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 前回、音楽の評価の危うさを書いた。もちろん、先生の中には「そんなことはわかってる。当然、そんな対策は講じている。」という方もみえるかもしれない。それなら安心だ。
 とにかく僕は、中学生のときの僕のような、授業を小馬鹿にしてるような奴に、点や評定が持っていかれないように、たとえピアノを習っていなくても授業でがんばってる子や授業で力をつけた子にこそ公正な評価をあげたいと思い、テストづくりで工夫をしてきた。

①「歌詞を書きとらせる問題では、必ず音を絡ませる ※放送問題
 授業でまじめに歌ってなくても、暗記力があれば歌詞は覚えられる。そこで、ピアノでフレーズを聴かせ、その歌詞(もしくはフレーズ直後)を書きとらせる形式で出題する。答える時間は10秒。即座に書かなくては間に合わない時間だ。こうすることで、日頃しっかり歌ってる子はメロディを聞けば歌詞が瞬時に思い浮かぶのですぐ書け、そうでない者は思い出す時間がないので答えられない。だから時間を短く設定し、ピアノも一度しか流さない。日頃からがんばってる子だけができる問題づくりにこだわるのだ。
 こういう問題は意欲・関心・態度を評価するのにうってつけだ。忘れ物をしないとか挙手が多いとかで評価するよりも、「音楽という教科」に対する意欲・関心・態度が測れる

②「パート当て問題 ※放送問題
 いくつかの小フレーズをたくさん流し、自分のパートは何番目と何番目かを当てる問題。比較的難易度の低い問題だ。鉛筆は全部聞き終えてから持たせないと友達の動きで答えがばれるので注意。パートCDを録音してそのまま流すというのはだめ。女声と男声の区別がまるわかりになるから。音楽教師がすべて自作する必要がある。ピアノだけで歌はなしってのはわかりにくくおすすめできない。

③「パート抜け問題 ※放送問題 例題←ここをクリック
 これは、上記より難易度が上がる。1パートだけ抜いて他のパートだけで多重録音し聴かせる。もちろん女声も男声も同じ人(教師自身)が歌わないと意味がない。自分のパートがなかったのは何番目かと聞いたり、抜けているのはどのパートかと聞いたりとバリエーションができる。後者は難易度がさらに高くなる。他パートがどんな音かを理解していないといけないからだ。

④「間違い探し ※放送問題 例題←ここをクリック
 例えば強弱記号のクレシェンド。暗記力のある子は記号も意味も答えられる。しかし、それがどういう効果をもたらしているのかを、授業の中で実際に体験してきた子ができる問題にするには、間違い探し形式にするとよい。いつもクレシェンドを気にしてきたフレーズを、それをせずに歌って聴かせ、いつもとの違和感を見つけさせるわけだ。
 これはいろいろな形に使え、例えば三部合唱からユニゾンになるフレーズを、そのまま三部で歌い続け間違いを見つけさせたりなんてのもおもしろい(例題参照)

⑤「その他、曲の理解度など問う問題 ※一部放送問題
 いろいろなパターンを、以下箇条書きで。
・ユニゾンで歌い始めた後、初めて音が分かれる部分の出だし1文字を書け。
・三部合唱になった後、またユニゾンに戻る部分の歌詞すべてを書け。
・ユニゾン部分の最後の音から次の音(合唱部分)へ移る際、自分の音は上がるか下がるか同じか(※こういう問題で階名を書かせるのはピアノをやってる者が有利になるので僕は好きではない。)
・大地讃頌の中で「だいち」という歌詞が何度か出てくるが、すべてのパートが同時に歌う「だいち」は全部で何回出てくるか?(※他パートを意識していないとできない上級問題。)
・ある曲の4つのフレーズを順序を変えて流し、正しい順序に並べ替える問題。
リコーダーのチューニングの大切さを確認するために、二人でリコーダーを吹いたものを聴かせ、その合っていない音の汚さを実感させ、どうするべきかを答えさせる問題。
リコーダーのアーティキュレーションを聞き取る問題。レガート奏法(スラー)、ポルタート奏法(テヌート)、ノンレガート奏法、スタッカート奏法を織り交ぜながらフレーズを吹き、答案用紙上から正しいものを選択させる(中級問題)、もしくは記号を楽譜上に書き取らせる(上級問題)
ギターで取り組んだ曲の前半フレーズ内で、4弦を弾くのは何回か?(コードで弾くものも含。)
ギターを実際に持って、テスト時間中に各クラスを回り、各教室でフレーズを弾き、間違いを見つけさせる。例;右手でアポヤンド奏法でなくアルアイレ奏法で弾いていた、とか、左手の押さえる指番号が間違っていたとか等。(※体育の問題にも転用でき、審判の合図等は、テスト用紙に図を書くより、実際に教室でやって見せて答えさせる方がずっとよい。)
魔王のフレーズをドイツ語で流し、誰のセリフか答えさせる。
小フーガト短調の冒頭テーマが、今から流す中に何回出てくるか?
運命のソナタ形式を問う問題では、提示部などの用語だけ書かせるのは単なる知識確認。音に絡ませるべき。例えば、再現部の手前から曲を流し、同時に番号を適当に言っていく中で、再現部第1主題の出だしと第2主題の出だし、コーダの入りを番号で答えさせる。(※この時、聴いている最中は鉛筆を持たせてはいけない。)
・中3の1学期に30曲のクラシック曲を2分ずつ録音したCDを全員に配り、3学期にそこから出題。代表フレーズを流す初級問題と、あえてその部分を外したマイナーフレーズを流す上級問題と、2パターンある。
 
 こういう問題をつくり評価をしていくと、授業はさぼってテスト週間にだけがんばる「点取り虫」君には絶対点が取れない。他の教科がオール5でも音楽だけは3なんてこともある。逆に、他の教科が2や3ばかりでも、音楽だけ5なんて子も出てくる。そんなとき、僕は、真の評価ができたと一人自己満足するのである。