小野寺史宜 「ひと」

女手ひとつで僕を東京の私大に進ませてくれた母が急死した。

僕、柏木聖輔は二十歳の秋、たった一人になった。

大学は中退を選び、就職先のあてもない。

そんなある日、空腹に負けて吸い寄せられた砂町銀座商店街の惣菜屋で、最後に残った五十円のコロッケを見知らぬお婆さんに譲ったことから、不思議な縁が生まれていく。

本屋大賞から生まれたベストセラー、待望の文庫化。