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 今回は、初々しくもはかない青春の思い出から…。思いっきり力を抜いて読んでください。


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 音楽というものは、人に様々な経験を与え、そして思い出をつくってくれる。思えば私の青春は、オーケストラと共にあった。

 中学ではドラマ「俺は男だ」にあこがれ剣道部でキャプテンとしてがんばり、高校ではきつい練習にゲロを吐きながらもバスケット部でがんばった。が、‥‥大学では女の子につられて、いつのまにやらオーケストラ部に。選んだ楽器はバイオリン。
 そうして私のバラ色の青春は始まった。

 みんながひたすらボーイング(弦楽器でのロングトーンのこと=基礎練習)をやっている最中も、基礎練のきらいな私はサボることばかり考え、曲練習ばかり。みんなが細かいパッセージをこつこつ練習している時も、私だけはさっさとあきらめ、メロディックなフレーズばかりを練習していた。


 そうやって努力(?)を続け、1年生の3月、初めての大舞台に登り、すばらしいデビューを飾ったのだった。(2ndバイオリンの後ろで弾いていたので誰にも見えなかった‥‥)
 そうして年2回のコンサートで数百人の人たちの歓声をあびながら、瞬く間に4年間の大学生活は終わった。
 しかし、まだまだ青春は続く‥‥‥。

 新任で赴任してからも、卒業生中心のアマオケ(アマチュアオーケストラの略。けっしてフロオケの親類と思うべからず)に入り、音楽とかかわりを持ちつづけた。(実はこれも女の子に誘われて…。)


 そして運命の日はやってきた。

 あれは夏真っ盛りの日。定期演奏会が開かれた。

 私達は楽屋で開演のブザーを待っていた。私はあがり症なので、この日もトイレの鏡に向かって自分自身に言いきかせていた。

「あがるな、おまえはうまい」と。

 ついでにトイレで用をたしていると、開演のブザー。あわてて、手を洗うのももどかしく、舞台へ。場所は指揮者の真ん前。2ndバイオリンのトップだ。

 そうこうするうちに第一楽章が終わった。と、その時、一番前に座ってる女性客二人がこちらを見てヒソヒソなにやら話しているのが目に映った。当時20代の若き私は

「もしかして私に花束でも渡したいのかな」と思っていたのだが、どうもそれも違うようだ。
‥‥‥いやな予感がした。そーっと下に視線を移した‥‥‥。

  グァ~ン!!

 真っ黒い礼服のちょうど真ん中に、ポッカリと開いた白い口‥‥。

 その日の曲は、おりしもべートーヴェンの「運命」。

 -こうして、私の青春は終わったのである。