デジコミはアナログより早くならない | 牧村しのぶのブログ

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アナログからデジタルへ移行すると早くなるというのは嘘です。

 

手でペンを動かして描く作業が早くなることはありません。

同じ人間ですから。

その上紙と比べてタブレットは滑りやすく、つるつるしてペン先の抑えが効かず、慣れるのに時間がかかります。タブレットの上に紙の手触りに近い保護フィムルを貼る人もいます。

 

ペン入れ作業自体は同じですが、拡大縮小ができるため、いくらでも拡大して細かな描き込みをする、細かなはみ出しや線の修正をする羽目になります。スマホで見たらわからない細部を無駄に丁寧に描いてしまうのです。アナログなら見えない細部が見える罠にはまります。目も疲れます。

 

必要な部分にベタを塗る作業も同じです。自動選択でバケツ塗り

(一気に塗りつぶす機能)できるので楽なようですが、塗り残しが出やすいので拡大して塗りつぶします。髪ベタの上に艶を入れる作業は紙に筆で描くのと変わりません。

 

トーンを貼る作業も基本は同じです。ただし紙に貼る時はトーンが剥がれないようにこすります。デジタルは貼るだけです。その分確かに早くなります。またトーンを貼り直す時は別のトーンを選んでクリックするだけです。剥がす手間がかかりません。

確かにトーンワークは早くなります。

しかしその分トーンを貼る量は増えています。昔のアナログ原稿は白黒だけの人もいましたし、トーンは少なめに効果的に貼れば大丈夫でした。スーツにトーンを貼らなくてもグレーとして通用しました。今は服にトーンを貼るのが当たり前で、原稿は昔よりずっと黒くなっています。トーンワークが簡単になった分、凝る人が増えています。アナログと同じ感覚でスーツにトーンを貼らずに納品したら、リテイクが出て全部トーンを貼らされたこともありました。

 

そしてデジタルならではの、一度描いた絵を消してしまうミスや原因不明のマシントラブルもあります。

念のため予備のタブレットを確保しています。

 

消しゴムかけをしなくて良い分は確かに早くなりました。

掃除も楽です。

 

しかしそれ以外は特に楽とはいえません。

 

絵を描きトーンを貼りベタを塗る基本は変わりません。

 

それではどこが良いのかといえば、描き直しが簡単にできることです。ホワイトで塗りつぶすのと違い、簡単に消したいところを消し、描き直せます。旧作の修正も楽です。原稿を送ってもらう必要もありません。

 

そのメリットを生かして連休中に旧作を修正しました。

 

仕事が増えたともいえます。