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 60年も生きていると、めったにできない貴重な体験をいくつかするものだ。今回は、淡い想い出。そう、色にたとえるなら、黄色・・・かな?                            
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 それは、夏の天気のよい夕方のこと。小学生の私は、母と一緒に近くの店に買物に行くところだった。とても楽しい気分で、弟を乗せた乳母車の周りをはしゃぎながら走り回っていたのをよく覚えている。空は晴れ渡り鳥は歌うその状況で、誰がそのあとおこる悲惨な出来事を予測できたであろうか‥‥。

 このごろはめったに出会えないが、昔は畑には、「肥だめ」という、肥料にするための排泄物のため池が設置してあった。柵はなく、ほとんどが50cm直径の小さな穴であったが、そこにあったのは、2m四方のかなり大きな肥だめであった。その肥だめには、枯れ葉や何やらが上に積もり、土色のその肥だめは一見しただけでは気づかないものだった。そして私は、はしゃぎながら、その上を通過した。


「ズボッ」‥‥ズブブブブ‥‥

何がおきたか最初はわからなかった。
みるみるめりこんでいった私は、さながら底無し沼にはまったような恐怖を感じた。
体はすぐに首まで沈み、あわやというところで縁につかまった。そして声を振り絞って叫んだ。
「助けて!」

 気づいた母はすぐ引っ張り上げてくれた。しかし、なにしろ息子の体はクソまみれ。いくらなんでも買い物など行けるはずはない。乳母車に乗せてすぐに連れ帰ってくれた。
 家の井戸で水を浴びせられすぐに体はきれいになったが、その“匂い”はその後2~3日取れず、おまけに井戸のところで蜂に刺されたさんざんの日となった。

  人はいろんな体験をし、そして成長していくのである‥‥。