５回目の誕生日。

実に大きくなった。

東京から送られてきた写真には
親元を離れ、祖父母のもとでのびのびと過ごすアイツの様子が映し出されていた。


少しでもママから離れようものなら泣きじゃくっていたのに。

もうアイツは泣いてなんかいなかった。

いや、むしろ非日常を存分に楽しませてもらっていた。

５年前の１２月３０日。

アイツと私は、病院のベッドにいた。
全国高校サッカー開幕と同時に、産声を上げたアイツ。
アタシは一人で分娩に臨み、
生まれてきたばかりの小さなアイツの手に触れ、涙した。

アイツの元気な泣き声に励まされた。
５人の子供の母親になる勇気をもらった。

アイツの穏やかな寝顔に、心底癒された。


こんなに大きくなって。

アイツは徐々にアタシの手を借りずとも、自分の力で歩けるようになっていった。
自分の意思を伝えられるようになっていった。

アイツは見るもの全てに興味を持ち、アタシ達家族に信号を送り続けた。
アタシ達夫婦が慌ただしく通り過ぎてきた風景をもう一度見せてくれた。

先に生まれてきた兄弟達は、アイツの姿に、過去の自分を投影していた。

アイツの節目には、必ず側で兄弟たちが見守り、エールを送った。
初めての社会生活。幼稚園への旅立ちは、覚悟の朝が続いた。

末っ子の持つ潜在能力は、凄まじい。
周囲の空気を察知して、瞬間的にその場を平和にしてくれる。

叱られそうになった時の
「ママー！大好きーーーー！」

ことあるごとに、
「コーのこと、好き？」
「岡本家に生まれてきてよかったー！」言いながら、覗き込む。

人一倍、几帳面なところも、
整理整頓が上手なところも、お出かけ前にトイレある？と聞くところも
全てコー丸らしい。

自分はお兄ちゃんやお姉ちゃんみたいになりたいのに、
まだまだ時間がかかるんだ・・・。ということを心のどこかでわかってる。


背伸びして失敗して、悔しくて、泣いて。そしてまた背伸びする。

その繰り返し。

昨日できなかったことが、今日できたりすると、
嬉しくて、すぐに報告する。

兄弟に。そしてパパとママに。

早く兄弟の仲間入りしたくてたまらない。

生まれた瞬間から兄弟の仲間入りしているのに。

アイツはいつも兄弟一緒がいい。
お出かけするのも、寝るのも、ご飯を食べるのも。

兄弟がそばにいてくれるだけで、アイツのワクワクスイッチが大きく振れる。



お兄ちゃんが楽しそうだと、オイラも嬉しい。
お姉ちゃんが優しくしてくれると、オイラも優しい気持ちになる。
兄弟に褒められるのが、他の誰に褒められるよりも嬉しい。

日直の夜。
アイツはママより兄弟と寝ることを選ぶことも多くなった。



何かあったら、何もなくても、お手紙を書くというのも、
家族のやりとり、兄弟でのやりとりを、自分の中に取り込んだ結果なのかもしれない。

字をかけるようになってからというもの、
リビングはアイツからのメッセージで溢れている。

「早く小学生になりたい！」

これが最近のアイツの口癖だ。
先を走り続ける兄弟への憧れが、この一言に凝縮されているように思えてならない。

日に日に成長を見せるアイツを前に、
アタシはなんとも言えない気持ちになる。

あの日、あの時、あの瞬間へは二度と戻れない。
もうこんなに大きくなってしまった・・・・。

時よ、止まれ。

これまで何度思ったことか。

あの時こうしておけば、とかじゃなくて、
あの頃に戻って、もう一度抱きしめたい。とか
あの時のように、もっと一緒に寄り添っていたい。とか
そう思うのは、 アタシだけだろうか。

東京に向かったアイツの洋服棚から
一枚のメッセージが出てきた。

「せいやにいちゃん。かっこいい。だいすき。」

アイツの大好きは、いつもまっすぐだ。

家族みんなどれだけアイツの大好きメッセージに元気付けられてきたことか。

コーマル。
お誕生日、おめでとう。

５年前のきょう。
岡本家に生まれて来てくれた。




岡本家にきてくれて、ありがとう。
岡本家を選んでくれて、ありがとう。

５歳の誕生日。
じっじとばーたんに用意してもらった妖怪ウォッチのプレゼント。

写真からアイツの嬉しそうな笑い声が聞こえてくる。

岡本家一同、無事にこの日を迎えられたことに、心から感謝します。

いつも応援ありがとうございます。
皆様のクリックが励みになっております！
↓

こちらも皆様のワンクリックで元気１００倍！
よろしくお願い致します！
↓