カリブの島間の対立心 | グローバルに波乱万丈
ほぼ一民族国の、植民化された歴史のない国の私達には、興味深い話なのです。


     $モロッコ人旦那、そしていろんな国人のお話

主人の大学時代の友達、奥さん、従妹夫婦が遊びに来ました。 

四人ともカリブ海にある元オランダの植民地の島出身なのです。 



カリブ海のオランダ領アンティルのアルーバ島、ボネール島、キュラソー島。 

頭文字を取って、ABC諸島と呼ばれる三大島があります。

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昔、この隣同士の三つの小さな島には、ベネズエラからやってきた背がとても高い現地民が住んでいました。


15世紀の終わりに、スペインが送ったコロンブス他の探検家にカリブの島々を発見されてしまったことが、今でも続く島間の対立心の始まりなのです。 



アルーバ島:

島に金が発見され、ヨーロッパ移住者が多く、現地民は労働に使われた。

後に、ベネズエラからの原油の輸送会社が設置されてため、中東からも移住者が多い。



それ結果...

この島の人達は現地民と白人のミックスの人が多く、皮膚の色が薄い。

パーティー好きヨーロッパ人達の影響からか、お酒好きが多い。




ボネール島:

価値のない島として、現地民は他の島に強制労働で送られ、一時はほとんど無人島状態になったが、後に、家畜の世話に現地民の奴隷が住まわされた。

南スペインの犯罪者の島流し先でもあった。



その結果...

現地民の血が引く人が多い。今でも、家畜や塩田製塩など以外の産業は進んでいず、自然に囲まれた環境でシンプルな生活をしている。



キュラソー島:

アフリカから何ヶ月もかかる奴隷輸送の中継地であり、病気、弱っている者はそこで降ろされていた。
現地民は他の島へ強制労働に送られ、ほとんど島には居なくなった。

その結果...

主な住民はアフリカ人奴隷の子孫の黒人である。

(一番大きな島ということで、一時期オランダからの資金はこの島が代表で受け取っていた。)




辛い、厳しい過去を乗り越えた先祖を誇り、それぞれ自分の島への愛国心が高いためということもあるようで、島間の対立心が高いようで、



アルーバ人 - お酒好きなので、“飲んべい” 

ボネール人 - 田舎者でということで、“能無し”

キュラソー人 - オランダからの資金を平等に分けなかったとして、“泥棒”



などと、お互いをなじり合っているそうです。




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友達はキュラソー人、アフリカの黒人の子孫。 

奥さんはアルーバ人、現地民とレバノンからの移住者等のミックス。


二人がアメリカに留学中に出会ったのだが、結婚しても子供ができても、彼女の両親は奴隷の子孫の彼のことを認めず、“あの島の奴”と名前を呼ぶのも拒否していたそうです。 

この夏に家族四人でアルーバ島に移り、今では彼女の家族も彼のことを温かく受け入れています。 

三人目の赤ちゃんが今年末には産まれる予定。



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友達の従妹もキュラソー人なのですが、父親は白人のオランダ人。 

白人とのミックスということで、他の黒人のキュラソー人よりはステータスが高いそうです。 


ご主人の両親はキュラソーからオランダへ移住し、彼はオランダ産まれのオランダ育ち。 

また微妙に違ったステータスとなります。



白人に支配の下で、自分の生まれ、皮膚の色が恨めしく... 白人を憎みながらも憧れた、そんな過去からの意識が残っているようです。 



それぞれ良家の出で、アメリカの大学院を出て教養のある、心の広い仲のとても良いいの四人なのですが、私に歴史や今の島同士の現状を説明していて時々意見が合わなくなり、英語からいきなり島の独特の言語、パイアメント(現地民語、オランダ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語等の混合語)で、口論が始まります。

何を言っているのか私にはわかりませんが、キュラソー島三人対アルーバ島一人なので、アルーバ人の奥さんの負けのようです。 

彼女はため息を吐いて、苦笑いで首を横に振っていました。


アメリカ生活を経験した彼らなので、外から見て島間の対立はアホらしいと笑っていましたが、やっぱり500年の歴史から作られてしまった対立意識は、なかなか消えないのでしょう。




昔、知人のベネズエラ人が、

「なぜ北アメリカは、コロンブスがアメリカを発見した日をコロンブス・デーとして祝うんだろう? 大体、北アメリカを発見したわけでもないのに。 それに、大体、どうしてコロンブスが英雄扱いされるのだろう?」

と、言っていたのを思い出します。



アメリカ大陸発見と言っても、現地民は数千年も前から住んでいたのにおかしなことで、それに、今でも後遺症が残っているほどのダメージの始まりでもあります。 

そんな歴史の人物が英雄っていうのも、確かに変な話です。