夢。
かと思った。
アタシは目を閉じた。
夢が夢でなくなる前に、
アタシはこの目の前にあるこの光景を手繰り寄せて、脳裏に焼き付けようと思った。
アタシの左後方から声がする。
「ママっ!お誕生日おめでとうございまーーーすっ!」
長女カンちゃんだった。
カンちゃんだけじゃない。
いろんな場所から同じ言葉が聞こえくる。
家族みんなが、アタシに向かって、そう声をかけていた。
面食らったように、キョトンとしているアタシに渡された一枚の色紙。
そこには、切り抜かれた子供達の写真とHAPPYBIRTHDAYと書かれ、
家族一人一人からメッセージが書かれていた。
「あ、ありがとう・・・。」
アタシは、振り絞って声を出す。
まだ夢を見ているような心地がしていた。
視線を感じる。十二の瞳が、アタシを見ていた。
きっとアタシの反応を楽しみにしていたのかもしれない。
でも、アタシはその瞳に返すことなく、じっと色紙を見つめていた。
「大好き」「ありがとう「おめでとう」
そんなメッセージが刻まれたそれに釘付けとなっていた。
「ママのプレゼントは何がいい?ってみんなで話し合った時に、
やっぱりママは家族からのお手紙がいっちばん喜ぶよねー!って話になって、
色紙のデザインは、やっぱり家族の写真だよねーーー!それが一番喜ぶよーーー!間違いないって話になって、この前釜蓋神社に行った時の写真をパパに印刷してもらったの!切り抜いてデザインした!」
長女カンちゃんの解説が聞こえる。
「うまくできてるよなー、俺は写真をプリントアウトしたくらいで、あとは全部カンちゃんがやってくれたよ。」
「コーもかいたしーーーー!」
「そう!今回はコーマルも自分でちゃんとメッセージ書いたんだよー!読めるようになってるよー!(笑)」
村長の言葉に子供達の言葉が重なっていく。
本当だ。コーマルが自分の力で必死に書いたあとがみてとれる。
長女カンちゃんの真似をして、ハートマークまで付いていた。
アタシをのぞき、6等分された色紙。
仕切られたその場所には、家族一人一人からのそれぞれの言葉が刻まれていた。
アタシは、この色紙が出来上がるまでの家族の談話を遠くに感じながら、
何度も何度もメッセージを読み返す。
切り抜かれた写真を指で辿り、小さく微笑んだ。
心の中に、一つ一つの言葉が染み込んでいく。
そしてその言葉はやがて宝石に変わる。
アタシにとってどんな価値ある宝石よりも輝いていた。
嬉しかった。
メッセージが嬉しかった。
気持ちが嬉しかった。
その一体感が嬉しかった。
ここにたどり着くまでの子供達と父親とのやりとりを想像すると、
どうしようもなくたまらない気持ちになった。
ホテルの窓から見える夜景を背景に、家族の姿が浮かび上がる。
天上から降り注ぐ月の光。
きっとお月さまは、アタシを見つめて笑っているだろう。
サンロイヤルホテルという場所がそうさせたのかもしれない。
アタシは少し照れてしまっていた。
月の光が、アタシの中の
子供のように泣いたり、はしゃいだりする心にヴェールをかける。
夢ではなく現実であることに気づいて、溢れてこぼれそうになる感情の波を
必死にとどめていた。
「あっ!きたっ!」
しみじみと子供達の顔を眺め、夢うつつのアタシを目覚めさせるように、
コーマルが声をあげる。
厨房につながる扉が開く。
料理を手にした天川さんが立っていた。
(次に続く→)
かと思った。
アタシは目を閉じた。
夢が夢でなくなる前に、
アタシはこの目の前にあるこの光景を手繰り寄せて、脳裏に焼き付けようと思った。
アタシの左後方から声がする。
「ママっ!お誕生日おめでとうございまーーーすっ!」
長女カンちゃんだった。
カンちゃんだけじゃない。
いろんな場所から同じ言葉が聞こえくる。
家族みんなが、アタシに向かって、そう声をかけていた。
面食らったように、キョトンとしているアタシに渡された一枚の色紙。
そこには、切り抜かれた子供達の写真とHAPPYBIRTHDAYと書かれ、
家族一人一人からメッセージが書かれていた。
「あ、ありがとう・・・。」
アタシは、振り絞って声を出す。
まだ夢を見ているような心地がしていた。
視線を感じる。十二の瞳が、アタシを見ていた。
きっとアタシの反応を楽しみにしていたのかもしれない。
でも、アタシはその瞳に返すことなく、じっと色紙を見つめていた。
「大好き」「ありがとう「おめでとう」
そんなメッセージが刻まれたそれに釘付けとなっていた。
「ママのプレゼントは何がいい?ってみんなで話し合った時に、
やっぱりママは家族からのお手紙がいっちばん喜ぶよねー!って話になって、
色紙のデザインは、やっぱり家族の写真だよねーーー!それが一番喜ぶよーーー!間違いないって話になって、この前釜蓋神社に行った時の写真をパパに印刷してもらったの!切り抜いてデザインした!」
長女カンちゃんの解説が聞こえる。
「うまくできてるよなー、俺は写真をプリントアウトしたくらいで、あとは全部カンちゃんがやってくれたよ。」
「コーもかいたしーーーー!」
「そう!今回はコーマルも自分でちゃんとメッセージ書いたんだよー!読めるようになってるよー!(笑)」
村長の言葉に子供達の言葉が重なっていく。
本当だ。コーマルが自分の力で必死に書いたあとがみてとれる。
長女カンちゃんの真似をして、ハートマークまで付いていた。
アタシをのぞき、6等分された色紙。
仕切られたその場所には、家族一人一人からのそれぞれの言葉が刻まれていた。
アタシは、この色紙が出来上がるまでの家族の談話を遠くに感じながら、
何度も何度もメッセージを読み返す。
切り抜かれた写真を指で辿り、小さく微笑んだ。
心の中に、一つ一つの言葉が染み込んでいく。
そしてその言葉はやがて宝石に変わる。
アタシにとってどんな価値ある宝石よりも輝いていた。
嬉しかった。
メッセージが嬉しかった。
気持ちが嬉しかった。
その一体感が嬉しかった。
ここにたどり着くまでの子供達と父親とのやりとりを想像すると、
どうしようもなくたまらない気持ちになった。
ホテルの窓から見える夜景を背景に、家族の姿が浮かび上がる。
天上から降り注ぐ月の光。
きっとお月さまは、アタシを見つめて笑っているだろう。
サンロイヤルホテルという場所がそうさせたのかもしれない。
アタシは少し照れてしまっていた。
月の光が、アタシの中の
子供のように泣いたり、はしゃいだりする心にヴェールをかける。
夢ではなく現実であることに気づいて、溢れてこぼれそうになる感情の波を
必死にとどめていた。
「あっ!きたっ!」
しみじみと子供達の顔を眺め、夢うつつのアタシを目覚めさせるように、
コーマルが声をあげる。
厨房につながる扉が開く。
料理を手にした天川さんが立っていた。
(次に続く→)