理科は理解するのが難しいけど、いったん理解してしまえばその後は難しくない。

算数はひとつひとつを理解するのはあまり難しくないけど、その後が難しい。

生徒が言った言葉です。賢い!納得です。

 

理解するのが難しい理科だから、出題側も「本当に理解しているのか」を問いたくなります。

今回は原理を理解するのが難しい単元の代表「燃焼」の登場です。

私がいちばん書きたかった内容かもしれません。

サピックス7月組分けの記事でも少し触れています。

 

「燃える」とはどういうことでしょう?

カエル「火が出る!」

質問が抽象的過ぎましたね。穴埋めにします。

(  )や(  )を出しながら激しく(  )と結びつくこと

カエル「二酸化炭素!」

うん。そう思うよね。最後の(  )を先に埋めてみよう!

カエル「酸素!」

そうです。「燃える」とは酸素と結びつくことです。

例えば鉄が燃えると

鉄+酸素→酸化鉄

ハムスター「二酸化炭素出てない」

そうなんです。燃えても二酸化炭素が出るとは限らない。

二酸化炭素が出来るには?

ハムスター「炭素を燃やす!」

そうです!

炭素+酸素→二酸化炭素

ですね。

カエル「じゃ、はじめの(  )は何が入るの?」

燃えて必ず出てくるもの…物質ではありません。

ハリネズミ「熱と光!」

さすがハリネズミくん。そうです。

カエル「そっちー!?」

そうなんです。

燃えて必ず出るのは熱と光!必ず出る物質はありません。

何が燃えたかで、出来る物質は変わってきます。

まとめてみます。

 

炭素+酸素→二酸化炭素

水素+酸素→水

鉄+酸素→酸化鉄

銅+酸素→酸化銅

マグネシウム+酸素→酸化マグネシウム

 

ハムスター「ろうそくは?」

ろうそくは炭素と水素で出来ています。だから燃えると

ろう 炭素+酸素→二酸化炭素

   水素+酸素→水

二酸化炭素と水が出来ます。

 

実は炭素と水素で出来ている物質はたくさんあります。

これが有機物と呼ばれています。

生物や生物の体が変化してできたものたちです。

石油(大昔の生物の化石燃料)、石油から出来るプラスチック

石炭、天然ガス(同じく化石燃料)、木、紙、アルコール(お酒と考えれば麦や米、ブドウなどの植物から作られているのが分かります)、野菜、肉、砂糖、でんぷん…

これらが燃えると?

ハムスター「二酸化炭素と水が出来ます」

そうです。

カエル「木炭は?」

いい質問です。木炭は炭素だけで出来ています。なので燃えると

カエルハムスター「二酸化炭素だけ!」

そうです。

ここをちゃんと分かっているかどうか問われるのです。

実際にどんな問題が出るのか見てみましょう。

 

集気びんの中でろうそくを燃やすと、集気びんがくもりました。

また、燃えた後の集気びんに石灰水を入れて振ると白くにごりました。

 

問1.集気びんの中でスチールウールを燃やして、火が消えた後石灰水を入れて振りました。結果を次のア~エから選びなさい。

ア.びんはくもり、石灰水は白くにごる

イ.びんはくもらず、石灰水は白くにごる

ウ.びんはくもり、石灰水はにごらない

エ.びんはくもらず、石灰水はにごらない

問2.集気びんの中で木炭を燃やして同様の実験を行いました。結果はア~エのどれになりますか?

 

いかがでしょうか?

ろうそくを燃やしたとき集気びんがくもったのは、ろうの中に水素が含まれていたため、燃えて水(水蒸気)が出来たから。

また、石灰水が白くにごったのはろうの中に炭素が含まれていたため、燃えて二酸化炭素が出来たからです。

 

問1.スチールウールは鉄ですから

鉄+酸素→酸化鉄

酸化鉄が出来るだけ。水も二酸化炭素も出来ません→エ

 

問2.木炭は炭素だけで出来ていますから

炭素+酸素→二酸化炭素

二酸化炭素だけ出来ます→イ

 

「分かってる?本当に分かってる?」の意図が伝わったでしょうか?

燃えると二酸化炭素が出そう…という心理をついてきます。

本当に分かっていないと解けないのです。

 

もう1題。昔女子学院で出題された名作を少し変えて出題です。

 

集気びんの中でろうそくを燃やすとしばらくして消えました。

これに対して二つの意見が出ました。

A.酸素が少なくなったから消えたのではないか?

B.二酸化炭素が多くなったから消えたのではないか?

これを確かめるために実験をします。

 

問1.1回で確かめるにはどんな実験をすればよいでしょうか?ただし、空気には酸素が20%、二酸化炭素が0.04%含まれているものとします。

ア.酸素100%の集気びんの中でろうそくを燃やす

イ.二酸化炭素100%の集気びんの中でろうそくを燃やす

ウ.酸素50%二酸化炭素50%の中でろうそくを燃やす

 

実験結果からAが正しかったと確認されました。

問2.実験の結果はどうなっていたでしょうか?

ア.すぐに消える

イ.空気中より激しく燃える

ウ.空気中よりおだやかに燃える

エ.空気中と同じように燃える

 

問3.この実験の結果からAが正しかったと判断できた理由を説明しなさい。

 

問4.酸素20%、二酸化炭素80%の中でろうそくを燃やすとどうなりますか。

上のア~エから選びなさい。

 

いかがでしょうか?

問1.がウなのはなんとなくでも判断できそうです。

ちなみに

ア→激しく燃えるが、酸素が多いからなのか、二酸化炭素少ないからなのか判断できない

イ→すぐに消えるが、酸素がないからなのか、二酸化炭素が多いからなのか判断できない

 

問2.結果はイになります。

空気中の20%より酸素が多いので激しく燃えます。

 

問3.酸素50%…空気中の20%より多い

   二酸化炭素50%…空気中の0.04%より多い

もし二酸化炭素が多くなると消えるのなら、空気中よりも二酸化炭素が多いのですぐ消えるはずである。激しく燃えたので、酸素が原因で燃えることが分かる。

 

問4.エ

酸素が20%なので空気中と同じ。二酸化炭素の量は関係ありません。

 

どうでしたか?

問3は難しいので飛ばして問4にいって…

問4.二酸化炭素が多いので空気中より燃えにくそうな気がしてしまいませんでしたか?

二酸化炭素は燃えることに関係ない気体です。窒素と同じ!

そこが「本当に分かってる?」の狙いどころでした。