最後に更新したのは4月4日。
あれから早くも一ヶ月が経とうとしている。

日々に追われる毎日。でもあの日のことは今でも鮮明に覚えている。

きょうは金曜日。私は現場から中継を担当する。
役割を与えてもらえるありがたさを忘れず、全力で頑張ろうと心に誓う5月1日。

本日。ファイナルを綴らせて頂きたいと思います。


《前項はこちらから》
(17)続・ありがとうを今ここに。
《↑↑↑こちらをクリックでジャンプします。》

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


出された料理を全て食べ終わった頃だろうか。

子供達を厨房見学に連れ出してくれた天川さんが私たち夫婦の前へ戻ってきた。

私たちは深々と頭をさげる。
「ありがとうございました!ゆっくりと過ごさせて頂きました!」

挨拶したところで、アタシ達は違和感を覚えた。

「あら?子供達は・・・?」

村長が即座に尋ねる。

そうだ・・・。子供達がいない。
食事会場に戻ってきたのは、天川さん一人だけだった。


「今から、子供達が余興をしてくれるそうですので!」

天川さんはそう言い残し、食事会場をあとにする。


「え?余興?」
アタシは驚いて村長を見る。


「え?俺?俺らの計画は、全て実行済みだよ。なんだろう・・・余興って。」


その頃、厨房では余興の準備が行われていた。
長女カンちゃんに去り際にもたせたカメラには、その全てが刻まれていた。

厨房で変装する子供達。


その全ては天川さんによって、計画されていたものだった。

天川さんは、予定通り子供達を厨房へ連れ出し、
天川さんは、予定通り子供達に変装を促したのだった。




そして、天川さんが内緒で用意してくれていたバースデーケーキ。


ケーキは他の誰でもない、子供達に運んでもらおう、というサプライズだった。
そしてもっと驚きを詰め込もうと、事前に変装グッズまで準備してくれていたのだった。




会場のドアが開く。

「お誕生日、おめでとうございまーーーーーーす!」

私たちの目に、変装した子供達が飛び込んでくる。
手には花を、ワゴンにはケーキを乗せて。




「お花はパパからーー!お誕生日、おめでとうございます!」

みーたんから花を差し出された。

「ケーキは天川さんからだよ!!!」そう言ってタイ兄貴が笑う。





「早くぅー!フーってして!フーってして!!」

私は子供達に背中を押されながら、ケーキの前まで進んだ。

涙ながらにろうそくの火を吹き消す。



ふと我にかえり、ケーキを見つめ、また驚いた。
「天川さん、よく覚えてましたね・・・。」


ケーキは、私の大好きなモンブランだった。
その昔、たった一言だけ口走ったことを覚えてくれていた、その心遣いに胸が熱くなった。




「あ、これが本当のプレゼントです。」

そう言って差し出された発泡スチロールの箱。

「総料理長が大好きだった、黒豚です。しゃぶしゃぶをよく食べてたんですよ。」



天川さんからのプレゼントは、
故・前川総料理長が大好物だった、黒豚のしゃぶしゃぶだった。

「レシピ本でも作った特製のつけダレで、総料理長はいつも食べてたんです。
ぜひご家族で召し上がってください!」


私と天川さんとのご縁は、前川シェフから始まった。

前川シェフと番組でご一緒していた時、シェフの助手を務めていたのが、
天川さんだった。

その天川さんが、現在、フェニックスの料理長。

前川シェフから
技術はもとより、情熱、信頼も厚いとよく聞かされていたことを思い出した。

そして、愛にも溢れた人だと、改めて思い知らされる。



前川シェフから学んだことは多い。

前川シェフ亡き後も、前川シェフを通して、たくさんのことを学ばせてもらっている。


会場をあとにする、その前に、最後に天川さんにお願いした。

「私も、厨房にお邪魔してもいいですか?」


前川シェフに、お礼が言いたかった。

天川さんからの心遣いの先に、いつも前川シェフがいる。


フェニックスの厨房の一番奥の方に掲げられている統括総料理長の写真。

今も変わらず、厨房全体が見渡せる場所から、前川シェフはいつも見守っている。


「前川シェフ、いつもありがとうございます。
そしてきょうもまた最高の時間をありがとうございました。」

写真の中で微笑む前川シェフ。生きていたらどんな言葉をくれただろうか。




前川シェフ。

覚えていますか?
10年前の今日。5月1日。
KYT開局10周年特番で、ご一緒した時のこと。
5月1日はシェフのお誕生日。

生中継が終わり、こっそり誕生日ケーキを用意してみんなからのサプライズ。

いつも明朗快活にお話しするシェフが、
その瞬間、息を飲み、驚き、そして静かに佇み、嬉しそうにしてくれていたのを今でも覚えています。


「岡本さーん。冗談でしょーーーー(笑涙)」

それ以上多くを語らなかったシェフ。

あの時、まだ次女みーたんは生まれてなくて。
長女カンちゃんと長男タイ兄貴を抱き上げて喜んでくれました。


あの時抱かれていた長男長女も
今では、母にサプライズをしてくれるくらい、こんなに大きくなりました。



生きていく中で、影響を受ける人が必ず存在します。

両親、兄弟、先生、友人、家族、同僚、先輩、後輩など様々だと思います。

ただ、私にとって前川シェフは、大きな大きな存在でした。

今でもなお、シェフの影響を受け続けています。
こんな時シェフならどうするかな?とか、シェフならなんて言うかな?とか
迷ったときほど、シェフを想います。

あれから10年。
シェフとのご縁をくれたKYTは開局20周年を迎えています。

今年も5月1日がやってきました。

今年は、天テレ博として、また特別番組に携わらせてもらうことになりました。

10年前と変わらずに、声をかけていただけるありがたさを、今感じています。

シェフがおっしゃった言葉を私は今も忘れずにいます。

今改めて、ここに刻もうと思います。

「岡本さんとこうして仕事できるのも、僕は社長の理解、岡本さんはご主人の理解あってこそ。感謝すべきは、すべてを受け入れてくれる会社であり、現場であり、そして支えてくれる、待っていてくれる家族だよ。」



「料理人が料理人でいられるのは、食材があるからこそ。食べてくれる人がいるからこそ。料理人に一番大切なのは、技術でも、経験でもない。それに気づき感謝する心なんだよ。」


5月1日。シェフの誕生日の日に。
きょうはこれから中継先に向かいます。


ママウンサーがママウンサーでいられるのは、見てくれる人がいるからこそ。現場を支えてくれているスタッフさんがいるからこそ。
そして受け入れてくれる局の皆さん、支え応援してくれる家族がいてくれるからこそ。


今年もまた、現場に立たせてもらえる感謝の気持ちを忘れずに、
誠心誠意、臨みたいと思います。



3月8日に38歳になる、という生涯に一度の記念すべき日、
私は、これまでになく、初心を思い出させてもらった気がします。



関わる全ての皆様に心から感謝申し上げるとともに、
どうぞこれからも末長くよろしくお願いいたします。


長くなりましたが、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
厚くお礼申し上げます。


岡本安代


いつも応援ありがとうございます。
皆様のクリックが励みになっております!

こちらも皆様のワンクリックで元気100倍!
ぜひよろしくお願い致します!