最初に受けたラサール模試から一ヶ月後。
再び模試を受ける機会に恵まれた。
アイツの成績は、想像以上に上がっていた。
とは言っても、まだ合格ラインには程遠い。
成績表を見たアイツは、呆然としていた。
自分が挑もうとしている壁の高さと厚さを
突きつけられた瞬間だった。
でも、アタシは、賞賛せずにはいられなかった。
多少なりとも成績を上げてきたアイツを見直していた。
誇らしかった。
受験生の母親としては、失格かもしれない。
気がつけば、アタシはアイツを褒めちぎっていた。
テスト結果は、惨敗に変わりないのに。
合格なんて夢のまた夢なのに
「アンタ!すごいじゃん!イケる!イケる!」と言っていた。
まだサクセスストーリーも描けないような結果なのに。
アタシはアイツの肩を抱いて、笑っていた。
アイツ「うん!タイもそう思う!」
アタシ「マジかーーー!!!(笑)」
側からみると、
慰めにもならない、虚しいやりとりに見えるかもしれない。
それでもアタシ達は暗い夜道を、
絶望的な結果を胸に抱きながら、二人で笑い合った。
わずかな希望の光を、明るく振る舞うことで
手繰り寄せたかったのかもしれない。
アイツのさらなる戦いが始まった。
それは
自分との戦いであり、時間との戦い。
とにかくアイツには時間がなかった。
そしてさらに1ヶ月。
これが受験生が挑戦できる最後の模試。
3度目の正直とも言える、最後の模試にアイツは挑戦する。
本番までおよそ50日。
それは受験生の冬に似つかわしい、冷え込んだ週末のことだった。
(次に続く→)
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