本日は、全国通訳案内士試験の指導者として活躍されている高田直志(たかたなおし)先生にお話を伺いました。高田先生は、19年にわたり英語、中国語、韓国語の通訳案内士として活動される一方で、「通訳案内士試験道場」を運営し、次世代の通訳案内士を育成されています。試験の難易度や意義、そして高田先生が考える通訳案内士に必要な資質について伺います。




安河内(やすこうち): 高田先生、本日はお時間をいただきありがとうございます。通訳案内士として19年のキャリアをお持ちだそうですが、この仕事を始められたきっかけを教えてください。

高田: はい、最初に通訳案内士の試験に合格したのは28歳の時でした。中国語が最初で、その後韓国語、英語と続けて資格を取得しました。本格的に通訳案内士として活動を始めたのは34歳の頃です。語学力を生かして、日本の文化や歴史を外国人に伝えることに魅力を感じ、この道を選びました。

全国通訳案内士試験とは?

安河内: 通訳案内士試験は国家資格と伺っていますが、具体的にどのような試験なのですか?

高田: これは単なる語学力を問う試験ではなく、その語学を使って日本の地理、歴史、文化、社会を外国人に分かりやすく案内する力を評価する試験です。一次試験では、外国語、日本地理、日本歴史、観光に関連する一般常識、そして通訳案内業務に関する実務知識の5科目が出題されます。

安河内: 一次試験の科目は多岐にわたっていますね。それぞれの合格基準について教えてください。

高田: 外国語、日本地理、日本歴史は70%以上の得点が必要です。他の観光一般常識と実務知識は60%以上です。一度合格した科目は翌年のみ有効ですが、全科目をクリアするのに数年かかる方も少なくありません。

試験の免除制度と実務知識

安河内: 英検やTOEICのスコアがあると、外国語科目が免除されると伺いましたが、それについて詳しく教えてください。

高田: はい、例えば英検1級やTOEIC900点以上のスコアを持っていると、外国語科目が免除されます。ただし、他の4科目で苦労する方も多いですね。英語科目の試験問題には「Esoteric Buddhism(密教)」のような、実務に特化した内容が含まれることがあり、これはTOEICや英検には出てこない分野ですね。

安河内: 実務知識とは具体的にどのようなものが問われるのでしょうか?

高田: 通訳案内士として外国人客に対応する際に必要な知識です。例えば、食文化の制限や宗教的な配慮、日本の観光業法に関する理解などが求められます。

二次試験の実態

安河内: 一次試験に合格しても、さらに難関の二次試験があると聞きました。その内容について教えていただけますか?

高田: 二次試験は主に3つのセクションに分かれています。

  1. 日本事情に関する即興スピーチ
    日本文化や習慣について、30秒で考え、外国語で2分間スピーチを行います。テーマ例として「だるま」や「お正月」などが挙げられます。その後、スピーチに基づいた質疑応答が行われます。

  2. 逐次通訳
    面接官が20秒程度の日本語文を読み上げ、それをメモを取りながら外国語に通訳します。内容は日本文化や歴史に関連するものが多いです。

  3. 問題解決型のロールプレイ
    ガイド業務で起こり得る問題について、面接官とロールプレイで解決策を提示します。例えば、「クレジットカードしか使えない外国人客が現金しか使えない店で困った場合、どう対処するか?」というような状況が設定されます。

安河内: 実務能力も試されるのですね。ただの語学試験とは全く異なる印象を受けます。

高田: その通りです。語学力だけではなく、実際の現場で求められる対応力や柔軟性、そして外国人客とのコミュニケーション能力が重要視されます。


今回のインタビューを通じて、全国通訳案内士試験が日本の文化、地理、歴史を深く理解し、それを的確に外国人に伝える能力を問う高度な試験であることがわかりました。一次試験・二次試験ともに非常に難易度が高く、一発で合格する方はわずか1割程度とのことです。しかし、それだけ厳しい試験を突破した通訳案内士は、日本を世界に伝える貴重な存在であり、その責任は非常に大きいと言えるでしょう。高田直志先生の「通訳案内士試験道場」では、受験生がしっかり準備をして試験に臨めるよう、実務的な指導が行われています。今後も、こうした支援を通じて日本を世界に発信できる優れた通訳案内士が育っていくことを期待したいと思います。