クリスマスイブの夜。

いよいよ明日はクリスマス。

サンタクロースがやってくる。

子供達のワクワクが止まらない日々が続いていた。


あれが欲しい!これが欲しい!

子供たちが年に1度、ワガママを言える日。

それが岡本家にとってのクリスマス。


クリスマスパーティーを終え、
サンタさんへのお手紙も大詰めを迎えていた。




ところが、
今日になって突然、アイツの気持ちが変わった。

『ママ、プレゼントはいらない。』

次男セーマンだった。

驚いたアタシはたずねた。

『え?どうして?マフラーと手袋、欲しがってたじゃん!』


するとアイツから思いもよらない言葉が返ってきた。


『マフラーと手袋は、いつでもいい。
今はママの健康が欲しい。』

そう言って、アタシの手を握ってきた。


恥ずかしながら、
このところ、アタシの具合はいいとは言えなかった。

でも子供達の前ではいつもと変わらず振る舞っていたはずなのに。


…情けない。
アイツはアタシが思っている以上に
アタシのことを見ていた。



『サンタさんにお願いするプレゼントはないから、もう寝るね。おやすみなさい。』

そう言って、誰よりも早く休んだアイツ。


『じゃあ、それをお手紙に書かなくちゃ。』


先にベッドに向かった弟を見送り、
改めてペンを執ったのは、みーたんだった。




『サンタさんへ。
メリークリスマス!
ママに健康を。お願いします。』


電子手帳で調べながら、
次女みーたんが
必死に書いていたサンタさんへの手紙。




たどたどしいアルファベットから滲む
アイツ達の気持ちが、アタシの心に痛いほど刺さる。


それなら私も、僕も、と広がり、
最終的に子供達5人全員の連名が記された
一枚の手紙。





親の心子知らず。
子の心親知らず。


クリスマスをみんなで元気に笑顔で過ごす。
それがもしかしたら、
親はもちろんのこと、子供にとっても一番のプレゼントなのかもしれない。


そんな当たり前のことに気付かせてもらった2014年クリスマスイブの夜。


アタシ一人、リビングで、
サンタが来るのを待っています。


メリークリスマス。
素敵なクリスマスになりますように。