムーン期
劇的な災害の体験を共有し、くぐり抜けてきたことで、被災者同士が強い連帯 感で結ばれます。
援助に希望を託しつつ、がれきや残骸を片づけ助け合います。 被災地全体が暖かいムードに包まれます。

 3「幻滅期
災害直後の混乱がおさまり始め、復旧に入る頃 ¡被災者の忍耐が限界に達し
援助の遅れや行政の失策への不満が噴出します。 
人々はやり場のない怒りにかられ、けんかなどトラブルも起こりやすくなりま す。
飲酒問題も出現します。 
被災者は自分の生活の再建と個人的な問題の解決に追われるため
地域の連帯感は失われる場合もあります。

4「再建期
復旧が進み、生活のめどがたち始める頃 ¡地域づくりに積極的に参加することで
生活の再建への自信が向上します。 
フラッシュバックは起こりえますが徐々に回復してゆきます。 
ただし、復興から取り残されたり精神的支えを失った人には、ストレスの多い 生活が続きます。
 
 
東日本大震災、原発事故はあまりの巨大な災害だったこともあり
この4期の心理的なサイクルがそれぞれ異例の長さになっているようです。
 
今回の大阪北部地震でも規模は小さくでも心の状態を見過ごすことなく
お過ごし頂きたいと思います。
 
 
【災害ストレスに伴う精神医学的問題】
災害後の時間経過     精神症状
数時間~数日        急性ストレス反応:錯乱、恐慌状態、不安緊張、解離症状、無気力
数週間~数カ月       うつ病、心身症:悲嘆、抑うつ、不眠、身体化症状
数週間~数年        適応障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD) 
                 アルコール依存症、フラッシュバック、反応の鈍化、過敏
 
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【支援者の対応のポイントと配慮】
1. 傾聴する(被災体験に寄り添う、無理矢理心の領域に入り込まない)
2. 怒りへの対応(幻滅期)
3. 深い悲しみへの対応
4. 触れる(子ども、お年寄り、身体接触への抵抗感がある人への配慮)
5. 専門機関への連絡、連携
6. 支援活動の記録と引継ぎ
7. 情報共有・プライバシーへの配慮
8. 援助チーム同士の情報共有・交換
 
※子ども、高齢者、障がい者、外国人は心と体への不調が一般的な大人とは違う形で現れる傾向があります。
状況に応じての対応が必要になります。
 
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【持続的支援のために・支援者の在り方】
支援をおこなう自分自身の心身ともに安心・安全な環境、体制を整える
無理矢理、心の領域に入り込まない
 
◎支援者が支援者自身の体調に留意し、休みを定期的にとる
◎支援のペースを意識する(ハイペースになり過ぎるとバーンアウトの現象が発生)
◎支援者同士での心の内を伝えあい、ストレス解消に繋げる
◎専門性を出し過ぎない(難しい専門用語を使うのではなく、日常的な言葉でサポートする)
 
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被災者皆さん、それぞれ心の回復のプロセスはちがいます。
私たち心理職はもちろん、サポートをされる方皆さん
心の領域に無理矢理入り込まないことを意識してください。
 
また、支援者側の心の状態も大切です。
私たちの心と体が元気でなければ支援はできません。
支援者自身の心と体のケアを怠らないようにしてください
 
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