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 給食時、あるクラスに補欠で入ったときの一コマ。

 


 おかずが残ったので、給食当番が僕に、

「欲しい子に均等に配って」と言う。担任(女性)はいつもそうしているのだろう。

 でも、僕は教師が子どもの当番活動にでしゃばるのは好きじゃないので、当番の一人に、

「あなたがつけてあげて」と指名。子どもたちは

「うちのクラスは先生がつけるんだよ。」と言ったが、僕は

「先生よりあなたたちのがつけるのうまいでしょ?」と言って、窓際で全体を眺めていた。

 

 配り始めてすぐ、ある子(A君)が

「ねえねえ、たくさんつけて!」と、当番に注文をつけていた。

 よくある光景だな、と思って見ていると、後ろに並んでいたクラスのリーダーとおぼしき子が、

「そんなこと言っちゃいけないんだぞ!」とたしなめた。

 おっ、頼もしいリーダーだな、と思っていたら、彼は続けて何度もその台詞を繰り返した。それは、自分の分をつけてもらい席に着くまで続いた。それはもはや注意ではなくイヤミに聞こえた。

 雑踏に紛れてそれを気にする子はいなかったが、A君はけっきょくおかわりをもらうのをやめ、席に着いたあともずっと無言だった。給食中、観察してると、最後まで元気がなかった。
 
 こんな場面、教室ではよくある。

 リーダーが、正当ではあるが、やり過ぎて人を傷つけてしまうこと。

 今回のこれも、問題視してるのは僕くらいで、子どもたちは一人も気付いていないくらいの些細なことかもしれない。でも、僕は気になってしまった。

 さて、あなたが担任だったら、この後どうしますか? このあとの文を読む前に、ちょっと考えてみて。
 ① このくらいのことなら別に問題視する必要ない。
 ② 給食後にリーダーを指導する。
 ③ その子らをよく知る担任に詳細を報告して一任する。
 ④ クラス全体でこのことを考えてみる。

 さて、あなたは?


     ◆     ◆     ◆     ◆     ◆


 ③にした場合、細かいニュアンスは翌日の報告ではうまく伝わらず、担任も指導しにくいだろう。っていうか、翌日に指導するほどのことではない。だから最初、僕は②でいくつもりだった。でも、補欠で入っているだけの、彼をよく知らず二人の人間関係も知らない僕が先走るのはどうかな、とも思っていた。給食中考えて、こうすることにした。


 ⑤ Aに共感する。
 (あっずるい!って思った? 選択肢にない方法を考えるのが僕の信条なんです。あしからず。)


 給食後、A君に話しかけた。

「お腹いっぱいになった?」

「ううん。」

 A君は下を向いたまま答えた。

 

「あれ、おかわりしたのに?」

「しなかった。」

「けっきょくもらわなかったんだぁ。」

「・・・」

「なんで?」

「・・・」

「友だちにきついこと言われちゃったから?」

 

 ここで彼は、顔を上げた。

「うん。」

 あの場面を先生が気にしてたなんて思いもしなかったようだ。

 

「あんな言い方されちゃったらもらいにくいよな。」

「うん。」

「でも、あの子も君を嫌いなんじゃないよな。その前は普通に話しかけてたもんな。」

(明るい顔で) うん。」

 そして彼の肩をたたきながら

「明日はしっかりおかわりしような。」

「うん。」

 彼はそのあと、明るい顔で、好きなアニメの話をし始めた。

 これが正解だとは思いません。でも、共感してくれる人がいるだけで、人の心は穏やかになるもの。たくさんの子に共感できる担任でありたいね。