中和で差のつきやすい問題をまとめてみました!
中和の応用といえば、完全中和の点が見つけにくいものと、水溶液の濃度を変えたものです。
完全中和が表やグラフの中間にある
①グラフ
下のグラフは、点をつないでいくと、折れ目が2か所になってしまいます。
完全中和は1点のはずなので、これはおかしいですね。
この場合は前半部分と後半部分を伸ばして、ぶつかったところが完全中和の点です。
一定量の水酸化ナトリウム水溶液に塩酸を加えていくタイプでも同じです。
グラフをかくときに必ず0から始まると思い込んでいる子もいるので注意しましょう。
よくある間違い↓
②表その1
一定量の水酸化ナトリウム水溶液に塩酸を加えていく
下の表のようなタイプ
塩酸が20㎤増えるごとに固体は0.4gずつ増えているので塩酸120㎤で4.4gのはずが、4.2gになっています。
その後も4.2gのままなので、完全中和は過ぎている…
完全中和は塩酸100㎤と120㎤の間と分かります。
固体の重さが4.2gで増えていないことから、完全中和のときの固体の値は4.2gです。
塩酸と固体の増え方を考えると
塩酸20㎤で固体0.4g増えているので
塩酸100㎤のところから固体0.2g増えるには、塩酸10㎤増えればよい…塩酸110㎤が完全中和と分かります。
塩酸を加えていくタイプでは、固体の値がある値から増えなくなります。この固体の値が完全中和の点なので、探しやすいです。
上の場合は真ん中の値が完全中和でしたが、下のようなタイプでも
完全中和の固体の値は3.9gですから
塩酸20㎤→0.4g
□㎤→0.3g
塩酸15㎤増える→95㎤で完全中和 と求められます。
③表その2
一定量の塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えていく
前半は0.4gずつ、後半は0.2gずつ固体が増えているので、入れかわるところが完全中和です。
さて、どこか?
「真ん中の35㎤!」
「そんなに適当に決めたらダメなんじゃ…」
「35㎤で当てはめて確かめればいいんじゃない?」
その通りなんです!とりあえず30㎤と40㎤の間なので35㎤にしてみます。
前半は水酸化ナトリウム水溶液10㎤→固体0.4g増える
後半は水酸化ナトリウム水溶液10㎤→固体0.2g増える ルールになっています。
水酸化ナトリウム水溶液30㎤のところから前半ルールで水酸化ナトリウム水溶液5㎤→固体0.2g増える→1.4g
ここから後半ルールで水酸化ナトリウム水溶液40㎤のところを考えると
水酸化ナトリウム水溶液5㎤→固体0.1g増える→1.5g
「あってるじゃん!」
はい、このパターン、8割くらいは真ん中で当たります。
完全中和は35㎤、1.4gのところでした。
ただ、確認は絶対にしましょう。
「違っていたらどうすれば…?」
「32とか、適当に当てはめればよくない?」
それもアリです!完全中和が小数になることは稀なので、いくつか当てはめてみるのもよいでしょう。
正攻法はつるかめ算を使うものです。
載せておきます。
①水酸化ナトリウム水溶液1㎤あたり何g増えるかを求めます。
前半 水酸化ナトリウム水溶液1㎤→0.04g
後半 水酸化ナトリウム水溶液1㎤→0.02g
②水酸化ナトリウム水溶液40㎤のところでつるかめ
1.5-0.02×40=0.8
(1.5-0.8)÷(0.04-0.02)=35(㎤)
つるかめを使うときの最大のポイントは①の「水溶液1㎤あたり固体□g」を求めることです。
濃度の異なる水溶液
中和の応用問題では、濃度の異なるものがよく登場します。
まず、塩酸A20㎤と水酸化ナトリウム水溶液X50㎤で完全中和だったとしましょう。
問題1 塩酸A10㎤に水を40㎤加えてうすめました。ここに水酸化ナトリウム水溶液Xを加えて中性にするには水酸化ナトリウム水溶液Xを何㎤加えればよいですか。
「簡単…塩酸A10㎤だからXは25㎤!」
正解です。
「え?うすめたのは…」
ひっかけです。水でうすめましたが、中に入っている塩化水素の量は変わりません。
なので、塩酸A10㎤を中和すればよいだけです。
図で説明します。
塩酸A10㎤の中に塩化水素が4コ入っていたとします。
これに水を加えると…
全体の中に入っている塩化水素の数は4コのままですね。
なので塩酸A10㎤を中和させればよいです。
塩酸A20㎤ 水ナト水50㎤
10㎤ □㎤ 25㎤
問題2 塩酸A10㎤に水を40㎤加えてうすめ、ここから25㎤取り出しました。
中性にするには水酸化ナトリウム水溶液Xを何㎤加えればよいですか。
今度はうすめたことを考えなくてはいけません。
うすめた水溶液50㎤中に塩酸Aが10㎤入っているので、25㎤中に塩酸Aは
「5㎤!」
そうです。塩酸A5㎤を中和するには水酸化ナトリウム水溶液Xは
塩酸A20㎤ 水ナト水X50㎤
5㎤ □㎤ 12.5㎤
このように濃度が変わったら、もとの水溶液が何㎤入っているのと同じかを考えればOKです。
問題3 水酸化ナトリウム水溶液Xの2倍の濃さの水酸化ナトリウム水溶液Y100㎤を中性にするには塩酸Aを何㎤加えればよいですか。
「2倍の濃さのYが100㎤…Xが200㎤あるってことでいいのかな?」
その通りです!
水酸化ナトリウム水溶液X200㎤を中和する塩酸Aは
塩酸A20㎤ 水ナト水X50㎤
□㎤ 200㎤ 80㎤ですね。
問題4 水酸化ナトリウム水溶液Xの2倍の濃さの水酸化ナトリウム水溶液Y100㎤あります。塩酸Aの5倍の濃さの塩酸Bで中性にするには塩酸Bを何㎤加えればよいですか。
「塩酸Aなら80㎤だから、5倍のBなら400㎤!」
「んん?濃いのなら少なくていいんじゃない?」
そうなんです。
もとの塩酸A80㎤と同じ量の塩化水素が入っていればよいのですが、濃い塩酸Bには同じ体積に塩化水素が5倍入っているので、水溶液の量は1/5でよいのです。
塩酸A80㎤=塩酸B16㎤ 16㎤です。
化学分野(水溶液、気体、溶解度、燃焼)で重要なのは粒のイメージです。
水溶液の濃さ比較
サピックスのマンスリー、最後の問題は毎年大体これな気がします。
塩酸Aと水酸化ナトリウム水溶液X、塩酸Bと水酸化ナトリウム水溶液Yをそれぞれ混ぜると次の表のようになりました。
問題5 水酸化ナトリウム水溶液Yの濃さは水酸化ナトリウム水溶液Xの濃さの何倍ですか。
これは水酸化ナトリウム水溶液にとけている水酸化ナトリウムの重さを求めれば簡単です。
※求め方は中和①参照
それぞれの水酸化ナトリウム水溶液にとけている水酸化ナトリウムは
水ナト水X25㎤→水ナト0.5g
水ナト水Y50㎤→水ナト2.0g
水酸化ナトリウム水溶液を50㎤にそろえると…(水ナト水X25㎤→水ナト0.5gを×2)
水ナト水X50㎤→水ナト1.0g
水ナト水Y50㎤→水ナト2.0g
X:Y=1:2 になります。
よって、水酸化ナトリウム水溶液Yは水酸化ナトリウム水溶液Xの2倍の濃さになります。
問題6 塩酸Bは塩酸Aの濃さの何倍ですか。
こっちの方が厄介です。
まずは完全中和を並べてみます。
塩酸A50㎤ 水ナト水X125㎤ 食塩5g
塩酸B100㎤ 水ナト水 Y50㎤ 食塩4g
「塩酸の濃さ比較だから塩酸をそろえてみればいいんじゃ?」
「さっき水酸化ナトリウム水溶液の濃さを出したからそれを使うんじゃないかな?」
「食塩をそろえるのがラクな気がする」
…全員正解です。
解法①塩酸をそろえる
塩酸A50㎤ 水ナト水X125㎤ 食塩5g
塩酸B100㎤ 水ナト水 Y50㎤ 食塩4g
塩酸を100㎤にそろえてみましょう。(塩酸A50㎤ 水ナト水X125㎤ 食塩5gを×2)
塩酸A100㎤ 水ナト水X250㎤ 食塩10g
塩酸B100㎤ 水ナト水 Y50㎤ 食塩4g
塩酸Aが完全中和すると食塩が10g、塩酸Bが完全中和すると食塩が4gできるので濃さは
A:B=10:4=5:2 となります。
別解)食塩ではなく水酸化ナトリウム水溶液に注目して、水酸化ナトリウム水溶液YをXに変えます。YはXの2倍の濃さなので
水ナト水Y50㎤=水ナト水X100㎤
塩酸A100㎤ 水ナト水X250㎤
塩酸B100㎤ 水ナト水X100㎤
中和するのに必要な水酸化ナトリウム水溶液の量から
A:B=250:100=5:2 となります。
解法②水酸化ナトリウム水溶液をそろえる
塩酸A50㎤ 水ナト水X125㎤ 食塩5g
塩酸B100㎤ 水ナト水 Y50㎤ 食塩4g
まずは水酸化ナトリウム水溶液YをXにします。
塩酸A50㎤ 水ナト水X125㎤ 食塩5g
塩酸B100㎤ 水ナト水X100㎤ 食塩4g
水酸化ナトリウム水溶液の量を125㎤にそろえてみます。(塩酸B100㎤ 水ナト水X100㎤ 食塩4gを×1.25)
塩酸A50㎤ 水ナト水X125㎤ 食塩5g
塩酸B125㎤ 水ナト水X 125㎤ 食塩5g
同じ量の水酸化ナトリウム水溶液を中和するのに必要な塩酸の量が
A:B=50:125=2:5、少ない量で中和できる方が濃いので濃さの比は逆比になります。
A:B=5:2
解法③食塩をそろえる
塩酸A50㎤ 水ナト水X125㎤ 食塩5g
塩酸B100㎤ 水ナト水 Y50㎤ 食塩4g
食塩を5gにそろえてみましょう。(塩酸B100㎤ 水ナト水 Y50㎤ 食塩4gを×1.25)
塩酸A50㎤ 水ナト水X125㎤ 食塩5g
塩酸B125㎤ 水ナト水Y62.5㎤ 食塩5g
同じ食塩5gを作るのに必要な塩酸の量が
A:B=50:125=2:5 少ない量で食塩を作れた方が濃いので、濃さは逆比。
A:B=5:2
どの解き方で解いても塩酸Bは塩酸Aの2/5倍の濃さです。
「とりあえず何かそろえればいいんだ!」
そうです。どこから考えるのがラクかはその問題の数値によって変わってきます。
ひとつの解法にこだわらず、そろえやすいところから攻めるとよいと思います。
逆比を忘れないために、常にどっちが濃いか?を意識しましょう。