忘れ去られる物語でありたい | 牧村しのぶのブログ

牧村しのぶのブログ

漫画家牧村しのぶのブログです。
新刊、配信情報、創作関連の記事を投稿しています。
Xもご覧ください。https://twitter.com/buncho108

十五歳の少年だった私は、ヒロシマ駅のプラットフォームに立ちすくんで、震えた。何百、何千、いや何万という燐光が無気味に燃えている。死体の燐が、折からの雨で発火して燃えているのだ。 その時、燐光の海のなかから、赤ん坊の声が聞こえてきた。・・・・・あの燐光のなかで泣いていた赤ん坊をあなた(吉永小百合)としてドラマを書いてみたいと思う。(早坂暁「生き続ける夢千代」)

 

ドラマは1981年に第一部、翌年第二部がNHKで放送され反響を呼びました。ヒロインは胎内被曝し孤児となって温泉芸者として働いています。定期的に検診を受け余命が長くても2年と言われながら必死に生きています。放送が始まると、広島長崎の被爆者たちが食入るように見ていることがわかり、TVドラマでは臨終を描くことができなくなりました。映画版で夢千代の最期を描きましたが、当時はあまり好意的に評価されませんでした。

夢千代には生き続けてほしいと願い、薬を送る視聴者もいたそうです。

 

当時から40年以上たちましたが、舞台となった兵庫県の湯村温泉にはドラマのセットや小道具を展示した夢千代館があり、観光客が絶えず訪れているそうです。

 

脚本を執筆した早坂氏は、本当は忘れ去られる物語でありたいが、何十年たってもまだ苦しむ子供たちがいる、地球上に夢千代が生まれ、生き続けている、と書いています。

 

私は被爆者の方の講演を聞いたことがありますが、「アメリカ人はかわいそうだ、日本人より何も知らされていない、日本の方がまだ情報を集められる」と語っていました。

少なくとも原爆投下前から自国民を立ちあわせた核実験やプルトニウム注射の人体実験の被害者の苦しみ(長年隠蔽されていました)だけでも知っていれば、ジョークにはできないと思います。

 

及ばずながらデジタルイラストで夢千代を描いてみました。

 

オリジナルはXfolioに上げましたのでご覧ください。

https://xfolio.jp/portfolio/yatomibuncho108/works/264590