クリエイターは社会経験がある | 牧村しのぶのブログ

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クリエイターでなく別の仕事をしている人が生成AIを使って創作すれば、社会経験を生かした作品が作れるという人がいます。

クリエイターは社会経験がないという思い込みがあるようです。

しかし現実には別の仕事と兼業している人、途中で専業になる人、専業をやめてまた別の仕事をする人もいます。

 

「文豪ストレイドッグス」の武装探偵社、ポートマフィアの面々もそうです。夏目漱石も芥川龍之介も中島敦も宮沢賢治も教師です。国木田独歩も教師、記者、編集者、尾崎紅葉は読売新聞社、江戸川乱歩は貿易会社、探偵社などで働いています。森鴎外は軍医です。仕事をしていない方がむしろ例外です。教職経験者は他にも大勢います。

 

戦後の作家も渡辺淳一、由良三郎、知念実希人、南杏子、久坂部羊など医師が多く、他有名どころで松本清張は朝日新聞社、深田祐介は日本航空につとめ、幸田真音は米国系銀行からJT、三菱自動車工業取締役など作家以外の経歴に重みがあります。辻井喬はセゾングループ代表の故堤清二、由良秀之は元検事で現役弁護士郷原信郎です。人気作家東野圭吾はデンソー、篠田節子は市役所勤務、池井戸潤は銀行員でした。個人的に推している新鋭の南原詠は現役弁理士です。数え上げればきりがありません。

 

漫画家も前職現職が会社員、自衛官、警察官、介護士、看護師、教師、原発作業員、夜職など色々な経歴の人がいます。別の職業を経験している人がほとんどです。私がデビューした80年代末には、編集者が投稿者に就職しろとアドバイスしていました。職業経験がないと大人が描けない、生活できないというのが理由です。当時「課長島耕作」がヒットしていて、会社員を描ける人がほしいといわれていました。青年誌、女性誌は特にそうでした。

 

クリエイターだから社会経験がないというのは思い込みです。

何を根拠にそう思っているのか知りませんが、すぐに専業になれる人は例外です。確かに若いクリエイターの生活が苦しいということはネットにも書かれていますが、特に問題にされているのはアニメーターの待遇です。兼業が不可能な長時間労働で生活できないことは社会経験の有無とは別の問題です。アニメーターも他の業種から転職する人はいますし、アニメーター出身の漫画家やイラストレーターもいます。

 

いいかえれば、どんな仕事をしていても創作をやりたい人はやるということです。作品を公表します。すぐに仕事にならなくても続けます。創作はやらずにはいられないものです。

中年まで創作したことのない人が、AIを使えばクリエイター以上の作品が作れる、というのは都合の良い甘言に聞こえます。

才能があればどんな環境でもやっているはずです。

 

勿論やりたければやればやれば良いと思いますが、データセットに著作権のあるコンテンツが含まれ、海賊版も使われていることが明らかにされており、正当性をめぐる訴訟が進行中です。

 

Midjourneyの学習に使われているクリエイターのリストも訴訟に提出されており、批判を浴びています。多くの日本人も含まれています。さらにCSAMも含まれていることはすでに何度も書いています。

私なら使えません。少なくともクリーンなデータセットができるまでは。