痛みに顔を歪めながら

審判係に促され

最下位に並ぶアイツ。




競技を終えたアイツは

本部席裏の
救護テントに運ばれた。


そして
応急処置を受けた。


母が
救護テントにたどり着いた時、


アイツの細い右腕は
副え木をあてられ
真っ白い包帯で巻かれていた。



長女のアイツ。

いつも凛としているアイツ。


8つ離れた
末っ子の弟は
いつも通り、姉の名を呼んだ。


『カン姉ちゃんっ!』




アイツは
弟の呼びかけに返事もしなかった。


そして

弟の小さな体の先に
母の顔を捉えた瞬間、

泣き出した。


初めて見る


アイツの号泣だった。






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