一度、KARAの簡単なMCが入り、すぐに「ミスター」が始まった。

「ラ~ラララララ、ラ~ラララララ、ラ~ラララララ!♪」

「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、Boom It!」

と曲の始めからKARAの代名詞ともいえる「ヒップダンス」が目の前に!!


両の足を開いてフロアをしっかりと踏みしめ、その2本の足を軸にして、ひざから上の全身を波打つように、左右に揺らし、同時に腰を円の動きで回転させる。

これを見て、知らない人間は「ただの尻振りかい!」と思うかもしれないが(大失礼)、このダンスは、実は、見た目よりかなり難しいダンスだと思う。

体の芯を中心に残しながら、他の部分を全て別々の方向に交互に動かして、さらに腰の回転運動まで加わっているのだ。

ダンスの得意な人間はどうか分からないが、少なくとも自分ならそうとう真面目に練習しないとまねする自信がない。

といってもひそかに家で練習しているわけではないので、そこのところ誤解ないように!

中年オヤジが風呂あがりに「らーらら、ららら♪」と歌いながらケツを振っている姿など、誰も想像したくもないだろう。

(一部のコアなファン層を除く)


匠の技とはプロの職人にしかできないものだが、その技が美しいことは素人にも分かる。

KARAの「ヒップダンス」は紛れもなく超特級に美しかった。

「これが本物のヒップダンスだ。う~ん、100点!!むふふ~ん♪」

と、不気味なおやぢの微笑を両頬に浮かべつつ、誰にも頼まれないのに、勝手に点をつけさせてもらった。

初生「ミスター」をこんな目の前で見られて、自分の目がきらきらの星になっているのが、なんとなく分かった。

ハートのペンライトを振る手に力がこもる。

そして、現在の、自分の客観的な、美しくないクソおやぢ大爆発ノリノリ姿だけは考えないようにしようと、自分の想像力を固く封印した。


曲がエンディングに向かい、

「オーーー!オオオオオオオオ~~オ!!」

と体を折り曲げながらのスンヨンの渾身のシャウトが会場を突き抜ける。

会場のボルテージも果てしなくMAXに沸騰する。

ニコルが体をくるりと回転させてオーディエンスに向かって投げキッス。

ニコルはダンスの合間に時々こういうアドリブをかます。

バラエティ番組ではどこかおどおどしている印象があるニコルだが、ステージにあがると人が変わったように生き生きとパワフルになる。

その様子から、

「本当に歌って踊るのがが好きなんだなあ」

こちらがほのぼのと暖かい気持ちになる。


この日、KARAのパフォーマンスはこの3曲だけで終わったが、俺的にはこの3曲だけで十分に満腹だった。

「ごちそーさまでしたっ!!」

と心の中で手を合わせる。


その後、ステージ上で審査発表があり、3組の予選通過者が発表された。

KARAの5人は5時間もの間審査員を努めた後の、激しいライブパフォーマンスせいか、いくぶん疲れているように見えた。

それでも予選通過者が発表されて、泣いているのをみて、優しくハグしてあげる心遣いを見せていた。

KARAの5人は基本的に皆心が優しいのだろう。

KARAの人気の理由には、パフォーマンスの良さ以上の人間的な何かがある。

「ファンだからそう思うだけだろ!!」

という反論があるかもしれないが、その反論に俺は堂々と、こうこう答えよう。

「だからなんだ!!」

と。

「よけいなこというんじゃねー!!」

と。


まあ、ほとんど90%余計なことばかりを書いてしまったが、とにかくこの日は生KARAデビューの日として大満足だった。

ライブ会場の照明が落ち、ペンライトをしまい外に出る。

夜空を仰いでゆっくりと一息。

そして、心地よい疲労感と共に軽やかな足取りで家路についた。

照明が落ちた暗闇の中、

ダン、ダダン、ダン!!

と太いリズム。

赤く怪しい光が足元からKARAの5人をさっと照らし、すぐに左右から白い光がまばゆく瞬く。

「Sing It With Me Now! トゥー!オー!ワン!オー!」

とニコルの軽快なラップで「LUPIN(ルパン)」が始まった。

「Hello!Hello!Hello!Hello!Hello!」

とKARAの5人が腰に手をあてて、力強く体を左右に揺らす。


曲の出だしで、俺の胸は感激でいっぱいになった。

この「LUPIN」は俺の一番好きな曲だ。

最初にYouチューブでこの曲のPVを見たときには衝撃を受けた。

なぜか懐かしいようで、情熱的で、神秘的で、神々しく、しかもダークな部分もあり、様々な要素が渾然一体としながら、完璧に調和している。

抑えきれない感情の波が、胸のそこからこみ上げてきて、現実世界を超えた異空間に、全ての感覚が飲まれていくような、激しい高揚感に包まれてしまう。

異論はあると思うが、自分の中では、この曲ほどKARAの魅力を最大限に現している曲はないのではないかと思う。


まあ、そんなのうがきはどーでもいい。

とにかく

「る!ぱ!ん!だー!!」

おやぢの感激はついにレッドゾーンを振り切って、全身が爆発するくらい高密度なものが、急激に全身を満たしていく。


「LUPIN」は日本語バージョンも出ているが、ライブではいつも韓国語バージョンを歌うようで、この日も韓国語だった。

韓国語だと言葉の意味は分からないが、発音が日本語より強いので、曲がよりパワフルに聞こえる。

原曲の良さは、やはり元の言葉で、歌うのが一番かもしれない。

とにかく、この曲は全編が全て見せ場のような曲で、見ているほうも息つく暇がない。

ただその中でも、見せ場の中の見せ場といえば、「非常口ダンス」の部分だ。

これは、駆け足するポーズで手を前後に交互に動かすダンスで、その格好が非常口のポーズに似ているところからこの名前がついた。

一歩間違えば、格好悪くなってしまうかもしれないポーズだが、ぎりぎりのバランスで最高にクールに完成されているところが凄い。


「As Usual! It's Mine!♪」

と非常口ダンスのパートが来た。

ハラちゃんセンターで、5人そろって腰を落とし、腕を振る。

「ああ、これを生で見られるとは・・・・・・・」

と感激が胸に広がる。

「長生きはするもんじゃのう・・・・・・・」

ってほどじいさんではないが、生きている喜びを実感できたひと時だった。

こんなことがあるのなら、ひょっとしてこれからの人生にも、まだ何か新しいことが起きるかもしれない、いや、起こせるのかもしれないと、わずかながらも自分の先行きにも、希望が持てる気がした。

それにしても、おやぢになると何でもかんでも、自分の人生に投影する癖がついてしまって、エンタメを純粋に楽しめないのが玉に瑕だ。


「Never Back It Up!Buck It Up!♪」

「Never Turn It Up!Turn It U~p!♪」

と英語のラストフレーズの後、5人が忍び足で後ずさり、顔を隠すしぐさで曲が終わる。

「えがった・・・・」

おやぢとしては非常に満足した。


そして、3曲目。最後の曲はKARAといえばこの曲を忘れてはいけない。

KARAの代名詞「ヒップダンス」のヒット曲「ミスター」だったのです!!

照明が暗くなり正面スクリーンにミラーボールの輝きのような光の乱舞が映し出された。

そして・・・・・・・

「Here we are~♪ Here you are~♪」

とささやくような、歌声で始まり、

「Yeahー!!!!!」

とギュリさんの高い声が暗闇を切り裂き、KARAの足元から光が一面に炸裂した。

「GOGOサマー」のアップテンポなリズムが一気に走り出す。


「きたきたきた!!キター!!!!!!」

と俺の脳みそも、一瞬でMAXに沸騰し、胸の鼓動がバッカンバッカンになる。

「GOGOさまあどわぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!!」

と興奮して我を忘れた。

KARAはキラキラの散りばめられたタイトなブラックの衣装を身に着けていた。

腕からは白いフリンジが一列に下がっていて、手を動かすたびに、さらさらと揺れる。

短いパンツから健康的でしなやかな脚がすらりと伸びる。


これは夢か幻か?

目の前でKARAが歌っている。

KARAが踊っている。

「近い!近いぞ!!すぐそこじゃないかぁー!!そこにいっるのは、もしかしてKARAでしょーか!?」

と自分の中でだんだん意味不明になってくる。

ライブ開場の観衆もヒートアップして、激情の熱気が炎の渦のように巻き上がる。

周りの連中も俺に負けないくらい意味不明になってなにやら口々に叫んでいた。

皆、ケダモノ化してしまっている。

こうなったらなかなか人類に戻れるものではない。

KARAの歌と踊りが皆の眠れる本能を呼び覚ましているのだ。


こぶしを突き上げてダンダンとジャンプする。

おやぢの俺も、右手にハートのペンライトを魔法の杖のように振りかざして、くるくる回す。

気分はプリキュアか?

もはや恥ずかしいもクソもない。

「はい、私バカです。それが何か!?」

という気分だ。

完全に開き直っている。


曲が終盤にさしかかり、

「GO GO Summer oh oh ohー♪」

のところでハラちゃんが腰をくりっと回す。

「かっかわいい!おやぢ感激ぃー!」

と倒れそうになる。

俺も歌に合わせて、

「おっおっ、おー!!!」

と叫ぶ。

「ギリギリまでKeep on going !  あきらめちゃダメよー もっともっとー I wishー♪」

チャッチャッチャラ、チャチャチャチャ、ドーン!!

と曲が終わり、照明が一度暗転した。


そして、次の曲は俺の大好きな「LUPIN(ルパン)」だったのだ。

カバーダンスの個々のパフォーマンスはとても良かったのだが、いかんせん、なんといっても、全体の時間が長かった。

開場からすでに5時間近くが経過していた。

自由に動けない体勢で、こんなに長く直立していると、気力体力を奪われて、周りで何が起こっても反応しようという気にならなくなってくる。

最初のうちこそ拍手や歓声を送っていたが、後半は半分死んだようになって、前後左右にふらふらしているだけで精一杯だった。

身長180センチオーバーの「黒い3連星」は相変わらず俺の前に立ちはだかっていた。

もはや、そいつらをクリアしてステージを見ようという気力もわいてこない。

最後の期待はKARAのライブだけだ。

「KARAのみんな・・・・・助けてくれ・・・・・早く・・・・・・・」

と、おやぢなりに弱気になっていた。


そうこうするうちに最後の予選参加者のパフォーマンスが終わった。

参加者の人たちには本当に申し訳ないが、

「あー、やっと終わってくれた。助かった・・・・」

というのが、おやぢの正直な感想だった。

そうして、MCの馬面が、

「KARAはステージ衣装の着替えがあるので一時いなくなります」

というような感じのことを言った。

その瞬間、下を向いて死にかけていた俺の目が「キラーン!」と輝いた。

周りで同じように死に掛けていた連中の目も、そろって「キラーン!」とした。

KARAのみんなが急ぎ足で退出していく。

それを待っていたかのように周りの人波がステージに向かって「ぐわー!」と動き出した。

後ろからどんどん押されて俺も前に押し出されていく。

「おわわ!!おっとっとい!!」

昭和の掛け声で体勢を整える。

MC馬面があわてて

「皆さん、押さないで!」

とか何とか叫んでいた。


後ろからのプレッシャーがおさまって立ち止まると、嬉しいことに、「黒い3連星」がどこかに消えていた。

「Yes!!」

と思わずガッツポーズが出た。

ちなみに「ガッツポーズ」は、ガッツ石松が始めたポーズだから、ガッツポーズという。

これほんとの話。

ふと見ると、俺の前には俺よりさらに頭一つ分背の低いおやぢが立っていた。

なんというラッキーか!

俺もおやぢだが、

「おやぢ!愛してるぜ!!」と密かに心の中で叫んだ。


そして、ついにKARAがステージに現れたのだった!!

KARAの5人はステージ衣装でなく、私服のようなカジュアルないでたちで現れた。

5人の現れた周りにはオーロラのような光のオーラが広がり、暗いライブ会場の中で、そこだけ光輝いているように俺には見えた。(けっして照明やスポットライトのためではなく)

「こっ、これがスターか!! まっまぶしい!!」

と俺は圧倒された。

その、天に選ばれたものだけ持つ、貴人としての高貴な内面の光とカリスマの波動は、どう隠しても隠せる物でもなく、彼女たち5人の全身からまばゆい光の本流のようにあふれ出し、発光する天界の得がたい宝石のように、周囲の暗闇の中から、くっきりと奇跡の美を浮かび上がらせていた。

(ちょっと大げさか? でも、これでもまだ書き足らないのですよ。くふふふ)


なんといっても、今まで映像でしか見たことのないKARAの5人が、今、手を伸ばせばすぐ届くような近いところで、にこやかに微笑んでいるのだ。

新木場大正解だ!!

俺、冴えてる!

やったぞ俺!

えらいぞ俺!

俺さいこー!!

わー俺!!

それにしてもまさか、フロアのど真ん中にKARAの審査員席が設置されるとは思わなかった。

他の普通の関係者審査員はもうすこし上の遠いところに座っていた。

KARAもそんな感じになるとばかり思っていた。


とにかく5人が近い。

ニコルのお肌がつるつるで、本当に、同じ人類と思えないほどかわいく綺麗だった。

ジヨンも実物を見ると完璧な美人だ。

ギュリさんのあの美貌がSFXの特殊映像でないことが、目の前で見て、やっと信じられた。

また、スンヨンの顔の小さくて愛らしいこと。

そして、ハラちゃんの華奢ではつらつとして、なんと美しいこと。


確かMCがKARAの紹介などをしてKARAも何かを言っていたような気もしたが、なにしろ「頭ボーン!」になっているので、詳細は全部記憶からっすっ飛んでしまった。

なのでここではKARAが美しかったことしか書けないのです。


そうして、背伸びをしてKARAを見ているうちにふくらはぎがプルプルしてきた。

なにしろ、周りは図体のでかい男ばかりだ。

耳元で「ニゴル~!!」「ズンヨォ~ン!!」などの、かなり美しくない、野太い声がこだましていた。

空調が効いているとはいえ、気温30度超えの真夏日に、むさい男共に囲まれて、おしくら饅頭をしていたので、あっという間に全身汗みどろになってしまった。

割と体力には自信があるほうだが、耐久力には自信がない。

長丁場になると、急速にパワーダウンしてくる。

「も、もう、限界どわぁ・・・・」

と一度、人波に沈んだ。


そうこうするうちに、本編のカバーダンスパフォーマンスが始まった。

愛くるしい女の子たちがステージに現れて、踊り始めた。

正直、カバーダンスよりもKARAを見ていたかったが、それは非常に失礼なことだろうと思い、一応、拍手などしてステージに注目するようにした。

皆さんがんばって練習しているようで、なかなかに楽しいパフォーマンスが続いた。

周りの観客もだんだんステージに注目し始めていた。

ただ、俺の前に身長180センチはあろうかという、でかいでかい男たちが、交互に重なるように、3人ほど並んでいたので、どうも前がよく見えない。

俺も身長は173センチあってそんな小さいほうではない。

(昔は174センチあったが、なぜかいつの間にか1センチちじんだ。)

しかし、こうもでかいやつらに囲まれたらなんともならない。

隙間から見ようとすると、そこに前のやつの後ろ頭がかぶってくる。

別の隙間に首を伸ばすと、そこにも違う兄ちゃんの後頭部が立ちふさがる。

「くそ、この黒い三連星のジェットストリームアタックをなんとかしなければ、KARAのライブの時まずい。非常にまずいぞ。」

と焦りだした。

思わず空に向かって、

「マチルダさーん!!」

と叫びそうになった。(初期ガンダム世代にだけ通じる定番ギャグです。重ね重ねすいません)


そして、KARAのライブが近づく。

9月に新木場のスタジオコーストというライブハウスで「K-POPカバーダンスフェスティバル」の日本予選が開催されるという話だった。

日本で今人気のK-POPといえばダンスナンバーが多く、それにあこがれて、ダンスをカバーするアマチュアダンサーもたくさんいるらしい。

そのカバーダンス大会の広報大使にKARAが就任し、日本予選の特別審査員をKARAが務めることとなった。

審査員をするということはKARAがその会場に来るということで、KARAが会場に来るからには、何らかのパフォーマンスをしなければ、観客は納得しないだろうと考えた。

K-POPカバーダンスのHPをチェックすると、当日KARAのミニライブがあると記されている。


「くっふふ、これはねらい目だな・・・・・」

と俺は独りほくそ笑んでいた。

HPによるとスタジオコーストはスタンディング(立ち見)でも2,000人くらいの定員だという。

しかも会場は横に広いため、どこからでもステージが良く見えるとあった。

日本デビュー前ならいざ知らず、KARAも今やオリコン1位のトップアーティストだ。

箱の大きい会場では、いい席の競争率が高く、まともに生KARAを見ることも難しいだろう。

しかも、今回はKARAやK-POPアーティストのコンサートがメインでなく、あくまでカバーダンスの予選がメインだ。

こういっては悪いが、そう有名でもないアマチュアのカバーダンスを見たがる人がそんなに多いとは思えない。

チケットの先行抽選も通常のライブよりは当たりやすいはずだ。

「よっしゃ、待ってろよー、生KARA!!」

と俺の中で期待は、いやがおうにも高まり、気分が高揚していた。


そして、カバーダンス日本予選当日になった。

開場の1時間くらい前に新木場の駅を降りると、大勢の人々が同じ方向に向かってぞろぞろ歩いていく。

どうやら、皆、スタジオコーストに向かっているようだった。

その誰もが、KARA関連のグッズを持っている。

ファンミーティングのKARAタオルを首に下げている人や、KARAのTシャツを着ている人もいる。

皆、完全にKARA目当ての人たちだ。

しかし、9月11日だというのに気温は30度を超える猛暑日となり、開場までの間、外にいるのもしんどいことだった。

開場も遅れていて、

「後10分遅れたら、だだをこねてやる。おやぢは並ぶのが苦手なんだ!あちー、くわっ!」

と憤っていたらやっと開場になった。


中に入ると、正面のスクリーンにビデオが映し出されてどこかで見たことのある男の顔が映し出されていた。

あれは、少女時代のダンスをカバーしている「遠藤時代」のリーダーだった。

KARA以外のK-POPのことは良く知らなかったが、この日に向けてカバーダンスのことを少しは予習しておいた。「遠藤時代」そのコミカルなダンスからメディアでもよく紹介されているらしい。

ただ、今回は「遠藤時代」の参加は無いようで、ビデオメッセージだけのようだった。

そうなると、予選通過グループは混戦になるだろう。


ライブ会場の中はスタンディングの人で山盛りになっていて、身動きも取れないくらいだった。

ステージを見やすい位置に移動するのも困難だった。

MCがステージに現れた。

一人は「踊るさんま御殿」などによく出ていたコメディアンの「ヘリョン」で、もう一人は良く分からない馬面の男だった。

二人ともいきなり韓国語で喋りまくる。

時々日本語も話していたが、このちゃんぽん会話に混乱して、俺は何を言っているのか良く和からなった。

「ほぼ日本人の客ばかりなのだからMC日本語でしゃべれよ」

とも思ったが、

「まあ、多分、韓国向けにビデオ収録や中継もやっているのだろうな」

と大人の判断で、納得した。


そのうちMCが

「特別審査員のKARAでーす!!」

というような感じのことをなんちゃらかんちゃら叫ぶと、山盛りの観客が騒然とし始めた。

そして、いきなり人波がライブ会場の中心の方に「どわー」と移動していく。

俺もいきなり押され一緒に流された。

なんとか体勢を整えると、5メートルくらい先にKARAのための審査員席が設置されていているのが見えた。


そこに、なんと!!

ああ、なんということだ!!

あのKARAの美神5人がいた!

いや、いらっしゃった!

いやいや、天上から舞い降りた天使のように、厳かに降臨されていた!

「うひゃー!!!本物ダー!!」

と俺も一気にテンションが上がる。

審査員席は鉄柵で囲まれていて安全なようになっていたが、そこに向けて人がどんどん押し寄せるので、

鉄柵付近はおしくら饅頭のような状態になっていた。

俺も負けじと、人の頭の間から背伸びして、必死でKARAの姿を追った。

「うおー、ニコル!!くわー、ジヨン!!ひー、ギュリさん!!ひゃー、スンヨン!!ぐおー、ハラちゃん!!」

と、頭の中がが沸騰したポットのようにぐらぐら煮え返った。

それは、もしこの場に誰か一人でも俺の昔からの知り合いがいたら、速攻で病院に連れて行かれるような異常なテンションの高さだった。


これほどの感情の爆発を感じるのは何十年ぶりだろうか。

いや、そもそも今までの自分の人生の中で、果たしてこれほどの熱狂を感じることが一度でもあったろうか?

仮にそのような記憶があったにしても、半分は熱狂の演技でしかなかったのではないだろうか。

「ああ、俺は40過ぎの、ただのクソおやぢだぜ・・・・・・こんなんでいいのかよ?」

と高みから見下ろしてる自分も確かにそこにいたが、じきにその高みの俺はどんどん小さくなって、はるか上空へと消えていった。



普段から、KARAのことばかり考えていたら、ある日ついにKARAの夢を見てしまった。


全部で2回、夢の中でKARAメンバーに会った。

一度目は、どっかわからないその辺の街中だった。

なんとなく、街中を歩いていると、正面からKARAの5人が早足で歩いてきた。

突然のことにびっくりしていると、KARAの5人は俺の横を通り過ぎて行った。

どこかに向かっている途中のようで、皆、少し急いでいるように見えた。

「いかん、このままでは、みんな行ってしまう」

と我に返って、最後尾を歩いていたギュリさんに、

「すいません!!」

と声をかけた。

握手してもらおうと手を差し出すと、夢の中のギュリさんはにこやかに微笑んで、

快く握手に応じてくれた。


他の4人は俺に気づかなかったようで、そのまま行ってしまう。

ギュリさんもすぐに4人の後を追って歩き出した。

「なんてラッキーなんだ!! 俺は実についてる。こんな偶然があるなんて考えれない!!」

と感激していたら、目が覚めて、

「ありゃ?」

と思った。

でもギュリさんと握手した手の感触は生々しくて、とても夢とは思えないくらいだった。

「まあ、夢でもKARAとあんな近くで遭遇できたなんて、すごいことだ」

とそれでも一応満足ではあった。


2度目の夢ははコンサートの会場だった。

コンサートの会場といっても野外の広いオープンスペースで、

客席はローマのコロッセウムのような、アリーナ状の石造りのひな壇になっていた。

自分のいる客席から10メートルくらい先に小高い石造りのステージがあり、

そこでKARAの5人が踊っていた。


客席は指定席ではないようで、自由に移動できたので、

なるべくKARAを観やすい場所に移動していった。

「結構近くで見れてラッキーだ」

と思っていると、

にわかに客席がざわめき始めた。

ふと空を見ると、雲が何かおかしい。

雲の中で動いているものがあり、次の瞬間雲と雲の間から、巨大なドーム型のUFOがゆっくりと姿を現した。

客席は騒然として、悲鳴が上がり、人々が逃げ惑い始めた。

その中で俺はなぜか冷静で、

「UFOぐらいで何を大騒ぎをしているんだ? せっかくKARAが踊っているのに」

と観客の騒ぎにあきれていた。


すると、次の瞬間、体が軽くなり、宙に浮かび始めた。

俺の体が高々と浮かんでいく。

どうやら俺はUFOに吸い寄せられているようだった。

「キューン」という音がしていて、気持ちよくなり、そのまま意識が遠くなってゆく。

そして、何も分からなくなった。


夢の中で気を失うのははじめての経験だった。

それにしてもなんでKARAとUFOがセットで現れたのだろうか。

夢判断したら結構変なことを言われるのではないだろうかと思う。

「人生に絶望している」とか「現実逃避だ」とか、どうせメタクソに分析されるのだろう。

そんな分析好きの誰かに一言言いたい。

「同情するならマネーをくれ!!」と。

「明日の1万円より、今日の10円だ!!」と。

さらに、

「やっぱり、牛丼は松屋にかぎる!!」と。(味噌汁付き)

ああ、我ながら分裂してきたので、今日はこの辺でやめとこうと思います。

でわでわ。

ある日、Youチューブで、KARAが日本テレビの「スッキリ」にゲストとして出演した回の映像を見ていたら、MCのテリー伊藤が

「私はKARAのファンクラブに入ります!!」

と叫んでいた。


その時、初めてファンクラブに入るという選択肢があることに気づいた。

いくら業界人とはいえ、テリー伊藤のような完全なおっさんが、堂々と「ファンクラブに入る」と宣言したことに、背中を押された気がした。

ファンミーティングの抽選に参加できるのは、ファンクラブに入っている人だけというのも、気になっていた。

それに、ファンクラブに入ればKARA関係の情報をいち早く入手できるはずだ。


早速パソコンで検索して、ソッコウで申し込んだ。

KARAのファンクラブは

「Kmilia(カミリア) JAPAN」という名称だった。

これで俺も名実共に「Kamilia(カミリア)」になったわけだ。

そして、

「あー、ついにやってしまった・・・・」

とつぶやく。

まさか、この歳でアイドルのファンクラブにはいることになるとは思わなかった。

このことは、絶対に他人に知られてはならない。

ばれないように、普段、何かでKARAの話題が出たら、

「俺は、KARAファンクラブなんか絶対に入ってないぞ!! はいってないからなー!!」

と先回りして叫ぶことにしよう。


少したってから、ファンクラブ公認のペンライトを通販で取り寄せた。

そのペンライトはピンク色のキラキラで、しかも大きいラブリーなハートの形をしていた。

「これは・・・・ちょっと・・・・・きびしいな・・・・・・・」

さすがに、このペンライトと自分のコラボが、とんでもないミスマッチであることは、誰に言われなくても、0.1秒で分かった。

「おやぢ仕様のペンライトはないものか・・・・・・」

と心細くなった。

でも、部屋を暗くして、ペンライトの明かりを光らせてみると、キラキラした輝きがとても綺麗で、つい見とれてしまった。

その神秘的な輝きを眺めながら、

「これは・・・もう、バカになるしかないだろう・・・・・バカになれ!! 俺よ!!

と気力を奮い立たせて、覚悟を決めた。

昔、梶原一騎先生の「空手バカ一代」という名作スポコン漫画があったが、

俺の場合は「KARAバカ一代」だ。

(ダジャレです。すんません。)


こうして、ペンライトを買うと今度はこれを使いたくなってきた。

今まで、映像ではKARAを山盛り観てきたが、実際に生の「NAMAKARA」を見たことは、一度もない。

ぜひとも、

「この世界のどこかに現存するといわれている、本物のKARAの等身大実物を見たいものだ」

と学術的に40代おやぢのバカ面で思った。

ファンクラブのイベントカレンダーを見ると、新木場で開催される「K-POPカバーダンスフェスティバル」にKARAがゲスト審査員として参加するようなことが、書いてあった。

そんで、このイベントの詳細をチェックすることにした。

めんどーなので、その後のもろもろは一気にはぶくが、とにかく生活がKARAを中心に回り始めてしまった。
ただ、KARAが主役でテレビ東京のドラマに出演するという話があったが、この時だけは、
「どうせアイドルのイメージビデオっぽい腑抜けたチープで当たり障りのないドラマを、KARA人気に当て込んで、やっつけぎみに、ニヤニヤしながら、あほ面でてきとーに、金もかけずにつくっているのだろう、いや、そうに違いない。テレビ東京ふざけんな!」
と勝手に決め付けて特に観ようともしなかった。
今にしてみたら、大変申し訳ないことでした。
(その後DVD全部買って、死ぬほどはまったのでどうか勘弁してください。「URAKARA」名作です。)



そのうち、KARAメンバーが所属事務所の待遇への不満から契約解除を申し出たというニュースが伝わってきた。
最悪の場合KARAのメンバーが分裂するかもしれないという。
これにはさすがに、ショックをうけた。
「せっかく、久々に好きなものができたのに、かんべんしてくれー!!」
と叫ばずにはいられなかった。
でも心のどこかでなぜか「大丈夫。絶対に復活する」という根拠のない、確信もまたあって、その確信がどこから来るものかは、分からなかった。



そして今年3月の東日本大震災。
一度の大地震で東日本が甚大が被害を受け、国の機能が一時的に麻痺してしまった。
物流もほぼストップし、金があっても物が買えない、という状態が数週間に渡って続く。
人の創り上げたシステムがどれだけもろいものであるかが、白日にさらされた出来事だった。
「俺たちは毎日薄い氷の上を平気な顔で歩いていたのだな」
と、今ここに立って生きていることの無常を感じずにはいられなかった。



その後、KARAのシングル「ジェットコースターラブ」が発売され、夏に向けて「GoGoサマー」が発売された。
KARAと事務所との対立は一応解決し、解散騒動は収まったようで、少なからずほっとした。
ここで白状しなければならないが・・・・・
この段階までまだ、KARAのCDは一枚も買ったことがなかった。
これでよくファンなどと言えるとあきれられるかも知れないが、ちょっと言い訳をさせて欲しい。
今までのわが半生で、誰のものであろうと、シングルCDというものを一度も買った経験がなかったのだ。
だので、シングルCDを買うという意味が分からなかった。
2曲くらいしか入っていないCDを繰り返し聴いてどうしようというのか、まるで想像できなかったのだ。
自分にとってCDというと10曲以上入っているアルバムの事で、そのくらい曲が入っていれば、BGMとして繰り返し聴く事ができる。もちろんこの段階で「ガールズトーク」というCDアルバムが出ていたが、できれば、DVDのついている初回限定版を欲しいと思い、店頭の通常版「ガールズトーク」を買うことに躊躇していた。



CDショップに行く度にKARAのCDコーナーに行き「GOGOサマー」のCDを眺め、
「欲しいなぁ。でもシングルだよなあ。DVDがついているからといって、たった2曲のCDが約2,000円もするとは、ずいぶん高いんだな・・・・・」
と思いながら家へ帰るということを繰り返した。
そのうち、そんなことをしている自分にばかばかしくなり、
「欲しいなら買えばいいじゃねえか、簡単な話だ」
と気づいて、さっそく初回限定版Aを買った。


しかし、いい歳のおやぢがKARAのCDを買うのはとても勇気がいることで、すぐそこのレジが5キロ先にあるくらい遠かった。
心の中で(いや、これは違うんです。誤解です・・・)と意味不明の言い訳をしながら、レジにCDを持っていく。

しかし、レジの若い女の子はKARAのCDを見るといくぶん嬉しそうな顔をして、やさしく丁寧に対応してくれた。
さては哀れまれたのだろうか?
それともレジの女子もKARAのファンだったか?

こうして一度買ってしまうと、たがが外れて、頭のネジもぽろぽろと5、6本とれてしまった。
その後、過去のKARAのCDのDVDつき初回限定版Aの全てを、一気にネットで買ってしまった。
「一人殺すも十人殺すも同じことだぜ、ひひひひひひ」
と開き直る。

こういうことは金のない学生にはできないことで、バカおやぢの行使できる唯一の特権かもしれない。
そして、このおやぢ(私)の症状は、日々さらに進行していく。



(スキャナーが動かなくなったので、今日は「おやぢ書道」はのせられないです)

家で、テレビを観ていた。

ニュース番組だったろうか、その辺の記憶もすでに定かではないが、

「韓国で人気のガールズグループ「KARA」が渋谷でゲリラライブを行った」

という話題が放送されていた。

何でも30分を予定していたライブに人が集まりすぎて、たった3分で打ち切られた、とのことだった。

このグループはお尻をくねらせて踊る「ヒップダンス」が売りという話だ。

「へー、ヒップダンスねえ、売れるために色々考えるもんだねねえ・・・・」

とその時は、特に何の感慨もなく、KARAの話題は頭の中をスルーしていった。


次にKARAを意識したのは「関口博のフレンドパーク」にKARAがゲストとして出演した時だった。

たまたまチャンネルを合わせて、なんとなくそのまま、観る事にした。

5人の韓国の女の子がつたない日本語を一生懸命しゃべっている。

この5人は何か無駄に元気がよくて、はしゃぎ方も派手だった。

そのがんばる姿に胸の奥の「男気スイッチ」が半分押されてしまった。

「言葉も通じにくい、なれない外国で大変だろうに・・・・・」

と5人を応援したくなってきた。

それでもその時は5人の顔の見分けもつかなかった。

ただ、中で一人の金髪の女の子がすごい美人だなあとそれだけの印象だった。
その女の子はそのグループのリーダーらしかった。

「やっぱり一番美人だからリーダーになったのかなあ」

と、今にして思えばずいぶん不謹慎で不見識なことを漠然と考えていた。


その後NHKやそれ以外の番組でも時々KARAの姿を目にする機会が増えてきた。

フジテレビ「目覚まし土曜日」のバックミュージックに、KARAの「ジャンピン」という曲が流されるようになり、

一人でいる時に「ジャンピン、ジャンピン、ジャンピンなー」とサビの部分だけ口ずさむようになっていた。

ある時、「全部ちゃんと聴いたらどんな曲なのだろう」、と気になってYouチューブで曲の検索をしてみた。

しっかり創り上げられたPVはなかなか良かった。

「へー、いいじゃん、いいじゃん」

と若干の興奮を感じながら、KARAの他のPVも検索して観始めた。

そして・・・・

気づいたら、毎日部屋に帰ると、YouチューブでKARA関連の映像を検索するようになっていました。

「うわー、やべえ、つぼにはまった。こうなったらしばらく止まらんぞ」


それでも、この時は「KARA」の世界が、脱出不可能の底なし沼のように自分を捕まえて、ずっぽりと深みに引きずり込んでいくことになるとは、まだ想像もしていなかったのです。


スットコおやぢのKARA日記