『ポトフ 美食家と料理人』

【原題】La Passion de Dodin Bouffant ( The Pot - au - Feu )

【製作年】2023年【製作国】フランス【監督】トラン・アン・ユン

【主なキャスト】ジュリエット・ビノシュ、 ブノワ・マジメル、 エマニュエル・サランジェ、 パトリック・ダスンサオ、ヤン・ハムネカー、 フレデリック・フィスバック、 ジャン=マルク・ルロ、 サラ・アドラー




寝不足で観たら、眠くなるかもしれないくらいの静かさ。

美しくて、詩的な世界でした。


そして、フランスらしいと言えそうな、大人の愛の物語でもあります。



物語を彩る、美味しそうな料理の数々。 それを眼と耳で堪能したら…

案の定、お腹が減って減って。

あのプリッと柔らかそうな舌平目は、もう “飯テロ” です爆笑


描かれているのは、『芸術レベルで考えた料理』ですが、私には、お腹を満たすための手段なのでありました。



あらすじは…。


19世紀のフランス。

美食家のドダン ( ブノワ・マジメル ) と、彼の料理人ウージェニー ( ジュリエット・ビノシュ ) は、20年に渡って信頼関係を築いていました。


ウージェニーは、ドダンの求婚を断り続けていましたが、ある日、結婚を承諾します。


ところが、ウージェニーは、病に侵されており…。



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ネタバレあります。







特に素敵だったのは、ウージェニー、ドダン、それに助手 2人で、午餐会のために調理するシーン。


音楽はなく、風の音、鳥の囀り、葉っぱが揺れる音が BGMになり、

ザクザクとか、シャカシャカとか、パチパチとか… 調理する音だけが響きます。


阿吽の呼吸で、仕上がっていく料理の数々。

台詞は少ないけれど、何度も交わされる “ Merci ” が心地いい。


自然光が照明になり、映される人物が、とても美しかった。

これだけでも、観て良かったと思いました。


それに、外に出れば、モネの絵画のような緑が広がるのです。

シャトーの内装や、衣装、食器も素敵でしたラブ




ドダンの探究心には驚くばかり。

1日中、料理のことを考え、高級食材も惜しげもなく使えるのは、羨ましい限りです。


興味深かったのは、ズアオホオジロの食べ方。 香りを吸い込んで味わうために、ああするのですね。

食べるのはムリでも、せめて香りが感じられたら、嬉しかったのですがチュー


洋梨のシーンは、官能的でした。

女性の体型をどうのこうの… は、正直言うと、あまり好きではないけれど。



タイトルにもなっている『ポトフ』

ユーラシア皇太子をもてなすために、ドダンが選んだのは、このシンプルな家庭料理でした。

彼の理想は、手間隙掛けた、奥深い味わいのポトフなのでしょうか。

その完成形が観られなかったのは、残念でした。




ウージェニーが、ドダンに『あなたにとって、私は妻? それとも料理人?』と尋ねるシーンがありました。


言われて嬉しいのは、普通なら『妻』なんでしょうが…

『料理人』という答えに、満面の笑みをみせる彼女。

それは、料理人としてのプライドなのでしょうか? それとも…?



結婚する前も、当主と使用人ではなく、お互いを尊重し、尊敬し合っていた 2人。

彼女が倒れると、当主自ら、料理を作って運んできてくれる。

そんな 2人の関係が、素敵でしたウインク



演じているのは、ジュリエット・ビノシュとブノワ・マジメル。

実生活ではサヨナラしていても、こういう役柄を、嫌味なく演じることができる 2人。

大人だし、流石プロだな。



そして、19世紀のフランスの田舎だからこそ、ロマンティックなのだとも思います。

これが、現代の都会の物語だったら、ムズムズして、観てられないかもしれません。




帰ってから早速、“ ポトフもどき ” を作りました。

材料は、冷蔵庫にあった野菜とソーセージ。


彼らのように、採れたての野菜ではないし、手間もかけていませんが、

コンソメキューブのおかげで、それなりに食べられる味になりました。


これで満足できる自分は、美食家とは、やはり対極にいるようです爆笑