ブログ 全体目次

 以前ある研究授業の協議題が「主体的・対話的で深い学びにどう取り組むか」だったが、音楽では、主体的な歌唱活動こそが真の学びであり、その歌の中で互いの声を聞き合いハモらしたりバランスを調節したりすることこそが音楽における対話である、と、僕は思っている(あくまで私見ですのであしからず)

 言語活動が大切だから話し合いで、というのは、特に表現基礎のできていない子達には、頭でっかち的な、理論中心の「机上の空論授業」になりかねない

 でも今、こういう音楽研究授業が残念ながら多いのだ・・・。

 僕の所属していた市は、音楽的に長い暗黒時代を過ごしてきた。隣の市の小中学校音楽会をまねて始めたはいいが、とても比較できないほど下手だったのだ。

 僕が思うに、音楽科の教師は一担任として配属され、校内の音楽指導は専科の先生(講師)任せになっていたり、音楽専科ではない先生のクラスが出演する場合もその人にまかせっきりになっていたりしていたからであろう。

 それを平成になってから改革し、国体行事に携わることを契機に、各校が互いに競い協力し合って研鑽をし、現在の聴き映えのある音楽会を創り上げてきた。多くの学校が、すばらしい歌声を披露できるようになってきた。(※具体的には、地区ごと小中5校で合同ミュージカルを行ったり、各中学校のピックアップメンバーによる合同合唱を行ったりして、各校が自然と学びあう場を設けた。)

 

 ところが、平成も終わり、互いに高め合ってきた形がともすると逆戻りすることもある。

 市指定の市内授業研究会では、まだ地声のままの指導をするクラスがあったり、それでもその後の協議会では、そのことを誰も指摘せずに(!)終わってしまったり・・・。

 きっと授業者本人(音楽科ではない方)や若手の何人かはあの声に疑問を感じないまま、あの声でいいと思ってしまうのだろう。

 

<ここから本題。あくまで僕個人の私見ですのであしからず>

 

 音楽は、他教科と大きく違う。

① 小学校で音楽専科教師のいない小学校はないだろう。音楽という教科は、教員はみな大学でやってはきてるものの、おいそれと授業ができる教科ではないからだ。だから専門の先生が教える唯一の教科なのだ。

② 中学校教師は年間、多い者で900時間以上の音楽授業をこなす。対して、小学校担任は年間50~60時間である。小学校教師は、“経験”が極端に少ないということ。国語の授業は週5~9こなすのに、その3分の1にも満たないわけだ。

 まず、これを念頭に置いて・・・。

 

 僕らは、日々の授業で教材研究を行うとき、周りの先生方と話し合いながら学んでいく。大学や教育実習で学んできたとしても、教師になって日々の授業を同僚と相談する中で研鑽することの方がずっと役に立つし力になっている。

 ところが小学校の場合、音楽という教科は、周りにそれを行う同僚がいない。隣のクラスの先生は音楽に関して「素人」なのだ。音楽って唯一、どの学校でも専科任せにする「特別な教科」だからだ。

 自身が音楽教師だとしても、校内の多くの学年は非常勤の専科の方に任せつつ、自分は担任クラスの音楽だけを受け持つ。これで研究授業をやったとき、助言するべき他クラスの先生が、はっきりいって一人も音楽の授業をしたことのない人ばかりなのだ。

 国語なら、全ての担任が毎日行っている教科なので研究授業を経て日々質が高まっていくだろうが、音楽は誰一人経験がないため、音楽科の本質にせまる助言や話し合いは校内では一切培われていかないわけだ。

 

 また、ピアノを習っているから音楽の先生になったという人で、学生時代に音楽関係の部活でなかった人は、人生において「ハモる」という経験がないまま音楽教師になる。(※ピアノは平均律で純正調ではないので、正確にはハモりません。持続音でなく減衰音だし。)

 おまけに、歌や合唱に携わってこなかった場合やもともと自分がいい声だった先生の中には、歌声と地声、裏声の区別がつかない人も実際にいたりする。

 その「イメージの世界」は、経験によってこそ育まれるのだ。(※大学の授業で「声楽」はあるのだが、そこで地声で歌う人はいないので、そういう子への対処法は何も教えられない。少なくとも僕の大学時代は。)

 

 だからこそ、他教科より、音楽科は「研究授業」が重要になってくる。

 

 研究授業には2つのパターンがある。

 一つは「いい授業を観て学ぶ」パターン。

 もう一つは「未成熟な“たたき台”の授業を観て皆で協議をする」パターン。

 国語や社会などは、先の理由で「たたき台」の研究授業で十分有意義であろう。だが、音楽は、日ごろ同僚と高めあえない分、この研究授業こそ“目から鱗”となる場なのだ。

 

 ところが、授業者の決め方が「輪番制」だったりすると、当たったことを気の毒がり、みんなでほめ合い認め合う協議会に陥ったりする。

 音楽の授業は、やはり「指導授業」に迫るほどの質の高い授業を見せる場にするべきだ。教員だけでなく優秀な「非常勤の音楽専科の先生」や「再任用の先生」も場合によっては依頼して授業を行ってもらうべきかもしれない。

 外部講師を引っ張ってくるというのもありだろう。ただこの場合、実際に子どもを指導してくれる先生だとなおいい。「合唱」指導を学ぶのではなく、「音楽の授業」を学ぶ機会になるよう、講師選択をしたい。

 

 音楽教師は、魅力的な研究授業を観る機会を、校長にお願いしていきましょうね。

 

<他にも音楽について以下にいくつか載せています>