ママ友相手に、切れる | グローバルに波乱万丈






彼女とは、次男が私立の小学校時代の友達のお母さんだから、8年以上のつき合いになります。

カリブ海のトリニダート出身の、私より十歳近く年上の人です。



この6月に高校を卒業するその子とうちの次男、

中学校からは可能性を伸ばし易いそれぞれの学区の公立に行き始め、今はその子に会うことはあまりありませんが、

昔は、彼女の男の子と一緒に映画やディズニーによく行ったものです。


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おっとりして、のんびりしてて、物静かで、優しくて、いつも笑顔で、

ドレッドヘア (編みこみの髪) のせいか、昔は女の子に間違われたような子です。


ジャマイカ人のご主人は、海外の学会にも呼ばれるような糖尿病の専門医。

彼女自身も、母国のいい大学をトップで卒業した人。

上のお姉ちゃんも優等生で、父親のような医者になるために大学で勉強中。


でも、末っ子のその子は勉強が苦手で、サクスホーン演奏家になるのが夢で、

デイドリームが多く、宿題でも出かける仕度でも、時間がかかることにも母親の彼女は苛立ちます。


ADHDだと診断され、薬を飲んでいた時期もありましたが、

本当にADHDなのか、性格なのか、私には疑問です。


とてもいい子です。




昔から、母親の彼女は、その子に苛立つ度に私に電話をしてきます。


「何度言っても、言っても、部屋の掃除をしないのよ!」

「翌日が提出日だというのに、宿題の前に座って、何時間もぼけーっとしてるのよ!」

「あまりにも上の子と違うから、私はもう、あの子をどうしたらいいのかわからないわ!」


朝の7時だろうが、夜中の11時だろうが、その度、私は一時間近くも彼女の話を聞き、

「でもねぇ、○○君、性格がいいから。 私は大好きだなぁ。 あんないい子はなかなか居ないわよ。」

「私も長男で経験があるから、わかるわ。 でも、今だけよ。 びっくりするくらいしっかりするから。」

「何言ってるのよ。 ここまで頑張ってサポートしてきたんじゃない。 貴女ならできるわ。」

「怒ったら駄目よ。 因数分解が少々できなくても、何とかなるものよ。」

などと、なだめ、励ましてきました。




昨日、数ヶ月ぶりに電話がかかり、彼女はいつものように息子の文句を始めたのですが、

でも、よく聞けば、その子はすでに希望校を含め、三つの大学に受け入れられているということでした。

確かに、黒人の生徒は大学に受け入れられ易いのですが、それでも、本人なりの努力の成果です。


大学が決まってるのに、どうしてそんなに文句を言うのかと訊けば、

州の奨学金をもらうにはSATテストの点数が足りないのに、勉強をしないとか...

後数ヶ月で親元を離れるというのに、自分で決断ができず、何でも母親の希望を訊くとか...


三十分くらいは “まぁ、まぁ、そんなことは言わず”的に聞いていたんですが、

「あの子、典型的なアメリカ人なんだから! 感謝が足りないのよ!

なに不自由なく育って、私が子供の頃に比べたら、自分がどんなに恵まれているかわかってないのよ!

ゲームをだらだらとして、友達とぺちゃぺちゃ喋って、奨学金をもらうチャンスを逃し、

どうして、親があくせく働いて払ってやらないといけないの? 学生ローンで自分で払えばいいのよ!」


ご主人の収入が月に何百万円もあり、どんな高額な授業料でも払えるのに、

ADHDかなんだか知らないけど、一時はひどい成績だった子が頑張って三つも大学に受かってるのに、


それに、過去にその子が涙を流し、

“僕がどれだけ努力しようが、お母さんには充分じゃあないんだ。 僕はお母さんを満足させれる子じゃないんだ。”

と言ったという話が忘れられませんから、


いつだって子供の味方の私は、彼女に ぷちっ! と切れてしまったんです。



「後数ヶ月しか一緒の時間がないのに、どうして楽しい時間を過ごさせてあげよう思わないのよ!?」 と私。 

「後数ヶ月しかないから、ちゃんと指導してやらないといけないんじゃない!」 と彼女。

「この数ヶ月がみがみ言っても、何も変わらないわ!」

「大学の一年目で、どれだけの子が落ちてくかのか知ってるの?! 今のうちに指導してやらないと!」

「それはずっと親に締め付けられてきて子達が、突然、自由を手に入れ、コントロールが効かなくなるからよ。 

早めに自由を与え、失敗させ、学ばせるべきなのよ!」

「だって、あの子は私があれこれ言わないと、なんにも自分でできないんだもの!」

「常にあれこれ口出すから、自分で判断できなくなってしまうんじゃない!」


と延々と続き、最後、私は、


「貴女の気持ちはわかるわ。 でも、私は長男の時にたくさん失敗をし、お互いの目も見れなくなってしまい、

もう少しで取り返しのないほど、関係をダメージしてしまうところだったから、私は貴女とは違う考えなの。 

一時は高校を卒業できないかと思うほどの長男が、大学に行けたことを感謝し、

奨学金なしでも喜んで学費を払ってやったわ。

長男の大学院は今年いっぱいだから、一年しか一緒の時間がないの。 私ができるだけのことは全てしてやるつもり。 

小言は一切言わないわ。 

あの子が私がすることに気付こうが気付くまいが、感謝しようがしまいが、どうでもいいのよ 

私はしたくてやってるんだから... 私はあの子の親なんだから。 私はそう考えなの。」


と言い、彼女はまだなんだかんだと言っていましたが、何とか纏めて電話を切りました。



あんな言い合いは始めてのことですが、きっとそのうち彼女はまた電話をしてくることでしょう。 

いくら息子に苛立ち、どんなに文句を言っても、誰か息子の味方をしてほしいに違いないのです。

それはそれでいいのですけど。 






主人が居れば、主人にぶちまけ、気が落ち着くところなんですが、 

モロッコ出張のため、ここでちょっと感情的に長々と書いてしまいました。 失礼しました。