『ありふれた教室』

【原題】Das Lehrerzimmer

【製作年】2022年【製作国】ドイツ

【監督】イルケル・チャタク

【主なキャスト】レオニー・ベネシュ、 レオナルト・シュテットニッシュ、 エーファ・レーバウ、 ミヒャエル・クラマー、 ラファエル・シュタホビアク




こんなドアップのポスター、そうそうないですが、本編も 彼女のアップが多めです。 

そのおかげで、レオニー・ベネシュの、目の演技の上手さが、よくわかりましたおねがい



主人公に感情移入してしまい、泥沼に両足突っ込んだ状態になりましたが、ずっとスクリーンに釘付けでした。



かなりネタバレあります。







描かれているのは、殆ど学校の中。

社会の縮図と言われるけれど、過酷な職場だと改めて思いました。


主人公カレンの場合は…

何かというと『不寛容方式』と言い出す校長、生意気な生徒たち、一筋縄ではいかない父兄たち。 

多様性も配慮しなくてはならず、情報化社会の怖さもあり。


日常の業務で手一杯な上に、“事件” も起こるのですからショボーン


自分なら、こんな職場、直ぐに辞めていることでしょう。 カレンも、担任を降りようかと チラッと言うものの…


『こんなに教員不足なのに』と、同僚から猛反撃されるとは。 辞める自由もないのかえーん

(まあ、責任感がなければ、辞めることはできるでしょうけど)



そして… 私には、考えも及ばなかったラスト!!

あっけにとられ、ドイツ語のテロップをボーッと眺めておりました。


帰り道、その意味がじわじわきて、凄い映画だったと噛み締めたのでしたウインク



さて、あらすじは…。


仕事熱心で正義感の強い、若い教師のカーラ。


新たに赴任した中学校で、1年生のクラスを受け持ち、同僚や生徒の信頼を得ていきます。


ある時、校内で盗難事件が起こり、カーラの教え子が犯人として疑われます。


校長らの強引な調査に反発したカーラは、独自の犯人探しを始めますが…。



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カーラの担任するクラスの生徒たち、言うことは大人びているけど、中学生の割りに ちっちゃくない?

それに中学校なのに落第があったり、問題あったら転校させられるって?


ドイツの学校教育のシステムがわからず、少し調べたところ (正しく理解できているかはわかりません)


『個』を重んじるドイツでは、小学校に入学する時の年齢は一律ではなく、

多くは 6歳だけど、5歳の子も、7歳の子もいるらしい。

で、早くも 4年生で進路を決め、それぞれの中学校に進むみたいです。


ということは、1年生であるカーラのクラスの生徒は、日本の小学 4〜6年生の年齢だということでしょうか?


進路には、3つの選択肢があるそうで、

今作で描かれているのは、『ギムナジウム』と呼ばれる、大学に進学するつもりの生徒が通う中学校のようです。

だから、どうしてもあの学校にいたかったのか。


授業の内容も、思考力をつけることに力を注いでいるみたいで、日本とはかなり違う印象です。


数学の授業で、『1と 0.999… が同等であることを証明しなさい』という問題がありましたが、

どう説明すれば正解なのか? わからない大人が ここにいました爆笑




そして… 盗難事件についてですが、どうしたら良かったのでしょう。 

(自分だったら、静観しているだろうな)


誰にも言わず、職員室の自分の PCで、動画を撮影したカーラ。やはり、それは いただけない。

たぶん、教員を疑い、自分の生徒を守りたかったのでしょうが。


直ぐに被疑者のところに行かず、上司に相談するべきだったとも思うけれど…

校長は、生徒を疑うような人物。全く信頼できないですしキョロキョロ


被疑者のクーンが、あんなに攻撃力で強情だと、あの状態になるのは避けられなかったのではないでしょうか? 

(犯人かどうかは断定はできませんが)


クーンの息子のオスカーくんは、母親の犠牲者じゃないかと、胸が苦しくなりましたショボーン

 


事態は、袋小路に入ってしまいます。

針の筵にいるような主人公。


彼女の周りには、敵意 (ハラスメントかも?) が溢れておりました。

上司、同僚、保護者だけでなく、生徒たちからも。 最悪だったのは学校新聞。


自己主張が強く、“言わなきゃ損” の如く “ウルサイ” 彼ら。

もし何か失言を漏らせば、一発アウトになりかねない緊張感よえーん


こんなストレスフルな職場で、心が折れそうになりながらも、

何とか生徒を守ろうとした彼女は、頑張ったと思います。



凝縮された 99分間でした。

テンポよく、コンパクトで、集中力が保てたから、こんなに引き込まれたのかも?

主人公の私生活など 一切触れない、潔さもいいと思いました。



これが『ありふれた』物語ではないことを祈るばかりです。