『リアリティ』

【原題】Reality

【製作年】2023年【製作国】アメリカ【監督】ティナ・サッター

【主なキャスト】シドニー・スウィーニー、ジョシュ・ハミルトン、マーチャント・デイヴィス、 ジョン・ウェイ




『アメリカ大統領選に、ロシアのハッカーの介入があったかもしれない』と、メディアにリーク?


そう言えば、Mr.トランプが大統領になった頃、そんなことがあったような。

でも、リークしたのは何者だったっけ?


という、何とも心もとない記憶のまま、観に行きました。



監督は、劇作家だそうで、舞台を観ているようでした。

ほとんど主人公の家の外と、一つの部屋だけで、繰り広げられる会話劇。


動きも少なく、地味です。ひたすら地味ですが、目の表情や間合いなど、キャストの演技力で、引き込まれました。


新しいというか、実験的というか…

何年後かに、“ あの『リアリティ』と同じ手法の… ” とかなっているかもしれません。


好き嫌いが分かれそうだとは思いますが。



あらすじは…。


2017年、アメリカ。

買い物から帰った、リアリティ・ウィナーは、自宅の外で、見知らぬ 2人の男性に声をかけられます。


彼らは、FBI 捜査官で、ある事件に関する捜査をしていると言います。


そして、次々と捜査官がやって来て、家の周りに立入禁止テープが張られます。


最初は、穏やかに話していた彼らでしたが、次第に緊迫し…。



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ネタバレあります。







『FBI の、実際の尋問テープを完全再現した』というだけに、真に迫ります。

主人公の『リアリティ』という名前が、出来過ぎなくらいピッタリ。


時々、ピー音や、✖✖✖ や黒塗りが出てくるのにも、ドキッとさせられます。

特に、狭い部屋で、1 対 2で、ネチネチ聞かれるシーンは、緊迫感ありました。



ゴツい見た目の FBI が、突然、大勢で自宅に押し掛けてきたら?


リアリティは、“ なんのこと? ” って感じで、全く見に覚えがなさそうに映りました。 それもあり、私は…


まずは、捜査令状 見せてよ。

弁護士を呼ぶとかできひんの?

黙秘権のこと説明してへんやん。

『任意』と言いながら、勝手に私物の写真撮りまくって、最初から逮捕する気満々やんプンプン


と、FBI のやり方に、不快感を覚えました。



ワンちゃん、ネコちゃんと暮らし、ナウシカが好きな彼女。

リークしたのは間違いないのでしょうが、どうしても、可憐な彼女に肩入れしたくなる、チョロい私。


でも鋭い方は、彼女のことを “ とんだタヌキだ ” と感じるかもしれません。

そう思われるほど、当初は、落ち着いていたのです。



以前は空軍にいて、今は国家安全保障局 ( NSA ) で、翻訳の仕事をしているそうですが、


除隊の時、機密の取り扱い資格を失ったのに、手続きをしていなかった。

それは、彼女の怠慢だったとはいえ、


国家機密を知り、それをプリントアウトして、持ち帰ることができた。

組織のセキュリティの甘さにも、驚きまます。



彼女がリークした動機は?

精神的にしんどい頃で、職場への不満もあり、ムシャクシャして… というのが一番のようですが、


知る権力がある国民に、正しい情報を知らせたいという気持ちもあったのかも?


何れにせよ、国家に反逆を企てようとしたわけではなく、軽い気持ちだった。

FBI がやって来るなんて、思ってもいなかった様子の彼女。 



『機密事項を不適切に扱った罪』とはいえ、懲役 5年というのは、あまりにも厳しいショボーン

セキュリティが杜撰な NSA や、マスコミにも、問題があると思うけれど。


彼女の専門が、ペルシャ語、パシュート語、ダリー語だったことも、不運だったのかもしれません。



アメリカの政治を、どうのこうの言うつもりはありませんが…

Mrs. クリントンが勝っていたら、リアリティは、罪を犯すことはなかったのでしょう。

そうだったら、語学に長けた彼女の人生は、違ったものになっていたのにと、どんよりした気持ちにもなりました。




スクリーン向きではありませんが、考えさせられる作品でした。


一時的な怒りに任せて、行動したり、言葉にしたりすることはないか?


自分も、思い当たる節があります。

人の振り見て我が振り直せ、ですわ。



恐らく、日本だったら、“ 謎の力 ” が発動して待ったがかかるのでしょうが…


こうして知ることができたのは、アメリカの方が、まだまだ自由なのかも?と思ったりもしました。