『オールド・フォックス 11歳の選択』

【原題】老狐狸 Old Fox

【製作年】2023年

【製作国】台湾、 日本 合作

【監督】シャオ・ヤーチュアン

【主なキャスト】バイ・ルンイン、リウ・グァンティン、アキオ・チェン、ユージェニー・リウ、門脇麦




1度だけ行ったことがある台北。 
地元の人がとても親切で、いい記憶として残っています。

でも、台湾発の映画に詳しくはなく、スクリーンで観たのは初めてです。


雨のシーンが多いこともあり、渋めの色合いなのが、まずは好みでした。
郷愁が感じられ、静かに、しとしと降る雨のように沁みてきます。


日本が統治していた頃の名残もあったり、バブルもあり、直ぐにバブル崩壊もあった… そんな、30数年前の台北を描きます。


“時代” に翻弄される大人たちを横目で見ながら、夢を叶えるため、逞しく生きる少年。
ハラハラしながら、”経済“ が子どもに及ぼす影響も、考えさせられます。


そして… “飯テロかよ” というくらい美味しそうな料理の数々ニコニコ
レストランもいいけれど、小さな屋台の麺も、美味しそう。
大根餅にハマり、何度も食べたことを思い出しました。


あらすじは…。

1989年、台北郊外。
レストランの給仕として働く父と、慎ましく暮らす11歳のリャオジェは、

いつか父とともに家を買い、亡き母の夢だった、理髪店を開くことを願っていました。

しかし、不動産価格が高騰し、父子の夢は、断たれてしまいます。

ある日、リャオジェは、『腹黒いキツネ(オールド・フォックス)』と呼ばれる地主のシャと出会い…。


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ネタバレあります。









少年リャオジェと父親の暮らしぶりが、慎ましくも、素敵でした。

学校帰りに、父の働くレストランに寄り、そこで宿題をし、食事をとり、父の仕事が終わるのを待つ。
レストランの従業員たちも、ご近所さんも、何かとリャオジェを気にかけてくれる。

自転車で 2人乗りするシーンが、とても好き。
なので、クリスマスプレゼントで、リャオジェが自転車をもらったのは、少し寂しかったウインク


家を買うという目標のため、せっせと節約生活をする 2人。
ミシンを踏む父は、内職もし、息子の洋服だって作ります。
お風呂に入ったら、ソッコーでガス栓を閉めるのは笑ったけれど。

人に気を遣い、カッターの刃を丁寧に捨てるような、“きちんとしている” 父親。 でも、アツさや強さは、あまり感じられませんでした。


門脇麦さんが演じたのは、この父親と高校時代 恋仲だった女性 (台湾人) 。
今は 裕福な人妻だけど、夫とは上手くいっておらず、レストランを度々訪れます。
どうにもならない、この大人たちの関係も、切ないショボーン



そして… リャオジェの父を『負け組』と言い放つ、オールド・フォックス。
2人は、真逆のタイプだと言っていいでしょう。

豪邸に住み、高級車を何台も持っている彼は、恫喝したり暴力を振うような、“ザ・昔のコワイ人” ですが…

何故か リャオジェには、優しい。
それは少年に、子どもの頃の自分をみたからなのか?

俺みたいになりたかったら、『他人を見捨てろ』と教えます。

リャオジェは、とにかく夢を叶えたかった。それだけだったけれど…

オールド・フォックスと駆け引きする姿は、このまま “悪” に染まってしまうのだろうか? そんな怖さがありました。

そして、父親を見下すような目が、とても悲しかったえーん



あの後、リャオジェは、どんな人生を歩んだのでしょう。 

紆余曲折は描かれず。賛否両論ありそうですが、私は、残念に思いました。

(あまりにも突然な) 30年後。
家に拘っていた彼は、建築家として成功している様子です。

父親の仕草も、オールド・フォックスの教えも 継承しているのは、嬉しくもあり、悲しくもあり。


あの街の風景は、どんな風に変わっているのでしょうか。