『母の聖戦』

【原題】La Civil

【製作年】2021年

【製作国】ベルギー、ルーマニア、

     メキシコ合作

【監督】テオドラ・アナ・ミハイ

【主なキャスト】アルセリア・ラミレス、 アルバロ・ゲレロ、 ホルヘ・A・ヒメネス、 アジェレン・ムソ、 ダニエル・ガルシア、 メルセデス・エルナンデス




観に行ったのは一昨日なのですが…
あまりの衝撃で、すぐには感想が書けませんでした。


メキシコの誘拐ビジネスの闇と、それに立ち向かう母親を描きます。
なんと実話ベースとかガーン


監督は、ルーマニア生まれで、ベルギーを拠点としているそうです。

そのため、ダルデンヌ兄弟 ( ベルギー )、 クリスティアン・ムンジウ ( ルーマニア )、 ミシェル・フランコ ( メキシコ ) が、共同製作者として名を連ねています。


メキシコの映画に詳しくないので、俳優さんをどなたも存じ上げず。

そのおかげ?で、物語にどっぷり浸かることができましたが…
これは辛い、辛すぎるえーん
 

     ✢ ✣ ✢ ✢ ✢


ネタバレあります。




シエロは、メキシコ北部の町で、娘ラウラと2人暮らしです。
夫は、家を出て、若い女性と暮らしていますチュー


生活費を夫に要求できない、口紅も塗っていない、ひとりのお母さん。

朝、デートだと明るく家を出て行った娘でしたが…
誘拐されたと知りますびっくり


シエロは、仕方なく夫に相談しに行き、身代金を用意しましたが…

開放してくれる約束の場所に、娘は現れませんえーん
 
身代金が足りないと、もう1度、犯人グループと接触することになります。

“俺が交渉する” と言っていた夫ですが、いざというとビビって…
諦めたような口ぶりですプンプン


警察には言うなと言われていたものの、シエロは、意を決して相談に行きますが…
誰も親身になってくれませんえーん


事件があまりにも多く、手が回らないのかもしれませんが…
情報が漏れているなど、警察の腐敗が疑われますえー

どうやら、報復を恐れ、泣き寝入りしている人もいるようです。


シエロは、自力で娘を取り戻そうと決意!!
何と、軍に協力を頼みますが、すぐには動いてくれません。


報復に気をつけ、ロウソクの灯りで過ごしていたのに、自宅に物を投げられ、車を燃やされて…

やっと、軍のパトロール隊の、ラマルケ中尉が、力を貸してくれることになりますが…。


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BGMはなく、ドキドキしているシエロの息や、強い風の音、運転する車のエンジン音に、緊迫感が増幅されます。


最もヒーッとなったのは、葬儀社を訪れた時のこと。

テレビのニュースで、“首を切られた女性の遺体が見つかった” と報道され、もしやと思ったシエロですが…

そこには、たくさんの遺体が並べられていました。
どれだけ治安が悪いのかショボーン

そこの代表の女性の、コツコツというヒールの音が恐怖を醸し出し、ゾゾゾとなりました。

同情したのか、彼女は、親切に接してくれました。
彼女もまた、組織に迷惑をかけられている、被害者なのでしたえーん


娘の遺体ではなかったけれど…
心は全く晴れないシエロ。


なのに、彼女の気持ちがわからない夫。
若い女性に捨てられた彼は、家に帰って来て『やり直そう』と言いますプンプン

鼻歌交じりで料理する姿には、呆れるばかりです。
シエロが、一番頼りたい人なのに。


彼女は、まるで探偵のように車を追い、尾行し、写真を撮り…
遂に、犯人たちが “いるらしい” 場所に辿り着きます。


中尉の協力で始まったのは、軍人と誘拐組織の銃撃戦!!
“同席する” ことになるシエロびっくり


勝手なもので、アクション映画を観ていると、“もっと派手にやっちゃえ” なんて思うのに…

普通のお母さんが遭遇しているとなると、怖くなってしまいます。
こちらまでブルブル震えました。


     ✢ ✢ ✢ ✢ ✛


以下、忘れたくないので記します。
かなりネタバレありますので、ご注意ください。




相談していた夫の友人のキケが、実は、組織の一味だったのは、ショックでした。
気のいい、おじいちゃんだと思っていたのにショボーン

卑怯にも『友だちだろ』と、シエロに助けを求めるキケ。

中尉に促されたシエロは、キケを思いっ切り叩きます。それは、今までと違い、鬼の形相でした。


誰を信じればいいのか?絶望的になりましたが…
キケが漏らした言葉から、人が埋められている場所を知ることができます。


シエロは夫を伴い、その場所に行き、スコップで掘り始めます。
どんなに辛かったでしょうえーん


人の指が出てきて、警察に通報し…
そこには、50もの遺体が埋めらていることがわかりますびっくり


そして、DNA検査の結果は…
娘の『肋骨が1本』見つかったというものでしたえーん

『娘の全部を揃えて』と訴えるシエロに、こちらまで涙、涙です。


その後も彼女は、捜査を続けます。

軍の協力で、身代金を渡した男の逮捕まで辿り着きますが…

男は、反省するどころか、シエロの身に危険が及ぶとさえ言うのでしたプンプン

酷いことをしたという自覚が、全くなくて、怒りを覚えましたが…
これは、蜥蜴の尻尾切りでしかないのでしょう。



ラストは、観る人に委ねるスタイルでした。

外に出て煙草を吸っている、シエロの目線の先に現れたのは、誰なのでしょう?



組織が、彼女への復讐にやって来たのでしようか?

それとも、実は生きていた娘が、戻って来たのでしょうか?



モデルになった女性は、報復にきた組織に、銃で命を奪われたそうです。


実話通りなら、前者なのでしょうが…

そこまで描かなかったのは、悲惨過ぎて救いがないからかな。


捜査もしてくれない警察が、50もの遺体のDNAを、ちゃんと調べたのかは疑わしいですし、

シエロが報われる、後者だと思うことにします。



監督は、ドキュメンタリーを撮っていた方で、劇映画は初めてだとか。


テンポも良くないし、正直言えば、

“上手くはない” と思います。


でも、想いは伝わってきます。

母親の愛と勇気と執念に、胸が張り裂けそうになりました。




メキシコの人たちに、悪いイメージを抱いてしまいそうですが…


これは一部の人だということは、忘れないようにしたいです。