物理や化学の計算では、図にかき込みをしたり、条件を書き抜いて整理したりが重要になってきますが、この「書く」という作業を中々してくれない子が多いです。保護者の方からも「口を酸っぱくして言っているのに!」という声をよく聞きます。
原因を考えてみます。画期的な対策を提案できる訳ではありませんが、参考になることもあるかもしれませんのでお付き合いください。
大きく分けて3タイプいると思われます。
①書き方が分からない、きれいに書きたい、書くことは「清書」だと思っている
何のために書くか?条件を見える化して、考えやすくするため、書くことは自分のためのメモです。それが分かっていない子が結構います。書く=人に見せるものという意識があるように感じます。このようなタイプは「書いて?」と声掛けをすると下のようなものを見せてくれたりします。
考えた過程は伝わってきます。「私はこう考えました」と見せる用の式です。完全に解き終わってから書いています。解説にこのような式が多いからこのように書いているのかもしれませんが、書くことのメリットがあまり感じられません。こんなときは書き方を知ってもらいます。
28-20=8よりも、自然長20㎝を書いた方がよいのです。考えるためのメモなので。
すべて書かなくてもよいのです。
このくらいでも、考えの補助になり、役割としては十分です。分かった時点で書くのをやめてもよいのです。
これを書くのだ!の部分をはっきりさせることが重要に感じます。見せてくれたものは先生が解説用に見せてくれたもの、自分が書くのははじめのような式…と考える子もいるからです。
このタイプは比較的真面目な子が多いので、知ってもらうことと目的をはっきりさせています。
②書くことのデメリットを大きく感じている
いわゆる「面倒がるタイプ」…最大派閥かと思われます。本人に聞くと面倒くさい、時間がかかる、分からなくなる…などといった言葉が登場します。
面倒という表現をすると出来るのにしないという印象ですが、小学生の多くは「書くのが大変」なのでは?と感じています。成長過程の小学生にとって「書くこと」と「考える」という「別のこと」を同時に行うのはかなり大変なようです。「書く」という別行為を行うために思考が中断されます。「書いてるうちに分からなくなっちゃった」…書きたくなくなります。
また、問題を頭の中で把握して考える能力は大人より高いことが多いです。書き込みがされた紙を外部メモリ、頭の中で把握する容量を内部メモリとしてみたとき、大人に比べて内部メモリが大きく、外部メモリとの変換にかかる負担が大きいのが小学生です。頭の中だけで考えた方が考えやすいのです。
といっても、その大きめの内部メモリでも太刀打ちできないのが中学受験です。慣れ親しんだ方法とは別の方法をマスターしなければなりません。
まず、納得してもらうこと。「書いたら分かった」「書いたら簡単に感じた」「書くのにそれほど時間がかからなかった」「書いた方がはやかった」を実体験してもらう→書き慣れて書くことの負担を軽くしていくよりありません。小学生はどんどん成長します。だんだん書きながら考えることが出来るようになってもきます。成長期は頭の使い方の過渡期であることも感じます。
出来る工夫もあります。「書くこと」と「考えること」をなるべく分けた書き方にすることです。浮力の記事で紹介している解き方はまさにそれです。
初めに型を書き(書く作業)
書き終わったら考える!
てこなどの力学も
はじめに情報をすべて書き込み!
棒の重さ、滑車の重さの他に、距離など使わないかもしれない情報も書き込んでおきます。
書き終わったら考えよう!
力学の応用問題でつまずく子は「まず考えて、方針が立ったら書こう」とするタイプが多いです。順番が違います。「書く→見える→方針が立つ」を実感し、実践しましょう!
③書くことと思いつかない/忘れてしまう
習ったときは素直に書き込みをしながら解いていたのに、テストになると素になってしまい、書くことをすっかり忘れてしまった!…保護者の方は驚かれたりしますが、5年生くらいまではわりとあることです。問題の内容に集中してしまうようです。脱力してしまいそうになりますが、クセがつくまで練習するより他ありません。
④おまけ…頭の中だけで考えた方がカッコいいと思っている
大人は頭の中だけで考えるのが苦手になっています。そんな大人はついうっかり「こんなの頭の中だけで出来るのか、すごいな」と言ってしまいます。褒めようとして褒めているのではなく、素で「すごいなー」と思っているので、子どもはそれを察知します。そんな褒めはとてもうれしいものでしょう。その力を伸ばしたくなるのも分かります。子ども同士でそのような会話があることも想像できます。
書いてもカッコいいことを感じてもらいましょう!