私が会いたかったその人は、昔と全く変わらぬ姿で、




私の目の前に現れました。。。




冬の気配も漂わせる冷たい空気の中で、






ダウンコートに身を包み、背中にリュック、オシャレなマフラー。





10年前と全く変わらぬ出で立ちに、私は後ろ姿でも、すぐに彼だとわかったのです。





念願の再会に、私は胸が高鳴るのを感じました。





白く吐く息に、興奮を抑えきれない…





『お久しぶりですっっ!』と背後から声をかけた私に、





彼は、10年前と変わらぬ笑顔で、元部下の私を歓迎してくれました。






私が長年会いたかった彼とは、、、、、




私がアナウンサーとして走り始めた12年前、





慣れない報道畑で右往左往していた私に、




道しるべを示してくれた人でした。





『やぁ!元気だったかい?』





昔のままの穏やかな言葉に、当時もがいていた自分の姿が重なり、、





他愛のない会話でも、私は、心の奥底まで、深く染み入るのを感じました。






私はありったけの報告をしました。




子供5人に恵まれたということや、毎日がいっぱいいっぱいだということ。




それでも毎日が昔以上に楽しくてたまらないということ。等々…





彼は嬉しそうに頷きながら、私の発信する全てを受け止めてくれました。






『そうか、応援してるぞ!』





力強くエールを送る彼に、今度は私が近況を尋ねました。





『今年度で仕事はやめると決めているんだよ』




「生涯現役」が口ぐせだったその人は、少し躊躇しながら言葉を選ぶように続けました。




『福島原発を始末するために僕にでもできることがあるはずだ…





僕はもう68歳まで生かしてもらったよ。放射能の影響が出始めるのが、10~20年後だとすれば、もう80歳。人間その年になれば、放射能は関係なく、何かしらの病気のリスクは出てくるものだからね。』と。




そして、私は最後に呟いた言葉も耳に焼き付いています。





『自分達の世代で起こした不始末は、自分達の世代で片付けなくてはいかんから。後の世代に引き継ぐわけにはいかんからね…』




そう語る目にはうっすらと涙が滲んでいたのを、私は見逃しませんでした…。






半年ほど前、大手術を経験した彼は、改めて自分と向き合い、命を考えたとのこと。




妻に何かしらの形ある想い出を残したいと、





68歳を目前に控え、結婚写真も撮ったんだよと見せてもらった1枚の写真。





燕尾服とウェディングドレスに身を包んだ2人の笑顔は、言葉で表現するにはもったいないくらい、幸せそうで、、





私は心底嬉しかったのです。





10年前に聞いた、



『夢って何かありますか?』




その昔、生涯現役、と答えた彼に、



また同じ質問を、ぶつけてみる私…





彼はしばらく考えて、、





『妻の膝枕で、耳掻きしてもらいたいなぁ…』





そう話し終えると、彼の頬を、一筋の光るものがつたうのです。




私はそれ以上、かける言葉を見つけることができませんでした…。




34歳の私は、ちょうど倍の人生を生きた68歳のその人に、またいろんなことを教えてもらいました。





いつまでもお元気でいてください。



出会いに、ご縁に、つくづく感謝。




今日も最後までご精読、ありがとうございました。





素敵な週末をお過ごしください!