吉田修一 「怒り」(上)


若い夫婦が自宅で惨殺され、現場には「」という血文字が残されていた。

犯人は山上一也、二十七歳と判明するが、その行方は杳として知れず捜査は難航していた。

そして事件から一年後の夏ーーー。

房総の港町で働く槙洋平・愛子親子、大手企業に勤めるゲイの藤田優馬、沖縄の離島で母と暮らす小宮山泉の前に、身元不詳の三人の男が現れた。