『エリザベート1878』
【原題】Corsage
【製作年】2022年
【製作国】オーストリア、ルクセンブルク、ドイツ、フランス合作
【監督】マリー・クロイツァー
【主なキャスト】ヴィッキー・クリープス、 フロリアン・タイヒトマイスター、 カタリーナ・ローレンツ、 ジャンヌ・ウェルナー、 マヌェル・ルバイ、 フィネガン・オールドフィールド、 コリン・モーガン
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ポスターを初めて見た時は、宝塚の舞台の映画化かと思ったのですが…
よく見たら、シャマラン監督の『オールド』で、お母さん役だったヴィッキー・クリープスでした。
ルクセンブルク出身で、スイスで学んで、今はドイツに住んでいるという彼女。
知的で、キリッとした女優さんです。
エリザベートは、ドイツ生まれで、オーストリア皇妃となり、スイスで生涯を終えたらしいので、同じように、“あの辺り” の人物なのですが…
ちょっとイメージと違うなあ。
もっと華やかさが必要なのでは?
と、期待より、不安の方が勝った感じで出かけました。
で、観てみると… エリザベートが40歳になる年を描いているので、彼女の気怠い表情が嵌っていましたし、
何度も出てくる、乗馬シーンが美しかったです
ダルい、やってらんない。 全身から漂う、倦怠感と絶望感。
そして、タバコをスパスパしながら、晩餐会を早退する姿が、パンクロッカーのようで、カッコ良かった
一体、何カ国語話せるの?
美貌だけでなく、努力もしていたようですが、この頃の女性は、それが活かせることも、そんなになく…
切なくなるのでした。
賛否両論あるようですが、新解釈の『エリザベート』があってもいいと思うのです。
流石に、あのラストには、面食らいましたが
✣ ✣ ✣ ✣ ✣
少々ネタバレあります。
描いているのは…
ヨーロッパ宮廷一の美貌と評判だった、オーストリアの皇妃エリザベート。
彼女が40歳の誕生日を迎える、1877年の、クリスマスイブ前後の物語です。
建物や自然が素敵で、うっとりしましたが、衣装や美術は、キラキラの絢爛豪華ではありません。
その抑えた色味が、彼女の心情を表しているようでした。
特に、すみれ色のドレスや、黒いレースが美しかった。
さぞかし優雅な暮らしぶりの、エリザベートかと思いきや…
着替える度に、腰のコルセットの紐を『もっと、きつく締めて』と言い、
『皆、私の老け具合を見に来てるだけ』だと、自分の容姿の衰えを自覚し、怯えているようでもあり、辛くなります
夫との関係は、完全に冷めていて。
あの、長い長いテーブルの端と端より、ずーっと離れているように感じました。
もしかしたら、男性と女性では、受け取り方が違うかもしれませんが…
夫は、“贅沢させてるんだから、象徴に徹しろ。特権には義務が伴う” というスタンスです。
一目惚れしたらしいのに、なんだかなぁ~
“卒業” があればいいのに、と思ったりしました。
言われなくても、自分はお飾りだと、自覚しているエリザベート。
不貞腐れた後は、奔放に生きることにします。
コルセットを脱ぎさり、ひとりの人間として生きる。 そう決意しますが…。
エリザベートが『40歳』になる年にスポットを当てているのが、絶妙でしたが…
当時のオーストリアの “平民女性” の平均寿命は、40歳くらいだと知り、愕然としました
美貌の劣化、などという呑気?な問題ではなかった。 もう、残り時間を意識していたのかもしれません。
大いなるネタバレですが…
影武者が登場するのは、おもしろかった。( 史実ではなさそうですが )
この頃のエリザベートは、黒いベールで顔を隠していたので、背格好さえ似ていれば、それとは気づかないことでしょう。
娘も騙せたくらいですから。
それにしても、影武者の姿を “今までで、一番立派だった” と、娘に褒められ、絵に描かれるのは、辛すぎる。
父親派で優等生の娘には、ダメな母親としか思われていなかったのです
勿論、真綿で首を絞められているような、息苦しい暮らしも辛いですが…
美しく生まれた人だからの、苦しみや寂しさがずっとつきまとう。
食欲との戦い、シワとの戦い
そんなことには全く縁のない自分は、お気楽で、ある意味 幸福なのかもしれないな。
なんて考えながら、今日もまた、アイスを買って帰ったとさ