『ナポレオン』

【原題】Napoleon

【製作年】2023年【製作国】アメリカ【監督】リドリー・スコット

【主なキャスト】ホアキン・フェニックス、 ヴァネッサ・カービー、 タハール・ラヒム、 マーク・ボナー、 ルパート・エベレット、 ユーセフ・カーコア




時代物にありがちな、“ 史実と違う ” との批判があるようですが…

映画なのだから その辺は穏便に、と思う私は、ナポレオンを愛おしいとさえ思いました。 相変わらず、チョロい爆笑
( 英語を話している時点で、そういうことなんだし )

強いようで、実は小心者で…
砲弾発射の時に、耳を塞ぐ仕草が、可愛らしく、ジョゼフィーヌには頭が上がらない。
人間らしい、チャーミングなところも描かれていました。


でも、ナポレオンの伝記だとすれば、端折り過ぎで、物足りないのも確か。
頭角を現すまでを、もっと詳しく描いてほしかったし、転げ落ちるのも、あっけなく感じました。

とはいえ、こんな風にダイジェスト版にしないと、あと 3時間くらいは必要だから、仕方がないのでしょう。

なので、今作は、“ ナポレオンとジョゼフィーヌ物語 ” なのだと解釈しました。


シーンにマッチした音楽、絵画のような美術も素敵でした。
そして、スペクタルな戦争のシーンは、リドリー・スコット監督ならでは。
やっぱり凄かったです。


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少々ネタバレあります。




好きな俳優のひとり、タハール・ラヒムが出演するということで、彼が演じる人物については予習しました。


ポール・バラスって、誰やねん? 

状態だった無知な私ですが…


『悪徳の士』と呼ばれる、ワルイ男だった。

で、あろうことか、元々ジョゼフィーヌを愛人にしており、彼女をナポレオンに “ 譲った ” のでありましたショボーン


今作では、そんなことは描かれておらず、安心するやら、残念に思うやら。


でも、こうして大作の 3番目にクレジットされたのは嬉しいことです。

次は、意外にも、ヒーローものに出るそうで。




それはさておき、今作のテーマは、


①英雄としてのナポレオン

②愛するジョゼフィーヌに振り回される、人間ナポレオン


の 2つなんだと思われます。



◆英雄ナポレオンとして


教科書でしか見たことのなかった、極寒の『アウステルリッツの戦い』では、

氷の中に落ちていく、馬や兵士まで描かれていてウォーとなりました。

お馬さんは、可哀想でしたが。



ナポレオンが再起を期した『ワーテルローの戦い』では、

イギリス軍の『方陣』の敷き方に目を見張りました。

言葉を聞いても、” 何のこっちゃ “ だったことを映像で見せてくれる、親切設計。



徒歩か馬で進み、大砲ドカーン、サーベルでバサッが、主流だった時代。

テクノロジーに頼らない戦いが、新鮮でしたし、大勢の兵士は迫力ありました。


ボロボロの服着て、自分で偵察するナポレオンの姿に、彼は、戦いの申し子なんだと改めて思いました。



◆人間としてのナポレオン


田舎者で、背が低く、品もなく…

たぶん、コンプレックスの塊だったと思われるナポレオン。



それに対して、同性からみても、魅力的なジョゼフィーヌ。

愛されているのを自覚し、何かと、ナポレオンにマウントとりがち。 時々イケズ。


『あなたは 私なしじゃ ただの男』

言ってみたいものです爆笑



そんなジョゼフィーヌを前にすると、ナポレオンは、戦いの時の強さはなく、情けないほどメロメロで。

それは、滑稽でもあり、可愛くもあり。


そして、哀しいことに、絶望的に女心がわからない。

待望の息子が生まれ、別れたジョゼフィーヌに見せに行くとは、絶句です。 

彼女との子どもができないからと、離婚しておいて。 そういうトコやでプンプン



そんな 2人は、喧嘩も多かったけれど、共依存の関係に思えました。

ナポレオンは、ジョゼフィーヌを頼りにし、離婚後もずっと想っていた。

まさに、別れても好きな人。


夫を亡くしたジョゼフィーヌは、生活のためにナポレオンと結婚したと思われます。 最初は、そんなに好きでもなく、浮気もしたけれど…

次第に、彼女も、ナポレオンを想うようになっていった。


なんやかんやあって、別れた 2人ですが、夫婦ではなくなっても、親友のような関係だったようで…

男女の関係って、つくづく難しい爆笑



2人が出会わなければ、もしかしたら、歴史は変わっていたのかもしれないな、なんて考えながら帰ったのでした。