今日はちょっと…マーケティングの話をしよう。前回のエンタメとも関係していることなんで。

 

ITの進展によってあらゆるものがデジタル化される時代を迎え…企業は当然のこと,個人にもデジタルトランスフォーメーションへの対応が迫られている。

 

品質に…「顧客の暗黙のニーズ」を含む”顧客満足度”によって評価されるようになったのも遠い昔…今は,顧客満足度だけではなく,カスタマー・エクスペリエンス(顧客経験価値や顧客体験ともいう)を高めることが求められている。

 

カスタマーエクスペリエンスとは,商品そのものの価値だけではなく,初めて見た時の驚き,購入前の高揚感,購入後の幸福感や満足度,使用時の優越感などを含む,その商品のすべての接点にある付加価値のこと。

 

それらを全て高めることで,顧客をつなぎ留めておこうというのが…今,多くの企業が考えていることである。

 

 

//優れたカスタマー・エクスペリエンスとは//

 

そんな難しい話はさておき…優れたカスタマー・エクスペリエンスを提供できているものを見れば,それがどんなことかが容易にわかる。

 

ひとつは乃木坂46のライブ。カスタマー・エクスペリエンスの視点で,ある”ライブ”を商品として,それぞれのフェーズでのファンとの接点を見ていくと…

 

①初めて見た時の驚き

あるライブの最終日に,次のライブを”サプライズ”として発表する。ただでさえテンションMAXなところに…次回を見せることで…ファンは次に期待する。

 

②購入前の高揚感

チケットは抽選。当たるかどうかわからない。しかも1回では決めない。1回目で何十倍もの倍率でも,あえて何度も抽選を行うために落とす。何度も抽選があって…そのたびにファンは盛り上がる。

 

③商品価値

実際のライブ。始まる前にグッズを買い,仲間内で盛り上がり…前回をしのぐ演出で商品価値そのものを高める。

 

④購入後の幸福感,満足度

ライブの最後に感謝の言葉をかけられ…満足度も幸福感もピークに達する。握手会もそうだけど…帰りは皆笑顔だ。気持ち悪いぐらいにやにやしている。

 

⑤使用時の優越感

神席で観たとか,レスもらったとかでずっと盛り上がってる。グッズや円盤(ライブDVD)を見るたびに,あの時の幸福感や満足度が蘇る。

 

こんな感じ。マーケティング3.0や4.0と本質は変わらない。

 

なので,乃木坂46に限らず,好きなアーティストやアイドルでも同じだろうし,ディズニーランドやUSJなどもそう。アニメやゲームもかな。ハロウィンパーティーや旅行,食事会,勉強会なんかも同じだと思う。

 

 

//個人の消費動向//

 

で,ここで考えなければならないのは…多くの人が,毎月自由に使えるお金は有限だということ(当たり前の話)。景気は回復し,有効求人倍率が47年ぶりの水準に戻ったとはいえ,まだまだ給与には反映されていないからな。

 

で,仮に…サラリーマンの趣味等に自由に使えるお金が毎月10万円だったとしても(独身限定かな?そんなにないよな),一度でも優れたカスタマー・エクスペリエンスという”刺激”に触れると,それをまた体験したくなるので…支出の基準が,同じレベルの”刺激”を得られるものになる。

 

つまり,生活に必要な支出を除き,全ての商品・全てのサービスに…同レベルの刺激を求めるようになる。

 

だから…乃木坂46のライブを経験したファンは,モノに興味が無くなることが多い。お金を使うのは,乃木坂46のライブと同じ刺激を得られることやモノになる。乃木坂46関係以外でもね。

 

で…同レベルの刺激を得られないものは…節約対象になる。結果,カスタマー・エクスペリエンスを全く意識していない商品やサービスは廃れていく。

 

今,好調なモノや企業,場所を見れば一目瞭然。

 

ライブとかアミューズメントパークのような体験に限らず…”モノ(=商品)”でも,売れてるものって…カスタマー・エクスペリエンスを意識しているもんな。iphoneやEcho Plusなんかもそう。化粧箱豪華だし。ちょっといい買い物をしたように思ってしまう。

 

 

//エンタメの魅力と闘う時代//

 

で,そんな…エンタメによって考え抜かれた魅力的な”エクスペリエンス(経験)”をした”カスタマー(消費者)”が,世の中にどんどんどんどん増産されている昨今,彼らの財布の中から,自分のところにお金を落としてもらうには…

 

エンタメの持つ”魅力”が生み出したカスタマー・エクスペリエンスと同レベルの”刺激”を提供しなければならない。

 

つまり…エンタメと魅力勝負をしないといけないってこと。

 

商品価値だけなら…競合にはなり得ない”別物”でも良かったのに,顧客経験価値になると…競合になる。

 

そういう意味で…エンタメも…アイドルも舐めちゃいけないし,今からそういうのを(特に乃木坂46のライブや舞台を)自分の眼で見て,それと勝負して勝つにはどうしたらいいのかを考えないといけないと思う。企業も個人も。

 

「彼を知り、己を知れば、百戦して危うからず」だ。

 

今,仕事が奪われるって…AI(人工知能)ばかりが注目されているけれど,エンタメの持つ”魅力”の方が…脅威だと思うよ。これだけカスタマー・エクスペリエンスを重視する経営に舵を切っているところが多い今。

 

 

その中でも…アイドルの持つ”魅力”。その価値。尊敬に値する。