行ってらっしゃいと抱きしめて
なぜか涙が溢れて止めることができなかった。
息子たちに気が付かれないように、
母はすぐに頰を伝う涙を拭った。
寂しさでない。悲しみでもない。
感慨深さでもない。自分でも分からない。
こみ上げる何かが、私の涙腺を刺激した。
子育てはあっという間という言葉に
何度も出会った。そして何度も納得した。
もちろん、今だって子育て真っ只中ではあるけれど、
季節が移り変わるように、
静かに、そして明らかに、移りゆく我が家の日常。
夏になると、毎年家族で出かけていた場所に、
おそらく今年初めて、
家族みんなでお出かけすることが叶わなかった。
今年は、パパと小学生チームだけの出発。
楽しみで仕方ない息子たち。
一方で「みんなで行きたかったな〜」と残念そうに呟く。
「今度は、きっとみんなでまた行こうね！」
と母は言う。
それは、願望であり、目標であり、決意でもあり、覚悟でもある。
１０年後は、皆成人し、
夫婦2人の生活となる日も、もうそこまできているような気がする。
「そんなこともあったね〜」と目を細めている自分も
たやすく想像できる。
でも、なんかこう、
自分の中に熱いものがこみ上げる今のこの感情は、
ここ数年間の期間限定のものだと思うからこそ、
今ここに記しておこうと思った。
いつもそれは突然訪れる。
あなたに会いたい。
初めて出会い、いぶかしげに見つめるあなた。
初めて立っちができて無邪気に笑うあなた。
初めて私を「ママ」と呼んでくれたあなた。
初めて幼稚園の制服をきて門をくぐった時、私の手をギュッと握りしめてくれたあなた。
全ての瞬間を忘れられない。
全部のあなたに、いま会いたい。
５人の子供達みんなが大切なあなた。
大きくなった今も昔も変わらず愛おしい。
そんなあなたとの出会いをくれた
あなたのパパに、改めて、ありがとうが止まらない。
どうか気をつけて行ってらっしゃい。
そして存分に楽しんでいらっしゃい。
楽しいお土産話を待っています。
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