ブラックジャック創作秘話(秋田書店)という漫画を知り合いに紹介され読んでみました。その感想です。
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ブラックジャックは昭和48年に少年チャンピオンで連載が開始された。
当時は劇画全盛の時代で手塚治虫はヒット作に恵まれず自ら経営するプロダクションを倒産させていた。
手塚治虫の思い出話はすでに数多く、テレビドラマ化もされているが、この漫画では一切の綺麗事を廃し、当時のアシスタントや担当編集者へのインタビューをもとに手塚治虫の人間像をあぶり出している。
そこに現れる手塚治虫は、トレードマークとなっているベレー帽と黒縁メガネ姿の温和な紳士とは程遠い、手ぬぐいを頭に巻き、冷房の切れた部屋で汗だくになりながら机の前で一心不乱に原稿用紙と格闘している中年男として描かれている。
締め切り直前に、数十枚にわたる原稿を全て破り捨て一から書きなおす妥協の無さや、脳内の記憶だけを頼りに国際電話を通じて(当時はインターネットどころかファックスもない)アシスタントに指示を送る超人的な記憶力など天才を思わせるエピソードが紹介されている。
一方で、手塚の一切の妥協を許さない姿勢に、周囲の凡人がついていけず常に人が入れ替わる事務所の様子も併せて描かれているところが単なる天才物語ではないこの漫画の面白さがある。
筆がすべり「周囲の凡人」と言ってしまったが、手塚のアシスタントの中には石ノ森章太郎などその後名を挙げた漫画家も多く含まれる。手塚の天才ぶりが人間の域を越え、文字通り「漫画の神様」であったが故の理不尽なのだろう。
作者がナニワ金融道の青木雄二のアシスタントをしていたためか、絵柄はその路線を踏襲している。それだけに神様としてだけではなく人間としての手塚治虫の姿が際立っている。子供の頃手にとった手塚漫画がどのように創られていたのかを知るための貴重な記録である。
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