今年度から予習シリーズの改訂が始まりました。

現4年生からですので、来年は5年生の、再来年は6年生のテキストが新しくなる!見るのが楽しみです。

現5・6年生のテキストの前は、6年生の夏期前までで全範囲を終えるカリキュラムでしたが、現在は6年生の4回までで全範囲が終わるカリキュラムになっています。その後は1回の範囲が膨大な(1回が5年生の2~5回分の内容)復習が夏期前まで続きます。

四谷大塚や早稲田アカデミーなど、塾の現場では工夫がされているようですが、このカリキュラムは正直無理があると感じていたので、改善されることを期待しています。

 

この前回の改訂はサピックスに追いつくため、というのが一般的な塾関係者の見方でした。

確かにサピックスでは5年生までに一通りの範囲を終わらせ、6年生で知識や難度を少しずつ上げたサイクルに入ります。

 

さて、本当にサピックスは進度が速いのか?実はサピックスで扱うのが他塾より遅い内容がいくつかあります。

代表的なものを挙げます。

とつレンズ

光の直進、反射、屈折、三原色は5年生で2回、6年生の初めで2回で扱われますが、授業で扱われるのは6年生の夏期が初めてです。

予習シリーズでは5年生の夏期前あたり、日能研でも6年生の5月頃登場しています。

 

直並列の回路(電流)

一般的な回路は5年生の段階で反復されますが、このタイプの回路について扱われるのは6年生の春期です。

一般的な回路を定着させ、別の考え方を使わないと解けないこのタイプはそのあとで、ということでしょう。

予習シリーズでは5年生の10月頃登場しています。

 

この2つの共通点は、使いこなすのにある程度の客観性が必要なことです。小学生は、理解する力は高くても、分かったことをいくつか把握して考えることは難しいことが多いです。そしてその力は、小学5~6年生の期間の中でかなりのスピードで伸びていきます。そのタイミングを測って、あえて遅くしているのでしょう。

 

惑星

登場するのは6年生の9月です。6年生夏期のテキストにも問題は出ていますが授業では扱われません。

予習シリーズでは6年の初め、2月くらいに登場しています。

これはサピックスが遅すぎると思います。もともとあまり出題頻度が高くないことや、月の公転図の見方を定着させてから扱おう、という意図があるのだと思いますが、過去問演習に入る直前に扱うにしては慣れるまでに時間がかかる内容だと思うのです。

夏期には「月」が扱われ、今までの復習に加えて季節による月の高さの違いが登場します。太陽の単元とも関連させて考えられ面白い内容ですが、出題頻度は惑星より低く、一部の難関校(主に開成)向けです。これよりも先に惑星があるべきでは?と思ってしまいます。

ただ、他塾ではほかの内容と合わせて扱われることが多い中、惑星だけで1回使うのはじっくり演習出来てありがたいところです。

 

 

サピックスのカリキュラムの優れたところは、小学生の成長に合わせて内容が細分化され、少しずつステップアップしていくところです。天体や力学、電流など、重要かつ反復が効果的な単元は、5年夏前→5年冬→6年春→6年夏のように散らばっています。

テキストが毎回配られる冊子のため、整理の負担が保護者にかかること、疑問点が出たときに調べにくいことが難点です。

予習シリーズはまとまりとしてとても優秀です。「予習」と謳っているとおり、自学出来るように作られています。その結果…まとまっているために1つの単元を一気に学習することになってしまうのが難点です。5年生の前半でとつレンズはちょっと難しいのでは…と思います。

早稲アカのマスターテキスト(演習編)もまとまっていてよいテキストです。(6年生の後半で数値変えのものが配られますが、もっと早くほしいです!)

 

さて、サピックスはなぜこのカリキュラムが組めるのか?テキストが冊子であることに加えて、春期夏期冬期の講習も含めて授業が進んでいくカリキュラムになっていることが大きいと思います。

予習シリーズを使う四谷大塚と早稲田アカデミー、ほか日能研など多くの塾は新しい内容を習うのは通常授業で、講習では復習や演習(一部予習)を行うことがほとんどです。新規学習と復習がはっきりと分かれています。サピックスは進みながら復習もしているのです。

もちろんそれが絶対によいということではありません。じっくり復習した方が定着する子もたくさんいます。

 

サピックスからの回し者のような記事になりましたが、サピックスが強い理由のひとつはこのカリキュラムだと思っています。

このカリキュラムに乗れるなら、サピックスに通うことには大きな価値があるでしょう。

逆に、上手く回らないなら合う塾に行った方がよい結果につながることも多いです。