【動画】動物実験に使われている36匹のビーグル犬の命を救え
2019年3月15日(金)16時18分
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/03/post-11848.php
実験動物にされたビーグルは檻に入れられ恐怖の日々を送っている
The Human Society of the United States/YOUTUBE
<「犬たちは檻に入れられ、毎日毒を飲まされ、一歩一歩死に近づいている」と、動物愛護団体は解放を訴える>
米ミシガン州にある研究所で動物実験が行われ、ビーグル犬36匹が無理やり殺菌剤を飲まされているとして、全米最大の動物愛護団体「米国人道協会」(HSUS)が犬たちの解放を呼び掛けている。生き残ったとしても、7月末までに安楽死させられる運命だという。
HSUSがネットで呼びかけた犬たちの解放を求める署名は3月13日の夕方時点で10万筆以上になった。
HSUSのプレスリリースによれば、犬たちが収容されているのはミシガン州マッタワンにあるチャールス・リバー研究所。世界最大の米化学メーカー、ダウ・デュポンの農業事業を分離した「コルテバ・アグリサイエンス」が所有している。
HSUSが研究所の犬の状態を調査したところ、約20匹のビーグル犬が檻の中で体を縮こまらせ、怯えているのを発見。さらに研究所が企業から委託された化学製品の安全テストのため、犬たちは日常的に「薬物や殺虫剤などを投与されていた」。これまでHSUSは犬たちの解放を確約するようコルテバに求めていたが、交渉が「袋小路」に入ったという。
「数カ月間にわたり、必要のない動物実験を中止し、犬たちを引き渡すよう(親会社の)ダウ・デュポンに要求してきた」とHSUSのキティ・ブロック会長は声明で述べた。「ダウ・デュポンの行動を後押しするためかなりの時間を費やしたが、もう限界だ。犬たちは檻に入れられ、毎日毒を飲まされ、一歩一歩死に近づいている。一般の人々にも、ダウ・デュポンに動物実験を即刻中止させ、里親探しに協力させる活動に参加してほしい」
動物実験の現場の動画を公開
HSUSは3月12日、同研究所で過去に実施された動物実験の様子を収めた動画を公開。今いるビーグル犬たちも同じ目に遭うだろう、と述べた。動画には、痛々しい手術跡が残ったまま檻に閉じ込められてぐったりしたり、注射器のようなもので正体不明の液体を強制的に飲み込まされたりする犬の姿が映っている。
コルテバは声明で、当局から求められた場合にしか動物実験は行っていないと主張。ビーグル犬を使った動物実験は、ブラジルの国家衛生監督庁(ANVISA)が義務付けたものだ、と反論した。
さらにコルテバはこう主張している。「今回の研究に必要なデータ収集を行うためには(動物実験より)もっと良い方法があるのは確かだ。われわれは長年HSUSと連携し、殺虫剤の実験の条件を変えるようANVISAに働きかけてきた。動物実験は不要と決まれば、即刻中止し里親探しに最善を尽くす」
HSUSによれば、ほとんどの動物実験ではマウスやラットなどのげっ歯類が使われるが、アメリカでは今も毎年約6万匹の犬が使われている。動物実験の廃止を求める非営利組織「クルエルティフリー(残虐廃止)・インターナショナル」が開示したファクトシートによれば、動物実験の多い上位9カ国は順に、アメリカ、日本、中国、オーストラリア、フランス、カナダ、イギリス、ドイツ、ブラジルだ。
実験廃止には反論も
「倫理的で賢明で責任感ある」動物実験を支持する慈善団体「アメリカンズ・フォー・メディカル・プログレス」(AMP)は意見表明書の中で、科学的進歩のためには必要不可欠な動物実験もある、とした。「動物実験は、医療や科学の進化にとって極めて重要な役割を果たしている。今後もそれは変わらない」
問題は、その必要性を誰がどんな基準で判断するかだ。科学に対する無知や動物に対する無関心が介在する余地がある限り、必要もない動物実験はなくならない。
(翻訳:河原里香)