そもそもアイツは、なぜラ・サール中学校に行きたいのか。

「すっごくカッコイイんだもん!ラ・サール!」

毎年見ていた高校生クイズ。
鹿児島代表のラ・サール高校が活躍するたびに、
アイツは心を躍らせていた。


「ラ・サール高校が勝ち上がると、ワクワクする!鹿児島代表として戦っていたラ・サールにすっごく元気をもらった!見ているだけで勇気がもらえた!たくさんの感動ももらった。そのために努力もしていて。そしてとても楽しそうで!すっごくかっこいい!僕もあんな風になりたい!」


アイツにとって、ラ・サールは憧れ以外の何物でもなかった。



憧れが人を育てるという言葉を聞いたことがある。

今のアイツの気力、体力、精神力を支えているのは、他でもない憧れの心。

その強い憧れが、いずれ学力をも牽引してくれることを信じたかった。


本番まで50日を残し、行われた最終ラ・サール模試。

3度目の結果を目の前にして、アタシは、アイツの肩を抱きしめていた。


そして、アイツは静かにほくそ笑む。

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確実に、点数を伸ばしていた。

決して合格が見えてきたわけではない。

喜ぶべき結果でも、ましてやそんな時期でもないと分かってはいても、
アタシは、アイツの肩を抱き、喜ばずにはいられなかった。


だって、アタシが知るアイツの一番の伸び幅だったから。


よくぞここまで。

そんな親バカな気持ちを抑えられなかった。

「ここまで上げてくるとは・・・。よく頑張りましたねー。」


アイツを見つめながら驚嘆する先生のため息が、アタシの鼓膜を刺戟する。

はるか遠く険しいラ・サールまでの道のり。

固く閉ざされていたはずの扉が、ほんの少しだけ、うっすらと開き始めたような気がしたのは、夢か。幻か。


アイツ12歳。アタシ38歳。



アイツとアタシ。
二人並んで歩いた夜を、きっとアタシは一生忘れないだろう。
(次に続く→)



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