皆さま
明日からまた東京は晴れの日が続き気温が上がるようじゃあな。そして刻々と彩風さんのラストデーが迫っている。
終わりがあると分かっていてもこの瞬間はなんとも寂しい気持ちになるのぉー。
ということで最後の日までベルサイユのばらに関連する内容を書いていきたいと思う。
さて、音彩さんが見事に悪女を演じているの。観ていてもなんとも嫌な感じの女性だと思ってしまう。
彼女が演じている『ジャンヌ』は実在にもいた人物じゃあな。かの有名な事件の主犯である人物じゃあ。
その事件の名前は『マリー・アントワネットの首飾り事件』
この事件を境にマリーアントワネットの人気は急降下してくんじゃあ。
主犯のジャンヌはラ・モット伯爵夫人と名乗っていたが本名はジャンヌ・ド・ヴァロワ=サン=レミといい、破産した貴族、ジャック・ド・サン・レミ男爵の娘でした。
母は男爵の女中で、男爵が若くして亡くなったあと、生活に困窮して娼婦となり幼い娘ジャンヌはほったらかしにされたのです。彼女は畑から作物を盗んだり、物乞いをして食いつなぎをしていたようだ。
亡き父男爵は、現フランス王家であるブルボン家の前の王朝、ヴァロア家のアンリ2世の、認知されなかった庶子の子孫でした。
ジャンヌは7歳のとき、『ヴァロア家の血を引く哀れなみなしごにどうか憐れみを!』と叫んで物乞いをしていました。
それを聞きつけた、通りがかりの侯爵夫人に『王家の子孫がなんということ』と引き取られ、修道院に入れられ、衣食を与えられました。これだけでも、信じられないような幸運といえるでしょう。
しかし、彼女は稀代稀に見る悪だったんじゃあ。
しかし、地味な修道院にいつまでも閉じこもっているのを嫌い、22歳のとき、ジャンヌは修道院を抜け出し、なんとかして金持ちになってやろうと世渡りをはじめます。
美人の彼女はニコラ・ド・ラ・モット伯爵という貴族と結婚。ラ・モット伯爵夫人となります。
ところが、伯爵は貴族といえども借金にあえいでいたので、詐欺で稼ぐ夫婦となっていきます。
ジャンヌは、大領主で好色なロアン枢機卿に近づき、関係を持ち、枢機卿にねだって夫の借金の肩代わりをしてもらい、夫も出世させてもらいます。これに味をしめたジャンヌは、自分は王妃の親友だと嘘をつきます。
収入も大きいが借金も大きいロアン枢機卿は、ルイ13世のリシュリュー枢機卿、ルイ14世のマザラン枢機卿のように、フランスの宰相になりたがっていました。
宰相になれば、国を牛耳ることができ、金の心配はなくなるだろう、と。
しかし、宰相になるには、王妃マリー・アントワネットのお気に入りにならなくてはなりません。
でも、母マリア・テレジアから、いかにロアンが下劣な人間か聞かされていた王妃は、ロアンと目も合わせようとしません。
ジャンヌは、ロアンに、自分が王妃との間を取り持ちましょう、と請け負い、彼は渡りに船ととびつきます。
ジャンヌは、偽の王妃の手紙を作り、ロアンはコロッと騙されます。
そんな中、宝石商のベーマーが、例の首飾りを王妃が買ってくれなくて困っている、という噂を聞きつけます。
ジャンヌは、自分が王妃を説き伏せましょう、という話を宝石商に持ち掛けます。
そして、王妃はこの購入を夫の王に知られたくないので、ロアン枢機卿を仲介にすることにしました、と嘘をつきます。
枢機卿には、王妃があの首飾りをあなたが保証してくれるのをお望みです、と伝え彼はそれに大喜びで乗ります。
そして、枢機卿は首飾りを受けとりジャンヌに渡します。
ジャンヌはさっそく首飾りをバラバラにし、夫がロンドンに持っていって売りさばきました。
期日が来ても、王妃からの支払いはありません。
ベーマーは、王妃に督促の手紙を送りますが、相手が王妃だけに、催促といっても回りくどい表現で書かれているので、マリー・アントワネットは読んでも意味が分からず、面倒になって燃やしてしまいます。
彼女は、不要な文書はすべて燃やしてしまう習慣がありましたが、これも後に致命的になります。
出入りのユダヤ人宝石商人ベーマーがやって来て、『王妃が分割払いで購入した非常に高価なダイヤモンドの首飾りの支払いがないので、このままでは破産です』と泣きついてきて、王妃様に謁見を求めています、とのこと。
マリー・アントワネットは首をかしげます。
そんな首飾りなんか買った覚えがないのです。
そういえば、ベーマーは以前、ルイ15世がデュ・バリー夫人に贈るために発注したが、王が崩御してしまったために引き取り手がなくなった、大きなダイヤの首飾りを、買っていただきたい、と持ち込んできたが160万リーブルという値段とデユ・バリー夫人送る予定のものと聞いてマリー・アントワネットは断っていた。
さらにベーマーはますます不可解なことを言います。
王妃の親友ヴァロア伯爵夫人が店にやってきて、王妃が内密にその首飾りを買いたいとおっしゃいました。
そして、ロアン枢機卿が王妃の委託と称してお持ち帰りになりました、と。
王妃がびっくりします。
ヴァロア伯爵夫人なんか親友どころか、名前も初めてきいたし、ロアン枢機卿といえば、大領主であることをいいことに、聖職者でありながら好色で贅沢三昧の軽薄な人物。
かつて駐オーストリアのフランス大使となり、ウィーンに駐在したけれど、あまりに派手な振る舞いで風紀を乱し、ウィーン貴族たちが彼にならって贅沢をし始めたため、女帝マリア・テレジアの怒りを買い、マリー・アントワネットが王妃になると、すぐ解任してほしい、と母帝から頼まれたくらいの人間。
王妃も口もききたくないくらい嫌っていたのです。
ロアン枢機卿があまりに派手な暮らしをしていて、大借金をしているのも有名でしたから、王妃は、彼が自分の名前を使って宝石を手に入れ、金策していたのだろう、と決めつけます。
そしてついにベーマーの訴えにより、ロアンが、王妃の名を使って宝石を手に入れたという嫌疑で逮捕されたのです。
王家にも通じる大貴族であり、カトリック教会では教皇に次ぐ高位聖職者である枢機卿が、泥棒のように逮捕されるのは前代未聞であり貴族たちは仰天しました。
彼が何をしたかは別として、彼に与えられた恥辱は、自分たち特権階級に対する侮辱ととらえられたのです。
これがマリー・アントワネットがフランスの特権階級からも嫌われる原因となったんじゃあ。
高等法院で審理が始まると、ロアンも騙された被害者であることが明らかになりました。
そして真犯人のジャンヌが捕まります。
事件は大々的に報道され貴族たち市民たちもはロアンに同情します。
裁判の公開を求めたマリー・アントワネットの意向は、まったく逆効果となったのです。
それどころか、王妃がこんな途方もない、国家予算レベルの高価な首飾りを欲しがるから、詐欺を成立させてしまったのだ、と、上からも下からも、公然と王妃を非難する声が高まります。
しかも、宝石商からの請求の手紙を王妃が焼いてしまった、というのも、証拠隠滅ではないか、と疑われました。
王妃は告訴側であったので、逆に弁明の機会もありません。
折しも、解任された財務長官が、腹いせに国家のとてつもない赤字額を公表したものですから、それさえ、マリー・アントワネットの浪費のせいにされたのです。
ヴィジェ・ルブランの描いた王妃の肖像画には、「赤字夫人」とレッテルが貼られたので、肖像画の数々は撤去されました。
そして、判決の日。
ロアン枢機卿は無罪となり、市民たちは沸き立ちます。
高等法院は王権を制限し、貴族の特権を守る機関で判事たちも貴族ですからそもそも枢機卿の味方です。
マリー・アントワネットは、いったいわたしが何をしたというの?と泣き崩れたといいます。
ジャンヌは焼きゴテで、泥棒を意味するVの字を肩に焼き付けられる刑となりましたが、執行に際して暴れまわり、刑吏の手元が狂って胸に灼熱のコテが押し付けられ、失神します。
そして終身刑になりましたが、後に脱獄。
ロンドンに渡って、あることないこと、マリー・アントワネットを誹謗中傷する卑猥な文書を発行しこれでも大儲けします。もう感心してしまうくらいの悪い者じゃあな。内容は全て嘘だったんのに国民はそれを信じる者はいなかったんじゃあ。
ここから、マリー・アントワネットは国民から決定的に嫌われてしまうのです。
被害者のはずのマリー・アントワネットがまるで加害者のようにバッシングを受けることになるんじゃあ。
この頃の彼女が夢中になっていたオペラ『セビリアの理髪師』には、有名なセリフがある。
わたしは誠実そのものの人々が、中傷の犠牲になるのを見てきました。
いいですか?もしうまくやりさえすれば、どんなはっきりした悪意でも、下劣な考えでも、馬鹿げた作り話でも、大都会の怠け者にいくらでも植えつけることができるのです。
はじめのうちはほんのかすかな騒めきが嵐の前にツバメが飛ぶようなピアニッシモです。
低く騒めいて消えていきますがでも飛びながら毒の種はまいている。
誰かの口がそれっをパクリととらえ、ピアニッシモで巧みに人の耳にささやきます。
すると突然、害毒が生まれ、成長し、さらに増長し、だんだんだんだん口から口へ伝わっていきます。
悪魔みたいな速さで。そして突然、神のみぞ知るですが、中傷は立ち上がり、口笛を吹き、たちまち膨れ上がり、高く跳び、渦を巻き、旋回し、巻き込み、雷鳴を轟かせ、天のおかげの凄まじい叫び声になり、誰もが聞こえるクレッシェンドになり、憎悪と破門の大合唱になるのです。
どんな悪魔も中傷にはかないませんよ。
ジャンヌはその後、精神を病みロンドンの崖から飛び降りて亡くなっている。
マリー・アントワネットは何もしていないのに誤報により自らの立場は危険に晒した事件じゃあ。
しかし、その誤報を国民が信じるくらいにマリー・アントワネットの浪費と遊ぶや他の貴族への振る舞いに難があったことが分かる事件じゃあ。