人気イラストレーターのLoRA | 牧村しのぶのブログ

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私は昭和生まれで、とっくの昔に女子高生の話言葉も服装もわからなくなっています。少女漫画家は女子高生の靴下がわからなくなったら引退、といわれていました。女性漫画でも若い人物を描く前に髪型や言葉遣いを検索しまくります。昔ルーズソックスが流行り、その後紺ハイが流行り、またルーズソックスが復活したこともあったそうです。それが検索しなくてもわかるようでなければ、女子高生の日常をリアルに描くことができません。

若いうちは画力は足りなくても生活感覚は若者ですから、それが技術不足を補う強みになります。デビュー間もない新人が意外と早く固定ファンをつかめるのも同世代の共感があるからです。

 

私はイラストレーターではありませんし、内部事情もよく知りません。しかしやはり漫画と同じく、若いうちはダイレクトに若さを描ける強みがあります。日常会話、普段着ている服、行きつけの店、好まれる遊び、それがわかるので自然に描けます。(特殊なジャンルや題材を描く時は勿論資料、取材が必要です。)

今昭和生まれの人が昭和を懐かしむレトロな絵を描くのは、自分がわかっているからです。それは正しい選択です。若い人の絵をベテランが参考にすることは漫画でもありますが、それが独自の強みにはなりません。

 

しかし生成AIで直接若い人の絵を取り込むと、ユーザーの実年齢に関係なく若い人の絵がそのまま出ます。20代の女性に見える絵ができます。ユーザーは得をします。しかし使われる人には何かメリットがあるでしょうか?

模造品が量産され競合し陳腐化し飽きられるのも早くなります。「AIのような絵」といわれる人もいます。芽を出しにくくなっています。

 

特定のクリエイターの絵に特化したLoRAはそうした模倣を容易にします。若手人気作家のLoRAはよく使われ配布されます。

LoRAのDL数は千、万単位で伸びています。その何倍もの模造品が瞬く間に拡散されていきます。従来の二次創作とは比較にならない量です。何となく絵柄が似ているというにとどまらず、特徴的な目の描き方、色の塗り方までその人と分かるもの、絵柄だけでなく作品のキャラクターまで模したものが配布されています。しかしそれは学習段階でも享受目的が併存すると見られ権利制限の対象外(学習段階で違法)のはずです。

 

私は若手のイラストレーターをあまり知りませんが、最近は様々なメディアで活躍する人が増えています。

ライトノベルの挿画、アニメ、ゲームが同じキャラクターで製作される場合、最初にキャラクターを手がけたイラストレーターの能力が成果に貢献します。イラストレーターはただ絵を描くだけの存在ではありません。

そうした仕事をして活躍するイラストレーターをこちらの記事を参考にして、Civitaiで検索してみました。

 

30人中11人がLoRAを配布されていました。


abec(BUNBUN)

LoRAもヒット作「ソードアート・オンライン」のキャラを模しているので厳しいと思います。

藤ちょこ

necömi

米山舞

カントク
よむ
過去LoRAを配布され削除されている人もいました。

イラスト、アニメ、ゲーム、漫画を分けて扱うのは無理です。

若いイラストレーターの絵の魅力で漫画、アニメ、ゲームの人気が押し上げられているのですから、保護しなければ漫画もアニメもゲームも力が衰えていきます。

 

無名でも1枚絵でもアマチュアでも、その才能が育つ環境を守ってほしいと願っています。

LoRAなど作らず、使わないでください。

 

LoRAを使わなくてもファンが見れば一目でわかる類似品も同罪です。