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 僕は、サウジアラビアで働くことになった。

 サウジを内側から見たその様々な「魅力」の記録第6弾

 今回は「アラビア語編」

 

 まさか今は違うだろうが、バンコクに赴任した当時、「タイで教鞭をとる外国人教師は、小学校6年生並みのタイ語の語学力を有しなければならない」と、タイ政府は強気の姿勢を貫いていた。インターナショナルスクールの教師も同様で、全員、赴任一年後にそのテストがあり、それに合格しない者は、2年間で強制帰国させられるとのことだった。タイ政府からはそのために、週に一度、タイ語の先生が派遣され、授業後に教えてくれる時間もあった。

 当時派遣の同期7名は、皆熱心で、それ以外にも夜には、ส.ส.ท.(ソーソートー)というタイ語学校へ週何回か通い、そのうち何人かは、さらにその後、学んだタイ語を夜の街に使いに行く、という熱心な?勉強を繰り返した。おかげで、僕は98点で合格。覚えの悪かった一番年長の先生もぎりぎり70点で合格することができた。

 中学校時代は英語は常に5だったのに、聞き取りが苦手で英検は3級を一次で落ちたトラウマを持つ僕は、そのコンプレックスをタイ語ではらそうと特に努力をした覚えがある。

 だから、タイ語は今でも簡単な会話はできるし、同時に、その時タイ語でA4一枚に作文を書かされるという過酷なテストもあったため、タイ文字にも精通することができた。

 

 さて、その僕でも、サウジに来て驚いたのは、アラビア語の難しさである。

 アラビア語の大きな特徴を3つ。

 

 一つは、右から左へ書くということ。サウジ人はみんな左利きなの?って思うほど、右から左へ筆記体のようなアラビア語を書くのは難しい。

 (といっても、日本も昔は右から書いていたし、大正から昭和初期は右から書体と左から書体が混在していたという歴史があるけどね。昭和26年、新聞が左から書くようになって今の形に統一されていったのだから、もしかしたらアラビア語もそのうち左から書くようになるかも…?)

 ← 昔の日本も右から書体

 

 もう一つは、母音が「ア」「イ」「ウ」しかないこと。

 これはすごい特徴だ。日本は五母音だが、英語などアだけで5つもあるし重母音まで考えたらもっとだ。タイ語だって短母音と長母音があり、数は多い。だから日本の五母音が最少だと思ってたら、アラビア語には「エ」と「オ」がないのだ! それでやっていけるのかと思って調べてみると、外来語を書くときは他の母音に置き換えていた。

 例えば、SUZUKI(سوزوكي)、SASAKI(ساساكي)はそのまま書けるが、KONDOはoをuに置き換えてKUNDU(كوندو)、KOKUBOKUKUBU(كوكوبو)と書く。くくぶさんってもう別人じゃん?

 (じゃあ、発音もできないかというと、そういうわけではなく、僕らがカメラを英語で言うときにはキャメラと発音するのと同じで、サウジ人もちゃんと発音はできる。ただ文字がないのだ。)

 

 3つ目は、子音にもpやch、g等、ないものがあること。 

 子音によってはないものがあるというのは、言語では一般的だ。タイ語にはzの発音がないので、SUZUKIはSUSUKIと発音するし、日本語にもtsuはあっても、基本tuの発音はない。 

 

 では、その組み合わせでおもしろい例を二つ紹介。

 上の写真の左はパンダ、右はペプシと読むのだが、アラビア語ではpがないわけだからこれをbに置き換えて、母音も同時に置き換えて、左はBAND(バンドゥ)、右はBIBSI(ビブシ)と書いてあるのだ。

 (もう少し詳しくオタク解説をしておくと、左の赤いaは、ターマルブータといって、実際には発音しない文字だがそれをうまく利用している。右はこのままではBIBSと読む。BIBSIと読むには左側に点が実際には2ついるのだがなぜか書かれていない。)

 

 エラそうに解説する前に、まずは自分の名前くらいは、早く書けるようにしなくっちゃ。でも、バンコク時代のように、もう20代の脳みそじゃないからなあ…。