彼女はフランスでかなり有名なニュース・キャスターらしいんです。 そんなこととは知らず、去年、私達家族はコロンビアの小さなホテルで、彼女と彼女の家族と仲良くなりました。
少し不思議な光景でした。
水の中で、黒人の小さな男の子が白人の女性の体にしがみ付いて、とても嬉しそうにはしゃいでいました。 彼女も愛おしくてたまらないように男の子を見つめ、キス、ハグ、そしてまたキス。 プールサイドに立つ白人の男性が、嬉しそうに黒人の赤ちゃんを抱いて、水の中の二人に微笑んでいました。
彼女と、彼女と同じ局のライターの旦那さんは、コロンビアで孤児院の赤ちゃんを養子として迎え、来てプールで彼女と遊んでいた黒人の男の子は、6年前にエチオピアで迎え入れた養子だったのです。
上の子に動物の書き方を教えるうちの息子
睨めっこをして遊ぶ私
なんてラッキーな子供達なんでしょう。 貧乏な国の孤児院から、パリの温かい家庭、学校、クリスマス、旅行... 愛情をたっぷり注いでくれる両親。
彼らの様子は、まるで本当の親子のようでした。
本当の親子...
“本当の親子”とは、どういうことなのでしょうか?
20歳になる私の上の息子は、主人とは血が繋がっていません。 結婚した時、主人は、当時3歳の父親のいない息子を彼の実子とする手続きをしてくれました。 「皆で同じ苗字を名のろう」と。
それが気に入らなかった前夫の家族のプレッシャーで、息子が5歳の時に前夫のことを話す羽目となったのです。
いつものように絵を描いていた息子に、
「あのね... 貴方にはね... 他にもう一人お父さんがいるの。」
息子は手を止めて、
「え? 誰?」
「あなたが赤ちゃんの時に死んでしまったの。」
そう私が答えると、何もなかったかのように、息子はまた絵を描き始めたのです。
「知りたくないの?」
息子は絵を描き続けながら、、
「僕には僕を愛してくれているお父さんがいるんだから、死んだ人のことは別にいいよ。」
たった五歳で、“愛してくれている”と感じていること、愛情が何よりも大切なことと理解してくれていること、
嬉しくて胸が締め付けられるようでした。
涙をこらえて、
「そうね。 そうよね。」
さりげなく言い、主人への感謝で胸がいっぱいでした。
自分の血を引く下の息子と全く同じように、主人は息子を愛してくれています。 主人の家族も二人のことを、全く同じように大事にしてくれます。
コロンビアから帰って少しして、パリの彼女から写真が届きました。 新しい孫、甥っこ、いとこに会うのが待ちきれず、空港に駆けつけた彼女と旦那さんの家族。
時々、こんな妄想をすることがあります。
大きくなり過ぎて養子先がなかった孤児達... 別々じゃないと養子にもらえなかった兄弟の孤児達... 黒人、白人、アジア人、スペイン人、アラブ人... 10人くらいかな? うちに迎い入れ... 一人、一人におやすみのキスをしている私の姿。