後篇です。
上司の言葉をうまく聞き取れなかった私。
だが、そんなことを気にしていたのも一瞬だった。
そんなことは気にも止めず、意識はすぐさま暑さへと移ろいだ。
この日は殺人的な暑さだったことを記憶している。
汗が止めどなく滲み出てくる。
こんな天候をもたらしている太陽をついつい睨んでしまう。
ただ、彼には悪気はないはずだ。
いつもより、ほんの少しだけご機嫌斜めなだけだろう。
30分経過。
60分経過。
もう1人の上司、加納が来た。
「菅原(仮名)知らないか?」
菅原とは先ほどの何を言ったか聞き取れなかった上司のことだ。
「知りません。さっきあっちのほう歩いていったのは知ってますけど。」
と答えた。と同時に(まだ帰ってきてないんだな~と思った。)
※ ちなみに加納の面白エピソードもあります、既にブログでも紹介してます。
そうこうしていると、お客さんがやってきた。
若い夫婦に元気な子供が2人いる、4人家族だ。
挨拶を交わし、販売センターへと誘導する。
まずは、アンケート用紙に記入してもらう、いつもと何ら変わらない流れだ。
とにかく、子供2人は元気だ。動きまくって、喋りまくっている。
夫婦もそれには困り果てている様子だ。
記入しているアンケートを覗いてみると、どうやら旦那の年齢は俺と変わらないようだ。
片や、ワーキングプアに片足を突っ込んでいる私、片や、奥さんに子供が2人もいて、おまけに家まで買おうとしている・・・ 格差を感じずにはいられませんでしたよ。
色々と話を伺っていると、この辺りの場所は気に入っていて以前から当該分譲地には目を付けていたらしい。
話しをきいていて、何だかいけそうな気がしました。
そして、実際に家具を置いている、モデルハウスがあることを教えると、是非見たいと言うので案内しました。
子供は元気です。
外に出ると走りまわっています。
モデルハウスの前に到着すると、一層子供のテンションが上がっていました。
「早く、おうち見たい!見たい!見たい!」
そんなことを言っていました。
夫婦は、駐車場を見てなにやら話しをしていたので、子供は夫婦をせかしていたんでしょうね。
子供なりの知恵です。
そのモデルハウスは、高台になっていて、階段を20段くらい上がって玄関に入る。
そんな家です。
なので、私は一足先に鍵を開けておこうと階段を上り、玄関ドアを開けました。
するとそこには・・・・・・・
驚くべき、信じがたいものが目に飛び込んできました。
上司、菅原の靴がキレイに並べて置かれているではありませんか。
私は一瞬あたまが混乱しました。
(???なんだ 掃除でもしてるのか? いやいや、さっき見かけたときは手ぶらだったな)
なんてことを頭の中で思っていました。
すると私の中でピンとくるものがありました。
(違う!さっきのもうダメだは暑さじゃない!眠くてもうダメだの意味だったんだ!!)
急いで携帯を手に取り、上司の菅原に電話をしますが、一向に電話に出ません。
すると夫婦と子供が玄関まで来てしまいました。
焦る私。
早くモデルハウスの中に入りたい子供2人と夫婦。
困った私は苦肉の策として
「多分今、誰かが掃除しているので呼んできますので少々お待ち下さい。」
そう言い私は、2階へとダッシュしました。
だってそうでしょう?
モデルルームはここしかありません。
お客さんが来たらここに案内するのは目に見えています。
だとしたら、真っ先に見る1階で寝てるはずはないと思ったからです。
しかし、2階にはどこにもいません。
まさか1階なのかと思い、階段を下りていくと
!!!
玄関に夫婦子供の姿がありません、
まさか!!!
子供の声がリビングのほうからします。
変わらず、上司の靴は玄関に置いてあります。
状況が掴めないまま、リビングに入っていくと。
すれ違い様に夫婦が出てきました。
うつむき加減で。
子供もはしゃぐのをやめていました。
そう。
上司はリビングのラグマッドの上で爆睡していたのです。
デカイいびきをたてながら・・・
想像してみてください。
ある日、洋服屋さんで試着しようと思って試着室に入ったら、そこで店員さんが寝ていたんですよ、イビキしながら。
どうですか?
引くでしょう?
まさに私が置かれた状況は、それを端から見ていた別の店員さん、そんな感じです。
すぐさま、上司を叩きながら起こしましたが、なかなか起きない。
強く叩くとようやく起きました。
私 「お客さん来てますから、起きてください」
上司「え!!嘘!?どこ?どこ?」
私 「今は洗面所見てますから。」
上司 「でも出れないだろ~見られたらどうすんの?」
私 「もうばっちり寝てるとこ見られてるから大丈夫ですよ、早く出てください」
上司 「うっそ!!!????」
私 「嘘じゃないですよ、靴あったからヤバイと思って電話したのに出ないから。とにかく出てください。」
結局、お客さんもそのことには一切触れないまま、俺もその件に関して特に触れることもないまま、接客が終わりました。
あれだけ前向きな発言していたお客さんに、それから連絡をしても一切出てもらえなかったことは言うまでもありません。
そして・・・
この事件は、ウチの会社のすべらない話として今なお語り継がれています。
さらにもう1つ・・・
このモデルハウスは、この後、何度か申込みが入ったにも関わらず、すべてキャンセルになり、いまだに売れ残っているのです。
最後の一棟として・・・