米国議員のディープフェイクポルノ被害 | 牧村しのぶのブログ

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米国でテイクイットダウン法が発効し、ディープフェイクを含む同意のない性的画像を削除要請できるようになりました。未成年も成人もです。要請されたプラットフォームは48時間以内に削除する義務を負います。ディープフェイクポルノを規制する州法がない地域で泣き寝入りしていた被害者も、連邦法により削除を求めることができるようになりました。ディープフェイクが全て規制されるというわけではなく、条件が定められています。原文をご参照ください。

https://www.congress.gov/bill/119th-congress/senate-bill/146/text

 

過剰規制と検閲の可能性に対する批判もあり、実効性にも疑問が持たれています。それでも成立した背景に、26人の議員のディープフェイクポルノが35000件以上確認されたという調査報告がありました。26人中25人が女性議員です。大部分は掲載サイトから削除されましたが、性的画像による嫌がらせを恐れ立候補を思いとどまった女性もいるそうです。一般人が被害を受けた場合、発見が難しく、削除要請しても迅速に対応してもらうことは困難です。この報告がディープフェイクを規制する複数の法案の審議に影響を与えたそうです。

ポルノは暴力にもなります。政治参加への妨げにもなります。

この問題に関する米国の報道をご紹介しておきます。

日本ではこうした調査はされていないようですが、参院選で女性候補者への嫌がらせが目立ちました。ディープフェイクポルノによる、キャリア傷つける性的嫌がらせの実態を調査し規制すべきだと思います。現行法で足りるという意見もありますが、海外のサイトに投稿されて拡散してしまうケースでは、国内法での対応に限界があります。それを見越した投稿は悪質な嫌がらせ以外の何物でもありません。日本と米国は「日米刑事共助条約(MLAT: Mutual Legal Assistance Treaty)」を締結しており、捜査協力は可能ですが、条約が有効に機能するのは、「刑事事件として捜査中」であり「日米双方で犯罪と認識される行為」に限られ、捜査協力を得られない事例もあるということです。