講評というのもおこがましいので…感想をば少々。

 

//近い過去問題

 

一番近いのは平成23年度問1。顧客への報告事項はそのまま使える。平成21年に「システム管理」から「ITサービス」に変わり,見ている対象が“システム”から“現場の利用者への提供サービス”に変わっていることを強く意識していたら,そんなに難しい問題でもないだろう。実際に,顧客への報告会は…開発やプロジェクト管理を含めると,かなり多くのエンジニアが担当していると思われる。そういう経験者にとっては書きやすかったと思う。だからこそ,「顧客」ではなく「…部門の…さん」という具体的な人に置き換えて書くことが重要になる。後は,報告内容には客観性が必要なので定量的表現を含めた方がいい。

 

またPM試験からの連続組は,ステークホルダー期待のマネジメントの概念を使えば,より容易に書けたと思う。

 

//合格論文のポイント

 

合否を分ける最大のポイントは,設問イで報告内容とレビュを書き,その後の会話より顧客の期待と満足状態につなげる部分を具体的に書けるかどうか?つまり,コミュニケーションの仕組みとして用意したサービス報告会で,会話することで,顧客の期待と満足の状態を確認しているということをしているかどうかをチェックする問題だ。

 

他に,次のような2つのポイントもある。

 

(1)設問イで「ある日の報告」という形で,報告内容がその特定の日の内容で,定量的な報告もあること(全部じゃなくていい)。

 

(2)設問イと設問ウが矛盾なくつながっていること。

 毎月の報告内容→ある月の報告会の話→その報告に対するレビュー→対話→顧客の期待と満足の状態を確認→計画立案。

 

この3つのポイントが押さえられているだけで合格論文になると思う。ところどころなら「よくわからない(上手く伝えられていない)」ものでも大丈夫。

 

//状況設定(設問ア)

 

この問題なら,“顧客”を情報システム部にして…インフラ系のITサービスマネージャでも書けそう。ただ,“定例サービス報告会”のような“双方向な対話”の重要性に言及している。双方向での情報交換であれば,フェイストゥフェイスでもネットでも構わないし,同期でも非同期でも書けそうだが,“フェイストゥフェイスの対話=月1回程度の定例報告会”が安全だろう。

 

設問アで上記の状況を説明し,この設問の構成なら…設問アに定例会で報告を義務付けられている項目を羅列しておくことになる。問題文には3つの中黒点の例がある。このあたりの報告内容をいくつか書いておけばいいだろう。

 

この時に,H23-1の問題文にあるように,「基本的な事項にとどまらず,サービスの状況の分析によって判明したこと,今後のITサービスを考える上での参考情報など,顧客にとって有益な事項も含めることが望ましい。」という部分を意識して,表現しておくと万全だろう。

 

//設問イ

 

ここでは,設問アの最後で述べた顧客へ報告する内容について,ある一時点での具体的な報告内容について書く。ここを一般論で抽象的に書いてしまうとおかしくなる。ある時の,設問アで設定した報告内容を具体的に書く。定量化して書いておきたいところだ。

 

次に,顧客からのレビューを書く。この時も,顧客とは誰か?顔が想像できるぐらい具体的に書いた方がいい。どの部門のどういう立場の人が,どういう意見を言ったのか?ここは設問ウの前ふりになる重要なところだ。ここで採点者にイメージさせたい。

 

なお,顧客からのレビュー(意見)は,設問イでも設問ウでも構わない。どちらか限定されるような問題文じゃないので。ただ,報告内容だけで設問イを書ききるのは難しいと思うので,単純に顧客の意見だけをここに書いておくとバランスが良くなる。

 

//設問ウ

 

顧客のレビュ(意見)を受けて,その後,対話を続ける中で…顧客の期待と満足の状態について書く(ここが最大のポイント)。コミュニケーションの仕組み(この報告会の場)を使って,顧客の期待と満足の状態を把握する。

 

また,この時,「顧客の役割と立場」に応じた期待であることが必要。また,満足させなければならない顧客が何人いるのかということも重要。あまり多すぎるのもあれなので,多ければ,「中でも特に…部門のS氏は…」という感じで書くことになる。

 

サービスの価値は,顧客の役割と立場に合致したものでないといけない。また,費用に関しても同様である。その価値がいくらで担保されるべきなのか?そのあたりを定量的に書く。とは言うものの,ここを定量的に書ける受験者は少ない。なので書いていれば安全圏,書いていなくても大丈夫ぐらいの感覚で。

 

最後に,その顧客(たち)の期待に応えるような活動施策(当然,運用チームの)を計画の表現(いつ,誰が,何をするのか?)で書ききっておけばいいだろう。マニュアル強化,障害対応訓練,勉強会によるスキルアップ,(コストがかけられるなら)監視ツールの導入,要員の負担軽減,要員の増強,アウトソーシングサービスの利用など,どういう対策でも構わない。

 

ただ,かけられる費用によってできることできないことがあるので,サービスの価値,コスト,活動計画が矛盾なくつながっていることが前提。