東進ハイスクール登戸校の生徒たちが英語学習に関して抱える素朴な疑問や悩みに、安河内哲也が直接答える特別Q&Aセッションが開催されました。本記事では、実際のやりとりをできるだけ忠実に再現し、皆さんの英語学習のヒントとなるように詳しくご紹介します。


 

Q1:英検準1級の勉強をしています。単語をすべて覚えてから過去問を解くべきでしょうか?

 

A:
これは多くの人が陥りがちな考え方ですね。「単語を全部覚えてから読むようにしよう」というのは、一見合理的に見えますが、実はそうではありません。英語は「読む・聞く・書く・話す」の四技能をバランスよく鍛えないと力がつきません。

たとえば、スポーツで筋トレだけしていても試合に勝てるわけではありませんよね?英語も同じで、実践(読む・聞く・話す・書く)を通してしか本当の力はつかないんです。だから単語を覚える作業は、四技能の学習と同時進行で進めるべきです。

また、単語の勉強にもコツがあります。英検の単語帳(パス単など)には例文と音声がついています。その例文をシャドーイングしたり、声に出したりしながら覚えていけば、単語学習と同時にリスニングやスピーキングのトレーニングにもなります。そうした論理的かつ効率的な勉強法が、合格への近道になります。


Q2:来週からオーストラリアに留学します。現地で楽しく過ごすためにやった方がいいことを教えてください。

 

A:
素晴らしい機会ですね!留学を楽しいものにする最大のコツは、「最初の友達づくり」です。おすすめは、授業の30分前に誰よりも早く教室に行くこと。そして、2番目に来た人にすかさず “Good morning!” と声をかけて自己紹介してみましょう。

そうすると自然に3人目、4人目も巻き込んで、初日に友達グループができます。現地の人も「話しかけてくれるかな?」と不安に思っているので、声をかけられると本当に嬉しいんです。

また、授業で誰かがプレゼンをしたら、そのあとすぐに “That was a wonderful presentation!” と声をかけると、そこから会話が広がって仲良くなれます。片言でもかまいません。大切なのは、相手とつながろうとする気持ちです。


Q3:人前で発表すると、緊張して頭が真っ白になります。どうすれば克服できますか?

 

A:
その気持ち、よく分かります。実は僕も、最初に予備校で授業をしたとき、200人の前で声が出なくなったことがあります。30分くらい、水を何度も飲んで、ようやく声が出るようになったんです。

そんな僕が学んだのは、「目の前の一人に語りかける」感覚を持つことです。100人いても、そこにいるのは普通の人間が100人いるだけ。その中のひとりひとりと対話するような気持ちで話せば、緊張はずっと軽くなります。

そしてもう一つの真理。それは「あなたの発表なんて、誰もそんなに気にしていない」ということです。人間って、自分のことで精一杯。他人の発表を気にしている暇なんてほとんどありません。だから、自分の発表に過剰にプレッシャーを感じなくても大丈夫です。気楽に、独り言のように話してみましょう。


Q4:通学中にリスニングをしたいです。おすすめの方法はありますか?

 

A:
リスニングのトレーニングにおいて大切なのは、「繰り返し聞くこと」、つまり“ヘビロテ”です。アプリもたくさんありますが、いろいろなものに手を出すより、学習した教材を何度も忘れないように聞くことが圧倒的に効果的です。

たとえば、予備校や学校で使った長文の音声をダウンロードして、通学中に繰り返し聞く。そして、シャドーイングやオーバーラッピングをしてみる。そうすれば、リスニングだけでなく発音やスピーキングの力も鍛えられます。

気分転換として、ディズニーの英語の歌などをプレイリストに挟むのもおすすめです。英語学習がラジオ番組のように楽しくなりますよ。


Q5:文法が苦手です。どうすれば克服できますか?

 

A:
文法が苦手な場合は、まず中学レベルから復習するのが一番の近道です。焦らず、基礎からしっかりとやり直しましょう。音声付きの文法教材を使って、例文を何度も聞きながらシャドーイングするのが効果的です。シャドーイングは難しいですが、文法の例文なら短いのでできると思います。また、手ぶらでできるので便利です。

新しい教材に次々手を出すのではなく、ひとつの教材を「ヘビロテ」して、自分の中に染み込ませる。それが結果的に一番早く力がつく方法です。


Q6:英語をスラスラ話せるようになりたいけど、文法や発音のミスが怖くて話せません。

 

A:
これは多くの人が感じる不安ですが、はっきり言います。外国語はいくらやっても間違うものです。僕も英語の専門家として30年以上やっていますが、ネイティブのようには話せるわけではません。でも、それで全く問題なく、世界と仕事をしています。

大切なのは、「相手に伝わるように話すこと」。それでコミュニケーションは成り立ちます。そして、しゃべっている人の文法や発音のミスを気にするのは、日本の英語教師ぐらい。世界では、間違いながらでも自分の言葉で話そうとする姿勢が高く評価されます。

英語はスポーツと同じ。やってみて、間違って、直して、またやってみる。その繰り返しの中でしかスピーキング力は育ちません。勇気を持って一歩踏み出してみましょう。


Q7:英語を学ぶことで、どんな未来がひらけますか?

 

A:
今、君たちは「日本」という小さな島国にいます。そして、日本には「こうでなければならない」「これはしてはいけない」といった独自のルールがたくさんあります。でも、英語を学べば、その“日本ルール”から自由になることができます。

英語を使えることで、世界中の人たちとつながり、さまざまな仕事や学びのチャンスが得られます。僕自身も、英語のおかげで世界中に友達がいて、AIやのような最新技術にもいち早く触れることができています。英語は、ただの受験の教科ではなく、「人生をひらく鍵」なんです。

今すぐ世界に出ることはできなくても、学校の教科書や予備校の教材をしっかりやることが、その第一歩になります。音を使って、AIを使って、自分の力で未来を切り拓いてください。


このQ&Aセッションは、勉強法だけでなく、学ぶことの意味や生き方にまで踏み込んだ深い内容でした。英語学習は「間違えていい」「ゆっくりでいい」「今からでいい」。その一言一言が、受験生たちの背中をそっと押してくれる温かいメッセージでした。英語を通して世界とつながる。その可能性は、今この瞬間の一歩から始まっています。

 

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